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第6章 可動式魔法遺跡、クークード遺跡の見学ツアーに参加しよう。
203.バネッサ・オッドア伯爵令嬢と転生貴族令嬢レベッカ・ショア。実戦経験がないレベッカ・ショアを連れて。
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バネッサは、日常的に、武器を携帯している。
オッドア伯爵領での小競り合いのときは、携帯用ではない、武器庫に並べてある武器を使うが、武器を携帯しない暮らしはしたことがない。
オッドア伯爵領は、隣国だけではなく、小競り合い狙いで、人の出入りが激しい。
出入りする人種が、平和的な一般人であることは少ない。
控え目にいって、どこぞの諜報員だし、うっかり気を抜くと、混乱に乗じて、他所から犯罪組織が入り込んでくる。
犯罪組織が、
『俺達のシマにするぜい。』
と自分達で考えて来るケースは稀。
九割九分、犯罪組織の後ろには、どこぞでほくそ笑むやつがいる。
領民は、猥雑な環境に順応して、逞しく商売しているが、オッドア伯爵領の領内での喧嘩や犯罪には、暴力がつきもの。
だから。
小競り合いに呼ばれず、領内を見回るときも、常に、命の危険を意識して動くのがバネッサの日常。
ニンデリー王立学園に来てからも、バネッサのその習慣は変わっていない。
変えるつもりもない。
ニンデリー王立学園に来てからの方が、バネッサは、対策を練っている。
オッドア伯爵領では、アレックスはいても、アレックス以外がたくさんいた。
バネッサにとって、アレックスは、脅威ではなく、古参の使用人は信頼できた。
しかし。
ニンデリー王立学園では、周囲に、何人も信頼できる使用人を配置できる状況ではない。
最少の用意で、最大の効果を狙うために。
バネッサは、毎日、侍女のトゥーミラと、あーでもないこーでもないと、意見を交わして、試行錯誤を重ねてきた。
部屋の中でできる鍛錬は、毎日欠かさずやっているバネッサ。
武器を交える戦いは、領地を離れて以来。
実に、半年ぶりだ。
魔法は常時、発動を維持しているが、敵が、どこの誰かが分からないままに、戦いに移行したくはない。
伯爵令嬢であるバネッサには、責任がつきまとう。
襲われて、反撃して、それで終わりではない。
オッドア伯爵家のご令嬢を襲った者には。
オッドア家が、それに見合う報復し、賠償を求め、なにがしかの代償を払わせる。
ここまでが、一連の流れ。
貴族には、守るべき面子と体裁があるので、決して蔑ろにはできない。
クークード遺跡内で襲撃されて、
『敵が、どこの誰だがわかりませんでした。』
じゃ、お話にならない。
クークード遺跡は、入退場で、魔力の登録を行っている。
つまり。
クークード遺跡の管理側は、入場した個人を特定できる。
本日のクークード遺跡は。
『この世界の成り立ち』の講義を受講し、
かつ、
指導教授のイーハン教授の呼びかけに応じ、
クークード遺跡の見学ツアーに参加するニンデリー王立学園の学生のために、
ニンデリー王立学園が貸し切りにしている。
この状況で、オッドア伯爵令嬢バネッサを襲撃するなんて。
正面から、オッドア伯爵家に果たし状を叩きつけたも同然。
オッドア伯爵家に、正体を見破られて、責任をとらされても仕方がない。
逆を言うと。
オッドア伯爵令嬢バネッサが、敵の正体を掴めずに引き分けたり、まかり間違って敗北する事態になったら?
オッドア伯爵家は、体裁を保てなくなる。
バネッサ自身も侮られる。
そんなクークード遺跡の中で、仕掛けてくるぐらいだから。
敵は、正体を気取られないように、万全の対策を練ってきていると、バネッサは予想している。
だから、気を抜くことなく、慎重に後退した。
そんな、臨戦体勢のバネッサの横には、魔法を使い始めて半年未満のレベッカ・ショアがいる。
今、バネッサのアキレス腱は、バネッサと一緒にいるレベッカ・ショアだ。
実戦経験がないレベッカ・ショアは、武器を持っていたら、逆に、動きが鈍るため、バネッサの判断で、武器は携帯させていない。
武器を持つどころか、武器を見ることさえ、びくびくしているレベッカ・ショア。
睨み合い直前の今は、まだいい。
戦いが始まってからのレベッカ・ショアの処遇が問題だ。
パニックになって、敵に背を向けて逃げ出したり。
恐怖で冷静さを失って人質になったり。
バネッサの足を引っ張らせないように、戦場から退避させたかったが、レベッカ・ショアがバネッサから離れようとしない。
1人になるのが怖いのか。
バネッサを1人にするまいと意気込んでいるのか。
戦場に、戦えない味方なんて、敵以上に厄介だ。
レベッカ・ショアが、バネッサの言葉を聞き分ける冷静さをいつまで、持っていられるか?
バネッサの勝率を上げるために、もちこたえてほしいものだが。
一方。
レベッカ・ショアは、周りの異常な静けさに気づいた。
人がいて、こちらをうかがっている。
息を潜めて、何人も。
虎視眈々と、そのときを待つかのように。
気持ち悪い、とレベッカ・ショアは思った。
なんだか、付け狙われているみたい。
女の子を人気のないところで狙う人達?
それにしては。
性的な視線ではない気がする。
一挙手一投足、見られているのは確か。
何なの?
バネッサも緊張しているし。
突如。
レベッカ・ショアは、それに気づいて、大声で叫びそうになるのを必死でこらえた。
怪しいやつを刺激するのは、良くないだろう。
クークード遺跡の見学ツアーは、イーハン教授が学生に呼びかけて、参加者は、学生限定のはず。
それなのに。
なんで、大人の男の人がいるの!
男の人は、1人じゃない!
前からも、横からも迫ってきている。
見えていないけれど、後ろからも、ひょっとして?
オッドア伯爵領での小競り合いのときは、携帯用ではない、武器庫に並べてある武器を使うが、武器を携帯しない暮らしはしたことがない。
オッドア伯爵領は、隣国だけではなく、小競り合い狙いで、人の出入りが激しい。
出入りする人種が、平和的な一般人であることは少ない。
控え目にいって、どこぞの諜報員だし、うっかり気を抜くと、混乱に乗じて、他所から犯罪組織が入り込んでくる。
犯罪組織が、
『俺達のシマにするぜい。』
と自分達で考えて来るケースは稀。
九割九分、犯罪組織の後ろには、どこぞでほくそ笑むやつがいる。
領民は、猥雑な環境に順応して、逞しく商売しているが、オッドア伯爵領の領内での喧嘩や犯罪には、暴力がつきもの。
だから。
小競り合いに呼ばれず、領内を見回るときも、常に、命の危険を意識して動くのがバネッサの日常。
ニンデリー王立学園に来てからも、バネッサのその習慣は変わっていない。
変えるつもりもない。
ニンデリー王立学園に来てからの方が、バネッサは、対策を練っている。
オッドア伯爵領では、アレックスはいても、アレックス以外がたくさんいた。
バネッサにとって、アレックスは、脅威ではなく、古参の使用人は信頼できた。
しかし。
ニンデリー王立学園では、周囲に、何人も信頼できる使用人を配置できる状況ではない。
最少の用意で、最大の効果を狙うために。
バネッサは、毎日、侍女のトゥーミラと、あーでもないこーでもないと、意見を交わして、試行錯誤を重ねてきた。
部屋の中でできる鍛錬は、毎日欠かさずやっているバネッサ。
武器を交える戦いは、領地を離れて以来。
実に、半年ぶりだ。
魔法は常時、発動を維持しているが、敵が、どこの誰かが分からないままに、戦いに移行したくはない。
伯爵令嬢であるバネッサには、責任がつきまとう。
襲われて、反撃して、それで終わりではない。
オッドア伯爵家のご令嬢を襲った者には。
オッドア家が、それに見合う報復し、賠償を求め、なにがしかの代償を払わせる。
ここまでが、一連の流れ。
貴族には、守るべき面子と体裁があるので、決して蔑ろにはできない。
クークード遺跡内で襲撃されて、
『敵が、どこの誰だがわかりませんでした。』
じゃ、お話にならない。
クークード遺跡は、入退場で、魔力の登録を行っている。
つまり。
クークード遺跡の管理側は、入場した個人を特定できる。
本日のクークード遺跡は。
『この世界の成り立ち』の講義を受講し、
かつ、
指導教授のイーハン教授の呼びかけに応じ、
クークード遺跡の見学ツアーに参加するニンデリー王立学園の学生のために、
ニンデリー王立学園が貸し切りにしている。
この状況で、オッドア伯爵令嬢バネッサを襲撃するなんて。
正面から、オッドア伯爵家に果たし状を叩きつけたも同然。
オッドア伯爵家に、正体を見破られて、責任をとらされても仕方がない。
逆を言うと。
オッドア伯爵令嬢バネッサが、敵の正体を掴めずに引き分けたり、まかり間違って敗北する事態になったら?
オッドア伯爵家は、体裁を保てなくなる。
バネッサ自身も侮られる。
そんなクークード遺跡の中で、仕掛けてくるぐらいだから。
敵は、正体を気取られないように、万全の対策を練ってきていると、バネッサは予想している。
だから、気を抜くことなく、慎重に後退した。
そんな、臨戦体勢のバネッサの横には、魔法を使い始めて半年未満のレベッカ・ショアがいる。
今、バネッサのアキレス腱は、バネッサと一緒にいるレベッカ・ショアだ。
実戦経験がないレベッカ・ショアは、武器を持っていたら、逆に、動きが鈍るため、バネッサの判断で、武器は携帯させていない。
武器を持つどころか、武器を見ることさえ、びくびくしているレベッカ・ショア。
睨み合い直前の今は、まだいい。
戦いが始まってからのレベッカ・ショアの処遇が問題だ。
パニックになって、敵に背を向けて逃げ出したり。
恐怖で冷静さを失って人質になったり。
バネッサの足を引っ張らせないように、戦場から退避させたかったが、レベッカ・ショアがバネッサから離れようとしない。
1人になるのが怖いのか。
バネッサを1人にするまいと意気込んでいるのか。
戦場に、戦えない味方なんて、敵以上に厄介だ。
レベッカ・ショアが、バネッサの言葉を聞き分ける冷静さをいつまで、持っていられるか?
バネッサの勝率を上げるために、もちこたえてほしいものだが。
一方。
レベッカ・ショアは、周りの異常な静けさに気づいた。
人がいて、こちらをうかがっている。
息を潜めて、何人も。
虎視眈々と、そのときを待つかのように。
気持ち悪い、とレベッカ・ショアは思った。
なんだか、付け狙われているみたい。
女の子を人気のないところで狙う人達?
それにしては。
性的な視線ではない気がする。
一挙手一投足、見られているのは確か。
何なの?
バネッサも緊張しているし。
突如。
レベッカ・ショアは、それに気づいて、大声で叫びそうになるのを必死でこらえた。
怪しいやつを刺激するのは、良くないだろう。
クークード遺跡の見学ツアーは、イーハン教授が学生に呼びかけて、参加者は、学生限定のはず。
それなのに。
なんで、大人の男の人がいるの!
男の人は、1人じゃない!
前からも、横からも迫ってきている。
見えていないけれど、後ろからも、ひょっとして?
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