上 下
91 / 763
第4章 学生色々。学校でのトラブルって、避けられるものと、避けられないものがあるんだよね。

90.真面目にコツコツしているより、要領を掴むのが早い方の評価が上で、要領の良い方に期待がよせられ、望んでない大役が転がりこんでいく。

しおりを挟む
「貴女は、第1王子派や第2王子派のどちらでもないと宣言しているそうだけど、ジョンストン伯爵夫人、貴女の叔父の現ジョンストン伯爵、貴女の秘書は、何をどう考えてるか、知っている?」
ナユカの返事は予想できる。
確認のため、わたしは聞いてみることにした。

「知らない。聞かれたことも、聞いたこともないわ。」
とナユカ。
ナユカは、伯爵家の嫡女と自らを位置づけるわりに、嫡女としての役割を理解していない。
長女に生まれたから、長女だと主張しているかのよう。
嫡女という包装を外すと、空っぽの箱が出てきたときのガッカリ感。

12歳なら、このままでも通じる?
嫡女の虚像は、来年まで保たせられないだろう。

底の抜けたバケツに水を入れても、全て漏れる。
若干の水滴を残して。

「貴女自身の考えは?」
1度、ナユカに話させてみようか?
自分というものを。
ナユカは、自身の意見や思いを尋ねられた経験に乏しいように見える。
何を掘り当てることができる?

「私?」
ナユカの顔がぱっと明るくなる。

「ナユカ・ジョンストンは、何を考えているの?」

今までの鬱々した様子から切り替わった

「ジョンストン伯爵家の養女だからって、ハーメリーは絶対に嫌。ジョンストン伯爵家として、繋がりを持つなら、バネッサがなってほしい。」
思い詰めた口ぶりのナユカ。

なんで、バネッサが関係ある?
ナユカ・ジョンストンの部屋の中で、ずっと黙っていたキャスリーヌが、初めて口を開いた。
「ハーメリーの代わりにバネッサをって、第2王子妃に?」

「そうよ。それがいい。どうして、ハーメリーなの?バネッサは、伯爵令嬢で、私の友達。バネッサが第2王子妃よ。」
と急に明るくなるナユカ。

「王子妃にバネッサという選択肢のヒントは、いつから?どこから?誰から?」
とマーゴット。

「何なの?急に。めでたいことなんだから、応援して。」
とナユカ。

「ナユカが、第2王子との結婚をめでたいと考えているのなら、ナユカが結婚したら?ジョンストン伯爵家に第2王子が婿入り。」
とバネッサ。
得体のしれない政略結婚など、安易に承諾したりはしない。

「ダメよ。それじゃ、ハーメリーが持っていくわ。」
と焦るナユカ。

「どういう意味?」
とキャスリーヌ。

「ハーメリーの方が、私より出来がいいのよ。私はずっと仕事をしてきたのに、ハーメリーは、私より早いの。」
ナユカは苛々と机を指で叩く。

「他者からの仕事の評価の話?」
とのキャスリーヌの呟きはナユカの耳に届かなかった。

「私は、これ以上、ハーメリーに負けるわけにはいかないの。ハーメリーは、平気な顔して、欲しがっていないのに、私のものを勝手に手に入れていくの。」
ナユカの顔から明るさは掻き消え、憎しみがかまをもたげてきた。

「後継ぎ交代の話しがあるの?」
とバネッサ。

「どっちか、と言われているの。ハーメリーが家を出て第2王子妃になるか、私じゃなく、ハーメリーに貴族の婿をとらせて、後継ぎにするか。」
と話すナユカの目は、ギラついている。

「私は、どっちも嫌。ハーメリーに王子妃になってほしくないし、ハーメリーに家にいてほしくもない。ジョンストン伯爵家は、私の家。ハーメリーの家じゃない。」
と、ナユカは吐き捨てる。

「ハーメリーに婿をとらせるとなったときの、貴女の行く末は?」
とマーゴット。

「知らない。誰も彼も私のことなんていないように扱う。仕事以外で、私に話しかける人も、私の話をする人もいない。私が、どうなるか、なんて、私が一番知りたいわよ。」
ナユカは、うねる怒りを目に蓄えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

何とか言ったらどうなんだ!

杜野秋人
ファンタジー
「そなたとの婚約を、今この場で破棄する!」 王妃陛下主催の夜会の会場にて、王子は婚約してわずか3ヶ月の婚約者に婚約破棄を通告した。 理由は『婚約者たる王子に対して無視を続け愚弄した』こと。 それに対して婚約者である公爵家令嬢は冷静に反論するも、王子にその『言葉』は全く届かない。 それもそのはず。令嬢は王子の思いもよらぬ方法で語りかけ続けていたのだから⸺。 ◆例によって思いつきでサクッと書いたため詳細な設定はありません。主人公以外の固有名詞も出ません。 比較的ありがちなすれ違いの物語。ただし、ちょっと他作品では見ない切り口の作品になっています。 ◆仕様上選択しなくてはならないし女性主人公なので「女性向け」としていますが、本来は性別問わず広く問われるべき問題です。男女問わず読んで頂き向き合って下さればと思います。 ◆話の都合上、差別的な表現がありR15指定しております。人によってはかなり不快に感じるかと思いますので、ご注意願います。 なお作者およびこの作品には差別を助長する意図はございませんし、それを容認するつもりもありません。 ◆無知と無理解がゆえにやらかしてしまう事は、比較的誰にでも起こり得る事だと思います。他人事ではなく、私(作者)も皆さん(読者)も気をつけましょうね、という教訓めいたお話です。 とはいえ押し付ける気はありません。あくまでも個々人がどう考えどう動くか、それ次第でしかないと思います。 ◆なろう版で指摘頂いたので恋愛ジャンルからファンタジージャンルに変更します。恋愛ものと思って読んで下さった皆さまごめんなさい。 ◆この話も例によって小説家になろうでも公開致します。あちらは短編で一気読み。 ◆なろう版にて多くの感想を頂いています。 その中で「声が出せない以外は健康で優秀」という設定に違和感があるとご指摘を頂きました。確かに障碍というものは単独で発現するものではないですし、そのあたり作品化するにあたって調べが足りていなかった作者の無知によるものです。 ですので大変申し訳ありませんが、現実世界ではない「魔術もある異世界」の話ということで、ひとつご容赦願えればと思います。誠に申し訳ありません。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...