フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

1253.騎士学校に巣食う問題の根を一つ見つけたの、ボク。

「真実じゃない？
そんなはずがなかろう。

今まで幾度も正しい情報で助けてくださっている。
不確かな話をされるような方ではない。」
と舌打ちした教職員。

騎士学校が、ボクの敵地になった理由がつかめそうなの。

「騎士学校に情報を渡していたのは貴族か？」
とダンシェル。

「それは言えません。」
と返事を渋る校長。

家名を言うのは、憚られてる、ということかしら。

情報提供元を暴露する行為を避けたいと考えているのかしら。

この期に及んで。

「その貴族が、どの立ち位置にいたかによって、手に入る情報の早さや精度は変わってくる。」
とロウウェル。

ロウウェルは、貴族だと断言して話しているの。

商人がする噂とは種類が違うということなの。

「貴族全員が、同じ情報を持っているわけじゃないからなあ。」
とユージュアル。

「だが、しかし。」
と舌打ちした教職員。

「王侯貴族の中の潮流は、固定じゃない。
主流派が非主流派になることは、珍しくない。
うまくやってきたつもりでも、突然足元を掬われて、弾き出されることもある。」
とダンシェル。

「嘘の情報を掴まされることもある。

情報を集めたら、裏取りは必須だ。」
とロウウェル。

「騎士学校は、貴族から情報を集めたなら。

情報提供元を絞り込まず、情報は満遍なく集め。

集まった情報を鵜呑みにしないことが必須だった。」
とダンシェル。

騎士学校の教職員は、舌打ちした者を除き、渋い顔をしたの。

「情報提供してくださった方のご迷惑になるので、その方の名は伏せさせてください。

真実の話ではない、ということでしょうか？」
と騎士学校の校長。

「ただの悪口を、もっともらしく見せるために、それっぽい話を組み合わせた、というところかなあ。」
とユージュアル。

「ただの悪口？
悪口に酔いしれる方ではない！」
と舌打ちした教職員。

「情報提供元に悪意があったかどうかは、情報提供元にしか分からない。」
とダンシェル。

「可能性として。

悪口だと知らずに、善意で情報提供した、とも考えられる。
でもなあ。」
とユージュアル。

「もし、情報提供元が貴族なら、その貴族は、貴族として終わっている。

今後も付き合うなら、そこからの情報は疑ってかからないと、遠くないうちに、騎士学校に手入れが入るぞ。」
とロウウェル。

「手入れ？騎士学校を馬鹿にするのか！」
と舌打ちした教職員。

ボク、騎士学校の問題の根を一つ、見つけたの。

「貴族の噂は、真偽不明なことも少なくないの。
社交界の噂というのは、情報戦なの。

一夜にして、ひっくり返ったりするものなの。

情報提供元が善意なら、最新の噂を集め、噂の中身を精査して自身で潮流を見極めることができていない無能だから、貴族として今回の件の責任をとることになるの。

悪意を持って、騎士学校にボクの悪口を吹き込んだなら、ボクの敵として成敗するの。

ここまで、身の振り方を間違えたキミ達は、情報提供元が善意でも悪意でも、処罰は免れないの。

キミ達は、騎士学校の教職員なの。

国に仕える騎士なの。

国に仕える騎士を育てる役目を負う大人なの。

キミ達は、一介の貴族に心酔するあまり、国への忠誠を忘れていたんじゃないかしら？」

騎士であるにもかかわらず、国ではなく、情報提供元の何者かを、一番にすえていたのではないかしら？