子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

第6章 可動式魔法遺跡、クークード遺跡の見学ツアーに参加しよう。

216.転生貴族令嬢レベッカ・ショア。『呼んでくれる人についていった先で、私を待っている人は、私を大事にしてくれる？』

「ヒイロ・ゼーゼ。ヒイロ・ゼーゼかあ。その人は、どんな人？」
とレベッカ・ショア。

「どんな？
ヒイロ・ゼーゼか。
子どもに好かれやすい若い貴族の男だ。
子どもは、皆、ヒイロ・ゼーゼが好きだからな。
レベッカ・ショアも、ヒイロ・ゼーゼを好きになるだろう。」
とパートラン卿。

「じゃあ。」
とレベッカ・ショアは、悩み疲れた顔で微笑んだ。

「ヒイロ・ゼーゼは、私を大事にしてくれる？

私を一番にしてくれる？

他の子どもと一緒にされるのは嫌。

他の子がいると、私はいらない子になる。

私のところにきてくれたときはいい感じなの。
でも、私と過ごすと、ダメになる。
私といると、私を嫌いになるの。

なんで、なんでかな？

パートラン卿だっけ。
分かる？分かるかな？

なんでだと思う？

私、疲れたの。

私の人生。

まだ12年なのに。

皆で、全力疾走で走るの、分かる？

私の前には誰もいないの。

ゴールを走り抜けた！

一番になったと思って、後ろを振り返ったら。

私の後ろにも、誰もいないの。

息を切らして、振り返っているのに、私だけ、ポツンと一人ぼっち。

見える場所には、誰もいなくて。

あれ？皆、どこにいるの？となるから、探しにいくの。

そしたら、私が走ったコースとは、別のコースを見つけるの。

スタート地点は一緒なの。

でも、道が違うから。

コースが並んでいるときは、一緒にいるの。

コースが枝分かれしたら、皆、別のコースを通って、別のゴールに着くの。

私だけ、先に1人で行っていてしまったから、ゴールも1人だったのは、仕方がないって思う？

仕方がなくなんてない！

だって。

声が届くのよ？

その気になれば、並んで走っている全員で、コースが違うと私に教えられるのに。

私に声をかけてくれたらいいじゃない！

私の名前を呼んでくれたら、いいじゃない！

なんで、私の名前を呼んで引き止めてくれないの？

なんで、こっちだよ！と間違いを教えてくれないの？

呼ばれたら、私は行くのに。

遅れても、追いつくのに。

待っててくれてもいいよね？

待てないなら、先に行ってもいいけど。」

レベッカ・ショアは、微笑みながらも、その目は、誰もとらえていない。

ふっと、レベッカ・ショアの口調が変わる。
「でも。

ねえ。

なんで、私がいなくても、満足してしまうの。

私がいないことを普通にしないで。」

急に、叩きつけるように叫んだレベッカ・ショアは、
パートラン卿をはっきり視界にとらえた。

「ねえ、ヒイロ・ゼーゼは、私だけを見てくれる？

約束してくれる？

ヒイロ・ゼーゼが、私だけを見て、私だけを大事にして、ずっと私を離さないでいるって。」

レベッカ・ショアは、淑女の微笑みを浮かべた。

「ねえ。ヒイロ・ゼーゼが私との約束を守ってくれるなら、私は、一緒に行っても。」

レベッカ・ショアは、最後まで言い切ることが出来なかった。

「言わせるか！」
と力強い一喝が空から降ってくる。