フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

967.異世界転移者タマキ。コワニのいる朝。目覚めの1杯ならぬ、目覚めのコワニ様。

タマキが、寝直すと決めてから、フィリスのお家の壁と天井を歩き回った2匹のコワニ。

タマキが目を覚ますと。

タマキの部屋の天井と壁に1匹ずつコワニが張り付いていた。

「でっかいヤモリに見守られている気分になった。」
タマキは、ベッドの中から、コワニを見つけた。

「朝、寝起きに1杯、じゃなく、2匹のコワニ様。」
と呟くタマキ。

タマキが起きるまで、大人しく待っていたコワニ。

タマキが起きると、天井と壁から、タマキのベッドに落っこちてきた。

「わああ。」
タマキが、慌てると、のそっと、前足で、タマキの体をぐっぐっと踏む。

「落ち着け。と言われてる？
いや、落ち着きたいよ、俺も。
朝から騒ぐのは、さあ？
でも、ワニが、ベッドに落ちてきたら、無理じゃね。
今の俺、かなり控え目に驚いたと思う。」
タマキは、独りごちる。

身支度を終えたタマキ。

「部屋から出ますよ、コワニ様。」
タマキが呼びかけると。

2匹のコワニ、部屋の出入り口付近の壁に張り付く。

「いや。部屋から出ますって。」
とタマキが言うと。

コワニは、尾で、タマキの腕をぱしぱし、と叩く。

「1匹ずつ、両腕に持っていけ、と？」
とタマキ。

目玉をギョロンしたり、細めたりするコワニ。

「めちゃくちゃ、期待されている。どういうこと？俺には、ワニを抱える才能があったのか？」
と呟くタマキ。

「異世界にきて良かった。日本にいても、ワニを両腕に持って運ぶチャンスなんてなかったし。」
タマキは、やる気を出した。

両腕に1匹ずつコワニを持って、部屋を出る。

「コワニ様は、歩くより、俺に抱えてもらいたいんだなー。」
タマキは、朝から、によによ。
ご機嫌で、朝食をとりに向かった。

朝食で、ご機嫌なタマキの理由を聞いた先輩は。

「タマキが、弱すぎるから、心配して、夜中に見張っていたんじゃないか？」
と推測した。

「え？弱いから？じゃ、まさか。用心棒のつもりで？」
タマキは、家の壁や天井を縦横無尽に歩き回るコワニを見上げる。

「タマキが抱えるのを、気に入ってくださってもいるだろうから、自信を持て。
おれは、コワニ様が、タマキといてくださったら、安心できるよ。」
と先輩。

「そうなんですか？初めて聞きました。」
とタマキ。

「タマキは、鍛えても、強くならないと思うから、出歩くのは無理だと思っていた。
コワニ様のお散歩係としてなら、コワニ様御一行として、コワニ様の行き先に同行できるだろ？
外を歩くのは、無理だけど、外に出られるようになるな。
異世界に来たからにはって、外を見たがっていただろう？良かったな。」
と先輩。