上 下
196 / 763
第6章 可動式魔法遺跡、クークード遺跡の見学ツアーに参加しよう。

195.マーゴット・ガラン。スラッルス・トークンの魔法と魔力に対する意識を聞いた。『レベッカ・ショアも異世界転生者として、狙われている?』

しおりを挟む
さて。
キャスリーヌと合流しようとマーゴットは、キャスリーヌを探していた。

帰る前に、側近のキャスリーヌとスラッルス・トークンの打ち合わせをしておきたい。

スラッルス・トークンは、銀色の球体の後、クレーンゲームをみつけて走っていったが、青ざめて戻ってきた。

「クレーンゲームじゃない。あんなのクレーンゲームとは言わない。」
と草の上に寝転がるスラッルス・トークン。

マーゴットは、クレーンゲームを見にいった。

部屋の天井に、腕が2本ぶら下がっている。

クレーンゲームの参加者は、床にある透明な球体に入り、天井からぶら下がっている腕に、球体ごと捕まえてもらう遊びだ。

マーゴットも入ってみた。

球体は、狭くもなく、清潔で、快適。

1つの球体に、1人ずつ。

マーゴット以外にも、球体に入っている人はいる。

2つ隣が持ち上がっていく。

そして。

ぐしゃっ。

腕は、球体を握り潰した。

中にいた人は、握りつぶされる直前に、するする移動している。

「スリリングがたまらない!」
と頬を紅潮させている。

うん。
いかにぎりぎりまで、粘って脱出するか、を考えるだけで、マーゴットの心は躍る。

スラッルス・トークンは、なぜ青ざめていたんだろう?

魔法は常時発動しているから、魔法を使えばいい。

魔法は、魔力がある人間が、魔力を意識して練習すれば使える。

考えるよりも先に、反射的に魔法を使う人もいる。

マーゴットは、わくわくしながら、待っていた。

マーゴットの番が来た。

球体が、ぐしゃっとなる瞬間飛び出して、天井からぶら下がっている腕の上に、タンと降り立つ。

見物人から拍手が起こった。
「あれ、今の、かっこいい。」
「今の、やる!」
「次は、腕に乗る!」

拍手喝采の中、軽々と床に着地すると、見物人が手を振ってきたから、振り返す。

「楽しい。」
マーゴットは、とても楽しんでから、スラッルス・トークンの元に戻った。

「楽しかったんかー。そーかー。」
スラッルス・トークンは、ご機嫌なマーゴットを言葉少なに迎えた。

「何がダメだった?」
とマーゴット。

「ぐしゃっと球体が、潰れる瞬間に、もうダメだ!死ぬ、潰れる!と。
パニックになると、魔法なんて使えない。
見ていた人が、見かねて魔法を使ってくれて良かった。」
とスラッルス・トークン。

「魔法は、反射的に使わない?」
とマーゴット。

「魔法は咄嗟に出ない。
魔力を理解して、魔法があるとは知っているけれど、咄嗟の場面では、前世の常識で、体が動くわー。
魔法は無意識では使えないなー、俺は。」
とスラッルス・トークン。

スラッルス・トークンの解説を、ふんふんと聞いていたマーゴットは、はたっと思い至った。

自分自身に魔力があると思っておらず、魔法が使えなかったレベッカ・ショア。

魔法を使わない道具もあるけれど。

魔導具がある暮らしの中にいたら、魔力や、魔法の存在に気づくチャンスはいくらでもある。

でも、最初から、自分に魔法は無縁だと思い込んでいたら?

魔力の存在は、これが魔力だと、自身で知らなければ気づかない。

最初から、魔力の存在を信じていないなら、魔力には気づかない。

魔力については、家族が、気づくきっかけを作ることが多い。

でも。
レベッカ・ショアは、家族よりも、侍女に傾倒していて、教育も日々の世話も、侍女に委ねていた。

レベッカ・ショアが魔力について言い出さないから、レベッカに魔力があることを教えなかった侍女。


マーゴットは、1つの仮説をたてた。

レベッカ・ショアは、異世界転生者ではないか?と。

レベッカ・ショアの侍女は、レベッカ・ショアが異世界転生者だと知っていて。
レベッカ・ショアにニンデリー王立学園への進学を勧めた。
レベッカ・ショアが、母国を出て、親元から離れ、外国のニンデリー王立学園に入学するようになって。
レベッカ・ショアの生活全般は、侍女への依存度を一気に高めたはず。

その環境で、レベッカ・ショアが学生生活を送り始めてから、姿を消した侍女。

レベッカ・ショアが、異世界転生者だと侍女が知っていて、ニンデリー王立学園に連れてきてから、姿を消したんだとしたら?

レベッカ・ショアを使用人を帯同しない貴族の女子寮に追いやろうとしていた、ニンデリー王国の第1王子派の貴族のご令嬢方と、使用人帯同の貴族の女子寮の職員。

追い出す先を、使用人を帯同しない女子寮に、最初から限定していなかったか?

レベッカ・ショアに使用人がいない状態になったのは、レベッカ・ショアの侍女が出奔したから。

レベッカ・ショアの使用人は、ニンデリー王立学園の使用人と面識があり、人気者。

状況証拠ばかりだけど、符丁は合う。

今日、クークード遺跡を出る前に、レベッカ・ショアにも確認しておかなくては。

レベッカ・ショアも、スラッルス・トークンと同様に、『魔法の進化』の研究素材として、ニンデリー王立学園にいる可能性が高くなる。

レベッカ・ショアが、異世界転生者だとしたら。

スラッルス・トークンとレベッカ・ショア。

マーゴットがよく知る2人とも、命を狙われていることになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

何とか言ったらどうなんだ!

杜野秋人
ファンタジー
「そなたとの婚約を、今この場で破棄する!」 王妃陛下主催の夜会の会場にて、王子は婚約してわずか3ヶ月の婚約者に婚約破棄を通告した。 理由は『婚約者たる王子に対して無視を続け愚弄した』こと。 それに対して婚約者である公爵家令嬢は冷静に反論するも、王子にその『言葉』は全く届かない。 それもそのはず。令嬢は王子の思いもよらぬ方法で語りかけ続けていたのだから⸺。 ◆例によって思いつきでサクッと書いたため詳細な設定はありません。主人公以外の固有名詞も出ません。 比較的ありがちなすれ違いの物語。ただし、ちょっと他作品では見ない切り口の作品になっています。 ◆仕様上選択しなくてはならないし女性主人公なので「女性向け」としていますが、本来は性別問わず広く問われるべき問題です。男女問わず読んで頂き向き合って下さればと思います。 ◆話の都合上、差別的な表現がありR15指定しております。人によってはかなり不快に感じるかと思いますので、ご注意願います。 なお作者およびこの作品には差別を助長する意図はございませんし、それを容認するつもりもありません。 ◆無知と無理解がゆえにやらかしてしまう事は、比較的誰にでも起こり得る事だと思います。他人事ではなく、私(作者)も皆さん(読者)も気をつけましょうね、という教訓めいたお話です。 とはいえ押し付ける気はありません。あくまでも個々人がどう考えどう動くか、それ次第でしかないと思います。 ◆なろう版で指摘頂いたので恋愛ジャンルからファンタジージャンルに変更します。恋愛ものと思って読んで下さった皆さまごめんなさい。 ◆この話も例によって小説家になろうでも公開致します。あちらは短編で一気読み。 ◆なろう版にて多くの感想を頂いています。 その中で「声が出せない以外は健康で優秀」という設定に違和感があるとご指摘を頂きました。確かに障碍というものは単独で発現するものではないですし、そのあたり作品化するにあたって調べが足りていなかった作者の無知によるものです。 ですので大変申し訳ありませんが、現実世界ではない「魔術もある異世界」の話ということで、ひとつご容赦願えればと思います。誠に申し訳ありません。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...