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第1章 12歳。ニンデリー王国にあるニンデリー王立学園へ行こう。大人の思惑通りに動かないのは、少女の特権。

8.ハズレ兄のハズレ具合が、上方修正されていく。そんな時、どうする?

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「このままだと、アレックスお兄様と一緒になるわ。」
とバネッサが心配している。

「何とかするから、大丈夫。」

わたし達は、異国の学校への期待を語り合った。

バネッサについてきた使用人はバネッサじゃなくて兄が主人だから、その使用人の前で、有益な情報は話さない。

他愛無い話をしているうちに国境へ。

国境では、出国手続きがある。

「バネッサ。出国に必要なものは?」
わたしが聞くと、バネッサは、1人残った使用人の顔を見た。
バネッサの側にいた使用人は、馬鹿にしたように、わたし達を笑った。
「なんですか、あたしの顔になんかついていますか?ジロジロ見てきても、何もありませんよ。」

この使用人が、アレックスの側の人間だと、よく分かるわ。

「バネッサ様が、いきなり反抗期になるから、本当に迷惑です。アレックス様が全て手配してくださるんですから、アレックス様の言う通りにしていれば良かったんですよ。」

バネッサは、れっきとした伯爵令嬢。
いくら、兄アレックスの使用人だからって、主家のご令嬢に対する態度?

バネッサの横の使用人が、顎でしゃくった方向には、バネッサのハズレ兄アレックスがいる。

「ほら、アレックス様がお待ちですよ。一生懸命、謝ってきたらどうですか?妹だから、謝れば済むんですよ。どうせ。」

使用人が、無礼な台詞を吐いている間に、アレックスが、わたし達の目の前に、大股で歩いてくる。

威嚇してる?
ハズレ兄が、バネッサを?

アレックスは、バネッサに聞いてきた。
「バネッサ、出国の手続きは、1人で出来そうか?困っていないか?兄を兄とも思っていないようなバネッサだけど、まだまだお子ちゃまだからな。許してやってもいい。」
アレックスは、バネッサの出国手続きに必要な一式を片手で、明かりにかざしたりし始めた。

バネッサは、兄に向かって、気丈に言い返した。
「出国手続きに必要な一式は、私のもので、アレックスお兄様のものではありません。私に全部渡してください。」

「どうしようっかなー。死んでくれ、と、バネッサに言われて傷ついたんだよ。言葉の暴力だよ。分かるかな?言葉の暴力ってさー。剣で切るだけが、暴力じゃないんだよ。心がさー、血を流しているんだよ。痛いんだよね。」
アレックスの瞳には、嗜虐の喜びが踊っている。

「痛いなー。心を傷つけられたなー。バネッサは、キツイ女の子だから、兄は辛いなー。」
アレックスは、わざと道化のように面白おかしく話してみせる。
ふいに。
アレックスはおどけた表情を消し、冷え冷えした視線と声をバネッサに向けてきた。
「バネッサさあ。学校、行けなくても、いいわけ?強情はってないで、謝れば?友達ともせっかく仲良くなったんだ。一緒に、仲良く謝ってもらうんだよ。」

証拠十分。

身分証明をたてにバネッサを脅したので、わたしの使用人を使って、わたしは人を呼んだ。

わたしの3番目の兄ハーマルと兄の知人が、国境へ見送りに来てくれている。

バネッサが、出国に必要な身分証明の手続きをたてに、実の兄アレックスから脅されたとわたしが話す。

バネッサの兄アレックスが、バネッサとわたし達を引率する予定だったが、バネッサの兄アレックスの目論見に気づき、バネッサと私とキャスリーヌが、引率と、目論見に加担するのを拒否したこと。

アレックスの目論見の内容。

わたしの話を聞いた3番目の兄ハーマルは、怒っているが、深窓のご令息タイプなので、全く怖くない。

わたしは、兄ハーマルの付き添いできている男に、バネッサのハズレ兄アレックスを頼んだ。

わたしの目当ては、わたしの兄ハーマルではなく、兄の付き添い。

兄ハーマルの付き添いは、兄ハーマルの直属の上司の弟なので、後継ぎではないが、公爵子息である。

公爵子息の権力を存分に使って、伯爵令嬢バネッサのハズレ兄アレックスの出国を差止めてもらう。

ニンデリー王国に圧をかけてほしいが、ハズレ兄アレックスが証拠を残していない可能性もある。

期待はすまい。
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