フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

940.弱い犬ほどよく吠える。犬じゃないと言うなら、理性と知性に適った言動をしてみなさい。

ツーニールの言う通り、皆殺しは避けたいの、ボク。

キューブ傭兵団の最終目的地が、皆殺しに近いところに落ち着いたとしても。

強制捜査の段階で、皆殺しにすると、事情聴取する対象がいなくなるの。

事情聴取する対象をボクが全滅させる事態は、避けたいの。

『どうして、手加減をしなかったのですか？
戦力差は明白でしたよね？
全滅させないといけないほどの何か、そうですね、不都合な真実が、隠されていましたか？』
と。
ボクが、事情聴取されてしまうもの。

『手加減をしたのに、弱すぎて、結果的に皆殺しになったの。
ボクは、生かそうとしたの。
対象のキューブ傭兵団が、考え無しにボク達に戦いを挑むのが、いけないの。』
という、真実しか語っていない回答をしてみた、と仮定してみるの。

『手加減とは何かを覚えましょう。』
という、理不尽なプログラムが、ボクに課されると思うの。

ボク、近衛の偉い人なの。
キューブ傭兵団が、偉い人のボクの命令を拒否して、素直に取り調べに応じないなんて想定していないの。

皆殺しにしないために、知恵を絞るの、ボク。

手始めに、キューブ傭兵団を懐柔してみるの。

「ボク、キミ達、キューブ傭兵団相手に、どのくらい手加減をしたらいいかと考えてみたの。」

「おい。貴族様。突然、喧嘩売るのは、おっぱじめる合図ですか？」
と熊男。
熊男ったら、血気盛んなの。

「落ち着くの。弱い犬ほどよく吠えると聞いたことがあるけれど、キミ達、キューブ傭兵団は人間なの。理性と知性を忘れてはダメなの。」

「おい。今、喧嘩を売ったよな？今のは、喧嘩を売っているんだよな。」
と熊男。
熊男のこめかみが、痙攣しているの。

顔の筋肉疲労なのかしら？

「短気は損気なの。キミは疲労困憊しているけれど、ボクの話を聞けるいいコなの。
願わくば、理解力がもう少しキミに備わって欲しいのだけど。
天は二物を与えず、とも言うから、多くは望まないの。」

ボクは、立派な大人で、偉い人なの。
デキるボクが、キミの足りない部分を補いながら、話すことにするの。

「謎の自信と、どこから見下ろしてんのか分からんぐらいの上から目線。貴族は、そんなもんだ。それが貴族というもんだ。」
熊男は、悟りをひらいた様子。
悟りきった表情になっているの。

何の悟りをひらいたのか不明だけど、ボクの目の前で悟りをひらくとは、大したものなの。

武器を構えながら、悟りをひらくことがあるとは。
熊男という人間は、奥が深いの。

「ボク達が、いっぱい手加減しても、キューブ傭兵団じゃ相手にならないという結論にボクは達したの。キューブ傭兵団は、自分達が思っているより弱いことを自覚して、痛い思いをする前に、降参しなさい。痛い思いをしない方が、後のことを考えたときに、苦労しないの。」

キューブ傭兵団が、ボク達に戦いを挑むことが、無謀でしかないことを、ボクはとても分かりやすく説明したの。

「煽っているんですか？」
と熊男。

熊男、彼我の差が分からないとは、傭兵団を名乗る集団のボスっぽい存在として致命的だと思うの。
上層部が戦力差を考慮しないで、部隊が玉砕するパターンのときの上司なの。

ビーイット公爵家の嫡子イリダ殿の依頼を受けて、ビーイット公爵領の内情を調査せず、傭兵団を送り込んだ件の責任者だったりするのかしら？

いずれにしても。
物事を考えるとき、喧嘩腰は良くないの、熊男。

「抵抗はやめて、大人しく降伏しなさい。最終的にどうなるにしても。今は、まだ、その時じゃないの。」

ボクは、キューブ傭兵団から早く降参が聞きたいから、情をかけているの。