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第3章 学生の数だけ、物語がある。物語には創り手と演じ手がいるわけで。主役と脇役が交差したりもするよね。

55.強制執行いきます。

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「強制執行です。抵抗があれば、取り押さえます。」

マーゴットとキャスリーヌが寮の部屋に入寮する日は、コーハ王国の外交部の役人と、マーゴットの3番目の兄ハーマルの上司の妹である公爵令嬢のライラが立ち会いに来た。

部外者は、と立ち会いを断ろうとするニンデリー王国側に、部外者に部屋を盗まれた経験を活かした、とマーゴットは主張して、押し通した。

マーゴットとキャスリーヌの部屋を占拠していた1人がニンデリー王国の公爵令嬢だったから、外交部の部長である公爵家嫡男が、対抗馬として、自身の妹を派遣することを決定した。

部屋の明け渡しを渋っていたニンデリー王国の公爵令嬢達の部屋には、コーハ王国の外交部から派遣された役人と公爵令嬢ライラが見届け人であると名乗って、ライラの侍女と共に乗り込んだ。

ハーマルの上司の公爵家嫡男は、コーハ王国の王太子の側近でもある。

ニンデリー王国の公爵令嬢が権力で物申してくるなら、マーゴットは、さらなる権力でごりごりするのみ。

ライラの派遣を打診したのは、他の誰でもない、マーゴット自身。

今日は、部屋の明け渡しを求めて、強制執行に踏み切った。

ライラの連れてきた公爵家の侍女が、ニンデリー王国の公爵家の侍女を部屋の外へ。
ライラが、ニンデリー王国の公爵令嬢を部屋の外へ。

どちらも、着の身着のままで部屋の外へ。

公爵令嬢は、部屋着だが、部屋の備品は持ち出し不可なので、部屋着のまま、本来の部屋の前まで、廊下を歩いてお連れしている。

公爵令嬢のすぐ後に、侯爵令嬢とその侍女も、同様に部屋着のままで、廊下を歩いて、本来の部屋へと案内された。

続いて、両部屋に持ち込まれていた公爵家と侯爵家の荷物は、順番に部屋から運び出され、本来の部屋の前の廊下に積み上げられた。

公爵令嬢と侯爵令嬢の本来の部屋は、まだ部屋の住人が引っ越ししていなかったために、本来の部屋の中に荷物を運ぶことが出来なかったのだ。

強制執行に踏み切ったのは、ニンデリー王国の部屋を占拠している公爵家他が、ホテル代支払いを渋ったから。

第1王子派の下位貴族のご令嬢は、本来の自分の部屋にさっさと引っ越しした。中位貴族のご令嬢は、下位貴族のご令嬢の部屋が空き次第、部屋を移動。
高位貴族のご令嬢が引っ越しを拒んでいる間に、真ん中の価格帯の部屋が2部屋空いた。
最初に割り当てた部屋より上等な部屋があるんだから、そこに入っておけば?とのたまい、用意された部屋に入らないわがままな子どものために、ホテル代は払わないとごねだしたのだ。

ゴネ得にはさせないという固い決意のもと、強制執行に及んだのである。

これから、部屋の点検や清掃をするので、入寮は1週間後になる。

今回の借りを返すには、兄のハーマルの仕事の成果だけでは足りない、とマーゴットは気づいている。

ライラ嬢には、ご足労いただいたお礼をしてしかるべし、とマーゴットとキャスリーヌの意見は一致している。

しかし、今後のことを考えると、お礼目当ての人間が湧いて出てこないような謝礼にしなくては。
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