フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

964.デヒルお兄様は、ボクを幸せにしてくださる。ボクは、デヒルお兄様を元気にするの。

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デヒルお兄様をイリダ殿の攻撃に巻き込んでしまうのは、嫌。
でも。
コワニで迎え撃つと、コワニの迎撃にデヒルお兄様を巻き込んでしまう。

ボクは、パイプをツーニールに投げて、両手にコワニを持った。

デヒルお兄様の前に立って、デヒルお兄様より2歩前に出る。

ボクの後ろには、攻撃を通さない。

「コワニ。ボク達は、デヒルお兄様を巻き込まないの。」
コワニは、2匹とも、目玉をギョロンさせた。

イリダ殿は、この後も取り調べがある。
まだ死なせるわけにはいかないの。

イリダ殿の攻撃を無効化して、かつ、イリダ殿を無力化しないと。

どうするのがいいかしら?

イリダ殿の魔力は、憤りの感情によって、うねりながら練り合わされていく。

ボクは。
ボクには、体を揺さぶるほどの激しい憤りの感情はない。
感情では、イリダ殿に対抗できない。
ボクは、どうしたらいいかしら。

「フィリス。」
デヒルお兄様の呼びかけるお声。
「フィリス。」

「ボク。退きません。デヒルお兄様の壁となり、見事、攻撃を防ぎ、デヒルお兄様には、攻撃の余波も届けさせませんの。」

ボクは、頭を働かせる。

でも、いい考えが思いつかないの。

デヒルお兄様より、ボクの方が、小さい。

ボクの背丈じゃ、デヒルお兄様の盾になるには足りないの。

ボクの体で覆いかぶさるだけじゃ、イリダ殿の攻撃は防げないの。

「フィリス。」
とデヒルお兄様。

「デヒルお兄様。ボクの後ろにいらしてくださいませ。
ボク、デヒルお兄様がお呼びになっても、後ろには下がりませんの。」

「可愛いフィリス。」
とデヒルお兄様。

「はい。デヒルお兄様。」
デヒルお兄様が、ボクを甘やかしてくださるから、デヒルお兄様の元に駆け寄りたくなってしまうの。

「ボクは、デヒルお兄様の可愛いフィリスですが、ここは、退きませんの。」

「フィリスは、そこに待機。私から歩み寄るのも悪くない。」
とデヒルお兄様。

「デヒルお兄様、今はダメでございます。ボクは、振り向けませんもの。」

ガラン家の男として、敵に背中は見せないの、ボク。

「フィリス、私は、そのままと言った。」
とデヒルお兄様。

2歩前にいらしたデヒルお兄様は、ボクの真後ろに立って、ボクの肩から手を伸ばしている。

「デヒルお兄様。危のうございます。離れてくださいませ。」

「フィリスを置いてか?」
とデヒルお兄様。

「私に、フィリスを置いて離れろと、フィリスが言うのか?」
寂しそうなデヒルお兄様のお声。

「ボク、デヒルお兄様とは、ずっと一緒にいとうございます。
ですけれど、今のボクは、無力ですの。
デヒルお兄様を悲しくさせてしまう不届き者が、ボクですの。」

ボク、泣いてしまいそうなの。
ボクは、どうして、こんなに弱いのかしら。

神気の技は、簡単に人の域を脱してしまうために、人前では、安易に使えない。

まして、こんな人がたくさんいる王都の一画では。

「ボクのデヒルお兄様。大好きなデヒルお兄様。」

「フィリス。可愛い可愛い、私の弟。」
デヒルお兄様は、コワニを両手に持っているボクを背中から、抱きしめてくださる。
「デヒルお兄様。」
デヒルお兄様は、そのままの体勢で、そっとかがみ、ボクの頬に唇をくっつけてくださった。

ボクは思わず、デヒルお兄様のお顔を振り返る。

デヒルお兄様の唇が、ボクの唇に。

幸せ、なの。

触れるだけの優しい口づけ。

ボクの中が、満たされていくの。

焦燥感が、すっと消えたの。

「デヒルお兄様。ボク。」
ボクは、きりっとした表情になっていたと思うの。

「可愛いフィリスに元気をもらった。」
ボクを見て、優しく微笑むデヒルお兄様。

「ボクの方こそ、幸せですの。」

「フィリスが、幸せなうちに、片付けるか。」
デヒルお兄様は、言うやいなや、目にも止まらぬ速さの魔法を繰り出していたの。

イリダ殿は、魔法を放った姿のまま、微動だにしなくなっていたの。

イリダ殿の攻撃も、ボクに当たりそうだったはずなのに、衝撃どころか、何かが起こった様子もない。

「フィリスを不幸せにする男は、私が面倒を見て、王城に運ぶ。」
とデヒルお兄様。

「一通り済んだら、ガラン領に、コワニと帰ってこい。
フィリスが、神性を失ったフェンリルに捕まった後、オリベが助けを求め、ガラン領まで飛んできて、神獣ネットワークや、私に話をしていた。」
とデヒルお兄様。

「はい。デヒルお兄様。」

「可愛いフィリス。」
デヒルお兄様は、さっきと反対側の頬にも口づけてくださった。

「引き上げる。」
デヒルお兄様の合図で、イリダ殿を連れたボク達は、ビーイット公爵家の王都邸をあとにしたの。
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