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第4章 学生色々。学校でのトラブルって、避けられるものと、避けられないものがあるんだよね。
85.家族の秘密は、悩みが深いほど、打ち明けにくい。
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結界を張ったことが、ナユカの緊張感を緩和することに繋がった。
マーゴットは、何気ない雰囲気の変化を掴んだ。
1人で抱えるには重過ぎる秘密が、ナユカにはあるのか?
マーゴットは、推測した。
ナユカは、誰かと内緒話をする環境にいなかったのかな?とキャスリーヌは思った。
深入りする気はないので、わざわざ聞いたりはしない。
「ハーメリー・ジョンストンは、ジョンストン伯爵家の名を背負う伯爵令嬢として、問題がないの?」
キャスリーヌは、重ねて聞く。
問題があったから、ナユカ・ジョンストンの部屋で会談をすることになった。
この場でそんなツッコミを入れるのは、キャスリーヌしかいない。
しかし。
キャスリーヌは質問者に回っているから、ツッコミは不在だ。
「ハーメリーのことは、ずっと異母姉妹だと思っていたわ。けれど、最近、従姉妹だと分かったの。」
とナユカ。
ナユカにとって、誰かに聞いて欲しくてたまらないけれど、話す相手を選ぶ話題過ぎて、話す相手がいなかった話が始まろうとしている。
マーゴットは、腹をくくる。
話をしないという選択肢は、今のナユカにはない。
堰を切ったように、話し出すだろう。
暴露話でも、愛憎劇でも、どんとこい。
キャスリーヌも聞く体勢になっている。
バネッサは、いきなり、何が始まるのか?と動揺しながらも、表には出していない。
さすが、伯爵令嬢。
ナユカは、マーゴット、キャスリーヌ、バネッサと目は合わせない。
視線をそらしたまま話す。
「父の娘なら、養女じゃなくて、次女になるから変だと思って、調べたの。」
「現ジョンストン伯爵は、ハーメリーの実父だけど、私の実父じゃなかった。私の実父の弟。私の叔父だったの。」
ナユカはため息をついた。
「私には、実父の記憶がないの。いつも、金を無心するためだけに来る男の人を父だと思って生きていた。お父様、行かないで、帰ってきて。何度呼びかけても、返事をされたことなんか、なかったのに。」
ナユカの目は、泣き過ぎて涙が涸れた人の目だった。
「父じゃなくて、叔父だったなんて。でも、叔父なら、叔父だと、一言教えてくれたら。」
ナユカの目に涙が溜まる。
「期待も、落胆もせず、叔父の円満な家庭を羨むことも、恨むこともなく、私と母の有り様を嘆くこともしないで済んだのに。ずっと、ずっと。」
「いつ、分かったの?」
とキャスリーヌ。
「父が、自分はハーメリーの父であって、お前とは親子じゃない、と何度も私に言うの。私が、お父様と呼びかける度に。使用人の前でも、どこでも、何も気にせずに大声で、忌々しげに言うから。そんなに言われるならって。」
詰られすぎて、真実かも?と確かめたら、真実だったと。
「従姉妹一家が、伯爵家に来て、ハーメリーが伯爵の養女になってからの話なの?」
とバネッサ。
「そうよ。」
とナユカ。
ナユカの周囲にいた人間には、ナユカの誤解を解く機会が今まで十分あったはず。
ナユカが誤解したままなのは、誤魔化されていたから?
それとも、本人が、都合のいいことしか信じようとしなかったから?
「ハーメリーは、叔父が平民の期間に、平民の妻との間に出来た娘。」
話し始めたナユカは、止まらない。
「だから、ハーメリーは、貴族のご令嬢じゃない。」
「ハーメリーがジョンストン伯爵家の養女なのは、本当は、私の従姉妹だから。伯爵家には、叔父がお金を無心に来るだけ。私の従姉妹に会ったことは、ハーメリーが養女になるまで、1度もなかったわ。」
ナユカは、何度も思い返した悔しい日々の記憶を抑え込む。
「今のジョンストン伯爵は、私の実父の弟。
私の実父は、前ジョンストン伯爵。
私は、前ジョンストン伯爵と伯爵夫人の母との間に生まれた。
私の祖父が、私の母と結婚した相手をジョンストン伯爵にすると決めたから。
私の父は、母と結婚してジョンストン伯爵になった。
わたしが生まれて、2年経つ前に実父がなくなり、母がジョンストン伯爵夫人として、切り盛りしてきた。
体調を崩して寝込んでいた母のところに、金を無心にきた叔父が、体調の悪い母と無理やり結婚して、ジョンストン伯爵になったの。
母は、不調に悩んでいたけれど、療養が必要になるほどではなかったわ。叔父がジョンストン伯爵になりたいがため、叔父との結婚を強行したら、母は、体調が悪化したのよ。
ハーメリーは、伯爵家の養女だけど平民。私達は、姉妹ではないの。父も母も両方違う。」
ナユカは、溜め込んだものを吐き出しきった。
「ハーメリーは、貴族エリアに堂々と居座って、私達に突撃してきたけど、貴族エリアに入る資格はなかったんだよね?なんで排除されていないの?」
とキャスリーヌ。
マーゴットは、何気ない雰囲気の変化を掴んだ。
1人で抱えるには重過ぎる秘密が、ナユカにはあるのか?
マーゴットは、推測した。
ナユカは、誰かと内緒話をする環境にいなかったのかな?とキャスリーヌは思った。
深入りする気はないので、わざわざ聞いたりはしない。
「ハーメリー・ジョンストンは、ジョンストン伯爵家の名を背負う伯爵令嬢として、問題がないの?」
キャスリーヌは、重ねて聞く。
問題があったから、ナユカ・ジョンストンの部屋で会談をすることになった。
この場でそんなツッコミを入れるのは、キャスリーヌしかいない。
しかし。
キャスリーヌは質問者に回っているから、ツッコミは不在だ。
「ハーメリーのことは、ずっと異母姉妹だと思っていたわ。けれど、最近、従姉妹だと分かったの。」
とナユカ。
ナユカにとって、誰かに聞いて欲しくてたまらないけれど、話す相手を選ぶ話題過ぎて、話す相手がいなかった話が始まろうとしている。
マーゴットは、腹をくくる。
話をしないという選択肢は、今のナユカにはない。
堰を切ったように、話し出すだろう。
暴露話でも、愛憎劇でも、どんとこい。
キャスリーヌも聞く体勢になっている。
バネッサは、いきなり、何が始まるのか?と動揺しながらも、表には出していない。
さすが、伯爵令嬢。
ナユカは、マーゴット、キャスリーヌ、バネッサと目は合わせない。
視線をそらしたまま話す。
「父の娘なら、養女じゃなくて、次女になるから変だと思って、調べたの。」
「現ジョンストン伯爵は、ハーメリーの実父だけど、私の実父じゃなかった。私の実父の弟。私の叔父だったの。」
ナユカはため息をついた。
「私には、実父の記憶がないの。いつも、金を無心するためだけに来る男の人を父だと思って生きていた。お父様、行かないで、帰ってきて。何度呼びかけても、返事をされたことなんか、なかったのに。」
ナユカの目は、泣き過ぎて涙が涸れた人の目だった。
「父じゃなくて、叔父だったなんて。でも、叔父なら、叔父だと、一言教えてくれたら。」
ナユカの目に涙が溜まる。
「期待も、落胆もせず、叔父の円満な家庭を羨むことも、恨むこともなく、私と母の有り様を嘆くこともしないで済んだのに。ずっと、ずっと。」
「いつ、分かったの?」
とキャスリーヌ。
「父が、自分はハーメリーの父であって、お前とは親子じゃない、と何度も私に言うの。私が、お父様と呼びかける度に。使用人の前でも、どこでも、何も気にせずに大声で、忌々しげに言うから。そんなに言われるならって。」
詰られすぎて、真実かも?と確かめたら、真実だったと。
「従姉妹一家が、伯爵家に来て、ハーメリーが伯爵の養女になってからの話なの?」
とバネッサ。
「そうよ。」
とナユカ。
ナユカの周囲にいた人間には、ナユカの誤解を解く機会が今まで十分あったはず。
ナユカが誤解したままなのは、誤魔化されていたから?
それとも、本人が、都合のいいことしか信じようとしなかったから?
「ハーメリーは、叔父が平民の期間に、平民の妻との間に出来た娘。」
話し始めたナユカは、止まらない。
「だから、ハーメリーは、貴族のご令嬢じゃない。」
「ハーメリーがジョンストン伯爵家の養女なのは、本当は、私の従姉妹だから。伯爵家には、叔父がお金を無心に来るだけ。私の従姉妹に会ったことは、ハーメリーが養女になるまで、1度もなかったわ。」
ナユカは、何度も思い返した悔しい日々の記憶を抑え込む。
「今のジョンストン伯爵は、私の実父の弟。
私の実父は、前ジョンストン伯爵。
私は、前ジョンストン伯爵と伯爵夫人の母との間に生まれた。
私の祖父が、私の母と結婚した相手をジョンストン伯爵にすると決めたから。
私の父は、母と結婚してジョンストン伯爵になった。
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体調を崩して寝込んでいた母のところに、金を無心にきた叔父が、体調の悪い母と無理やり結婚して、ジョンストン伯爵になったの。
母は、不調に悩んでいたけれど、療養が必要になるほどではなかったわ。叔父がジョンストン伯爵になりたいがため、叔父との結婚を強行したら、母は、体調が悪化したのよ。
ハーメリーは、伯爵家の養女だけど平民。私達は、姉妹ではないの。父も母も両方違う。」
ナユカは、溜め込んだものを吐き出しきった。
「ハーメリーは、貴族エリアに堂々と居座って、私達に突撃してきたけど、貴族エリアに入る資格はなかったんだよね?なんで排除されていないの?」
とキャスリーヌ。
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