フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

1384.ユージュアルの婚約者。皇弟をはじめとする、3組の婚約について、ガラン、ベイモン、ノアは、顔合わせの場で予期せぬ事態を起こした。

3人共だと？

驕るな。

皇国の足元にも及ばぬ分際で。

ユージュアルの婚約者が思ったことを、ユージュアルの婚約者以外も考えた。

皇国側に最初からあった、ガランへの見下し。

最初は、個人個人の腹の中に隠されていたそれ。

表面的に和やかなやりとりが続いている間は、水面下から出てこなかった。

それが、一気に表出した。

ガラン、ベイモン、ノアのそれぞれの嫡男が抜刀したくらいでは、皇国側はびくともしない。

野蛮人め、と鼻で笑っていられた。

しかし。

皇国側の婚約者3人全員交代しろという、ガラン家の嫡男デヒルの暴言を、皇国側は看過できない。

皇国側の婚約者を取り替えたいだと？

皇国にそのような物言いをして許されると思っているのか！

ガラン家嫡男デヒルの発言からは、皇国と皇家に対する敬意がまるで感じられない。

皇国の皇家と皇家に近い家と外国の貴族との婚約は、成立までにいくつもの手順を踏む必要がある。

顔合わせをしただけでは、婚約は正式に成立しない。

打診から、一歩進んだだけ。

まだ、婚約が正式に成立していないことになる。

皇帝とガラン家当主の口約束であるから、皇国と婚約しない、とは言わない。

皇国がガランと婚約を望むなら、皇国側の婚約者を交換しろ、というガラン家嫡男デヒルの要請は、今の段階では問題にならない。

正式に婚約が成立していない今なら、皇国からも、皇国以外からも、婚約者の交換の申し入れは、可能だ。

婚約する手続きとしては、問題にならない。

しかし。

交換の申し入れ自体に、失礼がない、とは言わない。

皇国以外からの申し入れは、自国の婚約者の交換を求めるもの以外聞いたためしがない。

皇国側の婚約者を取り替えろという要請など、この顔合わせの場にいる皇国側の全員に、聞き覚えがない。

ユージュアルの婚約者が知る限りだが。

皇国側の婚約者を取り替えろ、と要請してくる家も国も、なかった。

皇国に歯向かってくる家があるなど、皇国側の誰も考えたこともない。

予期せぬ事態だった。

皇国側の婚約者の交換という展開は、ユージュアルの婚約者をはじめとする皇国側にとって、まことによろしくない。

皇帝陛下は、皇弟の婚約が成ることを望まれていらっしゃる。

皇弟の婚約を成るものとするために、皇帝は、皇弟の婚約をガランへ求めた。

皇弟の婚約が不成立に終わることなど、皇帝陛下のお考えにはない。

皇帝陛下から密命を受けているサブリーの婚約者とユージュアルの婚約者は、皇帝陛下が、皇弟の婚約をどれほどお望みであったか、身を以て知っている。