フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

972.ボクは、尋ねる。マルビル・ビーイット殿に。『キミは、転生者なの?』

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「転生者という言葉を知っているの?」
とマルビル殿。

「知っているの。キミは転生者?」

「貴方も?
貴方もなんでしょう?
そうだと思った。
絶対そうだと思っていた!」
とマルビル殿。

「ボクは、違うの。」

「今さら誤魔化さないでよ!
ねえ、前世は、どっち?
どんな人生だった?」
興奮するマルビル殿。

「ボクは、違うの。
ボク、前世とか知らないの。」

「じゃあ、なんで、転生者なんて。」
とマルビル殿。

「いるの。時々。
前世の記憶や人格を引き継いで生まれてくるの。」

「わりと、ある話?
隠す必要はなかった?」
とマルビル殿。

「隠すか、隠さないか。
それは、本人やご両親や、お家の判断なの。
時代背景や、環境も人それぞれだもの。」

「そうなんだ。はあ。
私は、転生しているって、すぐに分かった?」
とマルビル殿。

「いえ。ひょっとしたら?と思ったからなの。」

「ああ。転生していないなら、悪役令息とか、ヒロインとか、どうして知っているの?」
とマルビル殿は、ボクに疑いの目を向ける。

「そういうお話を読んだの。外国では、劇にもなっているの。」

「ええ。それ、もう、さあ。完全に、転生者が面白がってやっているやつよ。」
とマルビル殿は、口をとがらせた。

「よくあることなら、さっさとカミングアウトして、家から出ていけば良かったなー。

そうしたら、早くに異世界転生を楽しめたのに。

こんな体になってからじゃ、一生、男の人から逃げて暮らさなきゃいけなくなる。

あーあ。もっと早く知りたかった。

でも、これからがあるよね。

異世界転生がわりとあるって、分かっただけでも、収穫だわ。」
とマルビル殿は、朗らかに笑う。


マルビル殿の反応に、ボクはゾッとしたの。

ボクがマルビル殿に拉致された後。
ボクのお父様が、直々に乗り出して、ボクを救出した件は、この部屋で、マルビル殿以外が知っている。

フィリップ殿下が、サージェ侯爵家で、マルビル殿の口を割らせ、ボクを拉致したと自白させた話は、伏せても、伏せきれるものではない。

ビーイット公爵家のイリダ殿とマルビル殿が、サージェ侯爵家の夜会に参加していたボクを夜会会場から拉致した件は、コーハ王国の貴族社会に多大な影響を与えている。

現在進行形で。

サージェ侯爵家の夜会会場は、急遽、拉致事件の取り調べ会場に変更になった。

拉致現場となった夜会会場も含めて、サージェ侯爵家は、家宅捜索が行われた。

貴族の屋敷が、家宅捜索を受ける。

どれだけ、不名誉なことか。

取り調べから解放されたサージェ侯爵家は、事件後、各方面への釈明に追われている。

サージェ侯爵家は、今後、さらなる統率力を試されることになる。

ビーイット公爵家は、ビーイット男爵家として、マルビル殿の妹が当主になり、立て直しをはかることになるけれど。

ビーイット男爵家の進む道は、茨の道なの。


マルビル殿は、自身が何をして、その結果どうなっているかに、全く関心がないの。

だから、自分の未来を、語れるの。

ボクを含めて、この部屋の中には、貴族しかいない。

マルビル殿は、公爵家の子息。

権力に怯まないように、マルビル殿から見える場所の担当に、平民はおいていないの。

ボク達は、貴族だから。

イリダ殿とマルビル殿の勝手が、サージェ侯爵家をはじめとする複数の貴族家に与えた打撃を想像できる。

災いを振り撒いた張本人が、この調子では。

ひょっとして。

「マルビル殿は、取り調べに協力的だったのかしら?」
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