フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

1264.貴族の血を引く平民と生粋の平民は、同じ平民ではないの。

成人間近の騎士学校の学生が、将来の道を閉ざされたら、死活問題なの。

具体的に言うと、平民から奴隷になる瀬戸際なの。

「本当に、彼らは、騎士になれないんですか？」
と１人の男子学生が、ユージュアルに質問してきたの。

「何を他人事みたいに、話しているんだ？」
とロウウェルは、質問してきた男子学生にツッコミを入れたの。

「え？私は、関係ないですよね。」
と質問した男子学生。

「総司令が、なんと話していたか記憶にないのか？
傍観者は、無罪だと聞こえたのか？」
とロウウェル。

「傍観者って。
それじゃあ、今、騎士学校にいる学生は、全員、騎士になれないんですか？

私達は、彼女から何の恩恵も受けていない他人ですよ？」
と質問した男子学生、彼女と言いながら、ナーレーン伯爵家の女子学生を指差して、ロウウェルに反論したの。

恩恵？

騎士学校の校長の話では、将来、騎士になったときのえこひいきを約束した、という話だったの。

口約束だったから、見逃されていた部分はあるの。

貴族の家の力を使っての買収で、実際の利益供与があったなら、見過ごせないの、ボク。

国に仕える騎士を私的に従えるための買収は、水面下で起きなかったことはないけれど、堂々と、日の当たる場所でしてよいものではないの。

騎士学校での大っぴらな買収は、容認しないの。

国に忠誠を誓えない騎士は不要なの。

援助程度は、アリだけども。

「騎士学校に通う学生が、他の学生からどんな恩恵を受けていたのか、話せ。」
とロウウェル。

「それは、私が話すことじゃないです。」
と質問した男子学生は、タジタジになりながら拒否。

「誰が話せるか、指名して話させろ。」
とロウウェル。

「無理です。」
と質問した男子学生。

「自分が恩恵について話すか、指名して話させるか。どちらかをすぐに決めて実行に移せ。」
とロウウェル。

質問した男子学生は、あちこち視線を彷徨わせたの。

質問した男子学生の近くにいた女子学生が、声をあげたの。

「どうして、学生に聞けと言うんですか？
学生は、近衛に情報を提供しました。
近衛は、情報を聞いて何もしないんですか？」
と女子学生。

「騎士学校の学生をやっていながら、騎士の仕事を分かっていないのか？

騎士は、情報を集めるだけじゃなく裏付けもとる。

報告して終わり、ということは、報告する以上の仕事を任せない、と上司に判断されているのと同義。

仕事ができないと、認定されていることになる。」
とロウウェル。

「質問しただけで終わる男子学生は、仕事ができない予備軍だと、広く知らしめることになるよなあ。」
とユージュアル。

質問した男子学生は、慌てて、何か言い返そうとしていた女子学生を止めたの。

「買収現場は見ていません。
ただ、お嬢様だけでなく、お嬢様と仲良くしている男子学生も、貴族の家の力があることをひけらかして、学内ではいつも態度が大きかったので、買収されていると思っていました。」
と質問した男子学生。

「私の態度が大きい？
伯爵令嬢に言っていいと思っているの？」
とナーレーン伯爵家の血を引く女子学生は、男子学生を睨んだの。

「騎士学校に通っているなら、伯爵令嬢じゃなく、平民だと近衛が言っていた。

平民なら俺達と同じだ。」　と質問した男子学生は言い返したの。

「そうよ。同じ平民なのに、偉そうにしないで。」
と質問した男子学生の近くにいる女子学生が加わったの。

「同じじゃない。間違えるな。」
とロウウェル。

「でも、平民って言ってましたよね？」
と質問した男子学生の近くにいた女子学生。

「貴族の血を引く平民と、生粋の平民だ。

貴族の血を引く平民と貴族には、超えられない壁がある。

貴族の血を引く平民は、貴族の血を引いて、貴族の恩恵がある分の責任を国に対して果たす必要がある。」
とロウウェル。