フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

961.平行線。

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ボクのコワニなの。
「嫌なの。コワニはボクといるの。」

ボクが、嫌と言うと、2匹のコワニも、イヤイヤと首を横に振る。

ボクとコワニを引き離すことは出来ないの。

「ならば。お前には。厄災を祓った褒美には、代官に取り立てると言っておいたな。代官となり、彼の地の復興に努めよ。」
とイリダ殿。

イリダ殿に現実を知らせるタイミングなの。

「キミが、ビーイット公爵領の差配することは、ないの。
ビーイット公爵領は、ビーイット家の手から離れるの。」

「馬鹿なことを。私が子どもの頃に慣れ親しんだ土地を私が手放すなど。」
イリダ殿は、王子様の時間で生きているの。

「ビーイット公爵領は、ガラン家当主が厄災を祓ったの。
キミの手配した人員は、ガラン家当主がボクのお父様だったから、ボクのついでに連れて帰ったの。
キミの手配した人員は、1人も、何も為していないの。」

現実を噛み締めなさい。

「父親に、褒美を取らせろと?業突く張りが。望み過ぎると身を滅ぼす。」
とイリダ殿。

曲解し過ぎなの。

「キミ。ガランをなんだと思っているの?」

「国の守護者か?はっ。くだらん。」
とイリダ殿。

「それは、イリダ殿のお父様の見方じゃないかしら。王子様は、なんと聞いていたかしら?」

「ああ。前に。聞いたな。味方にいれば心強いと。」
とイリダ殿。

「それだけ、かしら。」

「当然。味方に、と断るのは、敵にまわすとろくなことをしないのと同義。
お前には、逆らわぬようにして、褒美をくれてやった。」
とイリダ殿。

「ボクを無理やり、ビーイット公爵領に拉致した自覚はあるのに、お詫びではなく、ボクに褒美をと言うの、キミは。」

ボクは。
拉致されたときの嫌な気持ちがドバドバと溢れてきたの。

「ボク、大切な人から引き離されて、事情も知らないままに、知らないところに身勝手に放り込まれて、怖かったし、何度も死んでしまうと思ったの。」

力で敵わない相手に押さえつけられて、のしかかられるのが、どれ程、怖かったか。

言葉の意味は分かるのに、話している意味が分からない集団の中にいることの心細さ。

戦いに負けたら、元フェンリルのメスにされると知った上で、力では勝てない元フェンリルと元フェンリルの信仰集団に向き合わないといけない恐怖。

ボクの心は、怖いことと嫌なことばかりで、何回も死にかけたの。

「お前は、のらくら生きているではないか。
私が遣わした者は、死んでいるのに。
話によれば、お前はたいした働きをしなかった。
父親の働きで代官になれるとは。
いいとこ取りとはお前のことか。
父親と先に会っていたら、父親を取り立てた。」

ボクは、ボクが生き残るためにしたこと全てを簡単に否定してほしくないの。

泣いちゃいそうなの。

2匹のコワニが、ボクを甘噛しているの。

椅子の背もたれにいる大きな方は、ボクの頭をかぷかぷ。

ボクのお膝の小さい方は、ボクの腕をかぷかぷ。

慰めて、元気づけようとしてくれているコワニ。

我慢できずに、ボクの喉からは嗚咽が。
目からは、涙が。

「甘ったれた子どもは、これだから好かん。
泣けば済むと。馬鹿らしい。
父親がやったことだが、お前の功績にしてやろう、というのに。」
イリダ殿の呆れた声。

「フィリス。」
後ろで見守ってくださっていたデヒルお兄様が、コワニに甘噛されていない方の腕に触れながら、隣に来てくださる。

「デヒルお兄様。」
ボクは、涙と嗚咽で、うまくお話ができませんの。

「フィリスが無事で、私の手に触れる距離に帰ったことが、喜ばしい。」
とデヒルお兄様。

デヒルお兄様のお顔は、大きいコワニの口の中にボクの頭があるので見えないの。

タイミングが惜しかったの。
コワニ。
甘噛が、勢いあまって、ボクの頭を丸々、口の中に入れてしまっているの。
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