フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

912.『父親とは違うな。』父子は、分裂しない限り別人。わざわざ、父子の差を口にするくらいだから、分裂する人間が、コーハ王国にいるのかしら？

ボク、応援団長として不甲斐なかったけれど、デヒルお兄様のカッコいいお姿をお側で拝見できて、幸せ。

デヒルお兄様のカッコよさに、お客様も感動しているの。

声にならないくらいに。
と思ったけれど、違ったみたいなの。
お客様の中の1人の貴族の出方を全員がうかがっているの。

70代の貴族男性。
何か秘密があるのかしら？

「ビーイット公爵家は、公爵家の存続のためには、なんでもやる。言い切ったおぬしは、ビーイット公爵家の本質を知っているのか、小僧。」
70代の貴族は、デヒルお兄様を睨めつけている。

ボクのカッコいいデヒルお兄様に、そんな態度を、とムッとしたけれど、お客様の他の貴族との落差により、デヒルお兄様のカッコよさが際立つから、心が広いボクは、注意しないでおくの。

「誰にものを言っている。」
とデヒルお兄様。

「ガランの次代は、当代とは違うようだな。」
と70代の貴族。

何を言いたいのかしら、当たり前なの。

「父と息子の共通点は、性別ぐらいじゃないのかしら。ハーマルお兄様、他に何かありますかしら？」
ボクがハーマルお兄様に確認すると、ハーマルお兄様は力強く肯定してくださった。

「性別くらいだよ。だって、半分は、生物学上の母親の血が入るから、父親の血が入っていたところで、父親とは別の個体になる。分裂して増えるタイプは、分からないけれど。」
とハーマルお兄様。

なるほどなの。

「ハーマルお兄様。ボク、コーハ王国の貴族は、人間だと思っておりましたが、変種の人間もいたのでしょうか？
お客様が、分裂して増えるタイプの人間でしたら、試してみたいことがございますの。」

「何だい？言ってごらん。」
とハーマルお兄様。

「分裂する瞬間を見てみたくは、ございませんか？ハーマルお兄様。」

「分裂する瞬間ね。」
ハーマルお兄様のテンションは、上がらなかったの。
人間の分裂は、ハーマルお兄様の好奇心を動かさないのかしら？
それとも、お客様の増殖がお嫌なのかしら？
増殖した後は、燃やして灰にして、捨てられないのかしら？

人間なら、火で燃やせると思ったのだけど、分裂する人間は、燃えないのかしら。

分裂する前に確認して、対策をしておかなくちゃ。

ガラン応援団長だもの、ボク。

「ボク、お恥ずかしながら、この年まで、人間が分裂する瞬間を見たことがございませんの。実在するなら、1度は見てみとうございます。」

「人間が分裂する瞬間は、私も見たことがないよ。」
とハーマルお兄様。

「ハーマルお兄様も、ご覧になったことがない。では、ハーマルお兄様、人間が分裂する条件は、ご存知でしょうか？」

「浅学のため、知らないんだ、期待させたのに、悪かったね。」
とハーマルお兄様。

「ハーマルお兄様に謝っていただくことなんて、ございません。」

ハーマルお兄様が、ボクに教えられなかったことを憂いていらっしゃる。

ここは、ボクが、ひと肌脱ぐの。

「ボクもハーマルお兄様も人間が分裂する瞬間を見たことがなくて、分裂する条件を知らないのなら、これから共に検証しましょう。丁度良く、ボク達の目の前には、分裂するかもしれない人間が揃っていますの。1人くらい、目の前で分裂する瞬間を見られるといいのですけど。」

ボクは、お客様を見渡す。
数がいるから、失敗したときのことを心配しなくてもいいの。

「どうやって、分裂を促すんだい？今のところ、分裂しそうには見えないよ。」
とハーマルお兄様。

勝手に分裂しないのかしら。
それなら、考えがあるの。

「まずは、ザクッと真ん中あたりを斬ってみます。切り込みを入れると、分裂が始まるんじゃないかと思いますの。被検体は、そこそこおりますから、色々試してまいりましょう。手始めに、どの人間を斬るのがよろしゅうございますか？」