子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第6章 可動式魔法遺跡、クークード遺跡の見学ツアーに参加しよう。

226.転生貴族令嬢レベッカ・ショアの危機に突入せよ！

威勢のよい声と共に、棒立ちになっていたレベッカ・ショアの体は、衝撃で吹っ飛んだ。

蹴られた？

レベッカ・ショアは、吹っ飛んだ衝撃のまま、戦場を離脱。

誰かにぶつかって止まった。

「うおお、危なかった。危うく、呼吸がとまりそうになったわー。」

レベッカ・ショアは、ぶつかった相手の声に聞き覚えがあったので、のそのそ、と体を起こした。

「スラッルス？」
とレベッカ・ショア。

「よう。レベッカ。いい飛びっぷりだったなー。」
とスラッルス・トークン。

スラッルス・トークンは、何が起きたか、全部見ていた。

大人の男に一気に距離を詰められて動けなくなったレベッカの足元に飛び込んだキャスリーヌ。

キャスリーヌは、ちらっとスラッルス・トークンを確認して、指を指すなり。

レベッカ・ショアの体を蹴り飛ばしたのだ。

低い姿勢のままで。

スラッルス・トークン目掛けて。

レベッカ・ショアが、何も分からずに棒立ちしている間に、強制的に戦場を離脱させ、レベッカ・ショアという足手まといを退場させたわけだ。

キャスリーヌが、スラッルス・トークンをちらっと見て、指差してきたのは、ハンドサインであろう。

意味は
『レベッカを任せる！』
に他ならない。

小柄で細身のマーゴットとキャスリーヌが、正面から大人の男に立ち向かって、敵うはずがない。

奇襲をかけるにしても、棒立ちしているレベッカが、捕まる方が早い。

狙われているのに、無抵抗なレベッカ。

ならば。
移動可能な、レベッカを大人の男の攻撃範囲の外へと弾き飛ばしたわけだ。

一蹴りで、人が吹っ飛ぶとわなー。

スラッルス・トークンは、感心するしかない。

キャスリーヌの咄嗟の判断の的確さに、スラッルス・トークンは舌を巻く。

慣れすぎだろ、修羅場に。

どんな修羅場を潜ってきたんだよ、キャスリーヌ。

土俵で、コマとコマを回してぶつけて、土俵の外に弾き出す遊びを懐かしく思い出してしまうスラッルス・トークン。


そんな、キャスリーヌは。

低い姿勢を保ったまま、パートラン卿の顎の下にピタリと木の枝を突きつけていた。

「金を払う前に、黙って、物だけ持って、とんずらしようとは、いい度胸だよ。」
とキャスリーヌ。

「そういう無頼は歓迎しない。
うちは、信用のない相手とは取引をしない。
レベッカの引き渡し交渉は、今後一切受け付けない。」
とキャスリーヌは、宣言した。