フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

926.忠誠心が目を曇らせることもある。

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決意を固めるシーリ・ポート。
声をかけてやるの、ボク。
「シーリ・ポート。ボク、キミの忠誠心は見上げたものだと思うの。でも、忠誠心の使いどころは、今、ここで良かったのかしら?」

シーリ・ポートったら、視野が狭まり過ぎて、死に急いでいるの。

「生かしたのは、誰かしら?シーリ・ポート。」
ボクは、ボクと中年男性の間に立っているシーリ・ポートに優しく問いかけた。

「生かした分をボクに返さないで、死ぬ決意とは、ボクのことを随分と見くびってくれたの。」
ボクは、見くびられるのはお好みじゃないの。

シーリ・ポートの筋肉が震えているの。

分かったかしら、シーリ・ポート。

公爵家の当主を生かしたかったのなら、キミは、ボクと戦う意思を固めてはならなかった。

ボク、ボクに戦う意思を示した相手は、後世に残さなくていいと考えているの。

「デヒルお兄様。」
ボクがお兄様に合図すると、お兄様が、上空に待機していた部隊に号令をかけた。

「降下。」
とデヒルお兄様。

上空に待機していたガラン軍が、うぐいす色のワイバーン、神獣パパランから、次々に飛び降りてくる。

「イリダ殿は、こちらで勝手に探して持っていくの。ビーイット公爵家の協力は不要なの。」

ボクは、シーリ・ポートが閣下と呼んだ中年男性を見る。
シーリ・ポートは、主君が失態を繰り返さないか、気が気でない様子。
イリダ殿を引き渡すから、という交渉を予定していたのかしら?

引き渡しを待つなんて。
ボク、そんな悠長なことはしないの。
早く終わらせたいもの。
アンドリューを待たせているの、ボク。
早く会いに行きたいの。

「探し物をする間に、今後の話をするの。後継ぎを呼び出しなさい。」

「後継ぎですが。」
とシーリ・ポート。

「ビーイット公爵家から、イリダ殿とマルビル殿が居なくなるけれど。3人目がいたんじゃないかしら?」

「それは。」
とシーリ・ポート。

「もう、居ないのかしら。後継ぎがいないなら、ビーイット公爵家は、今日でおしまい。畳むの。」

近くに隠れて、嵐をやり過ごすか。
自分の未来のために隠れて公爵の私室の様子をうかがうか。
3人目は、どちらかだと思っているの。

状況が全く分からない状態に身を置くのは、リスク。

「3人目。いるのに来ないなら、適当に捕まえてきて、転がすの。その上でビーイット公爵家は、畳むの。」

護衛の配置。
使用人通路の出口。
部屋の間取り。

隠れているであろう一画を壊してもいいけれど、イリダ殿捕獲の報告がまだだから、今は破壊しないでおきたいの、ボク。

「後継ぎとして、ボクの前に、二本足で立つつもりがあるのなら、ボクが待てなくなる前に、出てくるといいの。」

ご令嬢の鑑、と、一部の近衛が称えていた公爵令嬢。
ラウルを欲しがるキミには、不相応だという言葉を贈るの。

「ボク、待たせることはあっても、待つことはないの。」

「だって、ボク、姫だもの。
ボクは、逆ハーレムの主なの。」

「姫のボクを待たせるなんて心苦しくて、耐えられないと思うの。」

「反対に、ボクを待つ時間もボクのことを考えて、幸せでいられるから、皆、ボクを待ちたいの。」

「ボクも幸せ。
皆も幸せ。
素敵な関係だと思うの。」

「お互い、愛している人に愛されているんだもの。」

「ボク、キミとは違うの。
ラウルは、ボクの大切なもの。
ボクは、ラウルの何かしら?ラウルの幸せの素かしら。」

「キミには、ラウルは微笑まないの。
キミの側に、ラウルは寄ってこないの。
キミには愛を囁かないの、ラウルは。
キミにラウルは高望みなの。」

ボクは、ある方向へ、体と顔を向ける。

途中から魔力が、ダダ漏れになってきたの。動揺しているのかしら。
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