フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

1385.ユージュアルの婚約者。皇国とガラン、ベイモン、ノアの3組の顔見せからの婚約の成立が、難しい仕事だとは、皇国側は考えていなかった。

皇家と皇家に連なる貴族が外国の王侯貴族との婚約を成立させるためには、手順に則っていなくてはならない。

不幸な事件を増やさないために、皇家と皇家に連なる外国の王侯貴族との婚約成立については、制度化されている。

外国の王侯貴族との婚約において、皇国から申し入れた場合に、歓迎されることはあっても、拒否されることなどなかった。

少なくとも。

ユージュアルの婚約者をはじめとする皇国側は、拒否された事例を知らない。

婚約の打診と顔合わせ、どちらの場でも、迷いを見せられることはある。

迷う姿勢を見せてきても、皇国側は、取り合わない。

迷う姿勢はポーズであり、婚約にまつわる良い条件を引き出そうとする交渉手段にすぎず、皇国側には、取り合う価値がない。

婚約の提案をしたのが皇国であろうとなかろうと、婚約にあたり、皇国側が譲歩する理由など、どこにもない。

皇国相手に交渉しようなどと猪口才な真似をするな、と叱責して、終わり。

婚約のための顔見世から婚約の成立までの一連の仕事は、皇国の使者にとって、難しくない仕事の1つだった。

皇帝陛下に念を押されていても。

ガランから歓迎されていない雰囲気を感じ取っていても。

皇国とガランの溝がどこにあるかという問題に、皇国側は向き合おうとはしなかった。

手順通りに運ばないことに皇国側は苛立ちを募らせていく。

名前を教え合い、手順にそった手続きをすることで、皇国とガラン、ベイモン、ノアの婚約は、口約束ではなくなるのに、揉め事に持ち込もうとするなど。

まだ皇国側とガラン、ベイモン、ノアの3組の兄と妹は、互いに婚約者へ名前を教え合っていない。

ガラン家嫡男デヒルの発言は、聞き捨てにならない。

顔合わせで見た、ユージュアルの婚約者とサブリーの婚約者と皇弟との婚約を結ぶ気にはならなかった、などと。

生きてきて、これほどの侮辱を受けたことはない。

別の3人を婚約者として皇国側がたててくるなら、皇国との婚約を前向きに検討しよう、だと？

ガランは、ガランが皇国に条件を突きつけることができると思い上がっているのではないか？

皇国側がガラン家嫡男デヒルの抜刀について見逃してきたのは、取るに足りない行いとみなしてきたからだが、婚約者の交換要請となると聞き流して済ますわけにはいかない。

ガランと皇国との婚約は、皇弟がガランの4男との婚約を希望したために、皇国側は、皇帝の肝入りで、婚約の人選がされている。

婚約を成立させて、成婚まで持っていくように、との皇帝からの直々の密命を帯びている以上。

皇国側に、今回の人選での婚約をなかったことにする選択はない。