上 下
190 / 776
第6章 可動式魔法遺跡、クークード遺跡の見学ツアーに参加しよう。

189.『魔法がない世界からの異世界転生者だと、知られないように。ニンデリー王立学園の学生でいる間は、特に秘すこと。』

しおりを挟む
スラッルス・トークンは、咄嗟に返事ができなかった。

深刻な展開は、予想していなかった。


イーハン教授に尋ねたとき、スラッルス・トークンは、何か答えてくれたらラッキーくらいに考えていた。
だから。
何も伏せないで、聞いた。


マーゴットが、先に反応した。
「この場で、それに、まつわるお話をお聞きすることは、可能でしょうか?」
とマーゴット。

「ゼーゼ教授の『魔法の進化』は、魔法がない世界から異世界転生した者のうち、この世界で魔法が使える者を研究していた。」
とイーハン教授。

「研究対象は、人ですか?青空教室は、研究対象を探す場所ですか?」
とマーゴット。

「青空教室を知っているか。物知りだね。」
とイーハン教授。

「開催されていた、という話を耳にしました。参加はしていません。」
とマーゴット。

「異世界転生者を研究するのではなく、異世界転生者を使った研究だ。分かるね?」
とイーハン教授。

「スラッルス・トークンは、見つかったら、使われる。
使われたら、生きて帰ってこれない。
研究者が、手出しできないように、クークード遺跡を引き継ぐ者として、スラッルス・トークン自身の名をあげる。
ニンデリー王立学園に在学中は、有効な手段ということですね。
他に対策はできますか?」
とマーゴット。

「一緒に戦えるように、家族関係を良好にしておく。
それが難しいなら、色々なものと戦っても、自身の力で勝てるようになっておくことだね。」
とイーハン教授。

「色々とは、権力者相手ですか?」
とマーゴット。

「実際の戦闘もだね。」
と話すイーハン教授は、寂しそうな目をした。

目撃したのだろうか?
抵抗の末、敗れていなくなった学生の姿を。

「異世界転生者を使うんですか?」
スラッルス・トークンは、やっと自身で質問できた。

「そうだね。ゼーゼ教授の『魔法の進化』は、魔法がない世界にいた人間が、魔法を使えるようになった現象を、人為的に再現する方法を研究している。」
とイーハン教授。

「クークード遺跡の中を見て、見たことがあり、元の使い方を知っている。

魔法を本能で使いこなしておらず、頭で考えて使う。

今日、クークード遺跡の中で、この2点が当てはまるのは、1人だけだね。」
とイーハン教授。

「だから、俺に忠告を。」
とスラッルス・トークン。
「マーゴットも聞いていますけど、いいんですか?マーゴットは、違いますよね。」

「ガランの御息女だからね。」
とイーハン教授。

マーゴット自身のことについては、我関せずなマーゴット。

「最初から、猟奇的な研究でしたか?」
とマーゴット。

「いや、最初は、平和的だったよ。色々あって、途中から、猟奇的にならざるをえなくなったね。」
とイーハン教授。

「学内の再編が関係していますか?それとも、第1王子派と第2王子派の確執が関係していますか?」
とマーゴット。

「どちらも無関係とは言えないね。」
イーハン教授。

「ありがとうございます。」
とマーゴット。
「別件ですが、この鯉は、いつ来てもいますか?」

「この池の鯉は、異世界から、落っこちてきた鯉を集めているんだ。」
イーハン教授は、マーゴットの年相応の瞳の輝きを微笑ましく見ている。

「落っこちてくるんですか、鯉が。」
スラッルス・トークンは、空から鯉が降ってくる光景を思い浮かべた。

「ある時、池ごと落ちているのを見つけて、池ごとクークード遺跡に運んだ。
その池が、今目の前にある池だね。
その後は、落ちてきた鯉はこの池に転送するようになっている。
鯉は、定期的に落ちてくるから、いつ来てもいるよ。」
とイーハン教授。

「鯉、転送できるんですか?生きたまま?」
とスラッルス・トークン。

「それなりに高度な技術と理論の組み合わせだから、誰でも、は難しい。
しかし、クークード遺跡に関わる者は、困難に打ち克つ喜びにふるえるね。」
とイーハン教授。

「趣味の人の趣味って、人生なんですか?」
思わず、聞いてしまったスラッルス・トークン。

その質問には、笑って答えなかったイーハン教授は、スラッルス・トークンの両肩に手を乗せた。
「君が、どのように成長してクークード遺跡に関わっていくか、楽しみにしている。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...