フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

1040.19年前の【神々の子どもたち】の土地で起きた襲撃の件で、生き延びたボクが泣くわけにはいかなかった。ガランは喪ったものが多すぎたの。

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「襲撃犯は、まだ捕まっていないの。」

ボクの声は、震えていないかしら?

「普段、平和に暮らしているところに襲撃されたら、一方的だよな。
テロみたいなもんだろ。
やったら、ダメなやつ。」
とタマキは不快そうにしているの。

ボクは、タマキの感覚が嬉しいの。

ボク、伝えられるかしら?

ガラン領以外の人に話すのは、初めてなの、ボク。

ボクの家族は、ボクを労ってくれたけれど。

ボクと一緒に、ガラン領を出発した領民の家族は。

『危険な仕事だと知っていたら、辞めさせていたのに。』
『未来がある子ばかりだったのに。』
『フィリス様だけ、どうして無事で?』

ボクは、領民の慟哭と呻き、恨みを忘れない。

彼らの感情をぶつけるべき本来の相手は、まだ捕まっていない。

ボクも、領民も悪くない。

悪いのは、襲撃犯。

だけど、襲撃犯は目の前にいないから。

ボクだけ、無事に帰ってきたから。

あの時、ボクは、ボクが引き受けるものだと思ったの。

あの場で、それが出来るのは、ボクだけだったの。

お祖父様が生きていらっしゃったら、お祖父様が、ボクの前に出てこられたと思う。

お祖父様は、そういう方だった。

前当主のお祖父様がいらっしゃらない。

ならば、当事者であり、当主の息子であるボクが、引き受けること。

だから、引き受けたの。

領民の感情を引き受けると決めたけれど、ボクの心は、ずっと痛くて、何度も引き千切られそうになったの。

でも。
ボクの、ガランの領民だもの。

ガランの領民は、守るの、ボク。

ボクは、ドキドキしながら次の言葉を口にしたの。

ダンシェル、ロウウェル、レイモンド、異世界転移者のタマキ。

4人とも、ガランの人間じゃない。

ガランじゃない人間は、どんな風に、受け止めるのかボクは知らないの。

当事者以外に話すのは、初めてなの。

怖いの。

怖いけれど、話すの。

話さないと、ボクの神気を説明できないもの。

ボクは、勇気を振り絞ったの。

「ボクは、お祖父様、お祖母様と一緒に、襲撃現場にいたの。お祖父様とお祖母様は、襲撃で亡くなったの。ボクは助かったの。お祖父様とお祖母様が、ボクを逃がしてくださったから。」

タマキは、すぐに椅子から立ち上がって、ボクの頭を抱きしめたの。

「タマキ?」

「フィリスは、過酷な状況を生き延びてきたんだな。

オレは、フィリスが頑張って生き延びてくれて良かったと思う。

テロの現場から生き延びることも、生き延びた後も、大変だったんだろう?

生き延びてくれて、ありがとう。」
とタマキ。

ボクは、予想していなかったの。

タマキが、ボクの頭をぎゅっと抱き締めるから、だから。

ボクの涙腺は、弱くなってしまったの。

襲撃のことで、ボクが泣くことは、誰のためにもならないと知っていたの、ボク。

襲撃によって、ガランが喪ったものは、多すぎたの。

生き延びたボクが、泣くわけにはいかなかったの。

生きているから、泣けるんだもの。

生き延びたボクが、泣いている姿を見たら?

故郷から遠く離れた場所で、最期の瞬間を誰にも看取られずに、逝った人が多すぎたもの。

だから。

ボク、泣かなかったの。

どうしてかしら?

今、涙が止まらないの。
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