フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

864.姥捨て山の土地の記憶。

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元フェンリルと元フェンリルの力を宿す子どもの気配とは異なる気配を探すの。

普通の人の集まり。

弱っていく気配。

外から送り込まれたエージェントであろう気配。

見つけたの。

ボクは、最短距離で向かう。


そこは山ではないけれど、姥捨て山だったの。

元は何だったのかしら?

神気を出して、神気で、そろっと地面を撫でてみる。

この土地は、ボクの神気に反応したの。

ということは、元フェンリルとフェンリルの力を宿す子どものいた場所と同じではない。
この土地は、元フェンリルの影響を受けていないの。

この土地にいるなら、ボクは、神気を使える。

手掛かりが殆どない今。
解決に導く糸口に繋がる可能性があるの。

どんな土地なのか、知りたい。

ボクは、神気を使って、土地に呼びかける。

土地に眠る記憶を教えて欲しいの。

土地本来の力が強ければ、何らかの反応が返ってくるから。

神気を土地に広げて、表面の浅いところから、深層へと下ろしていく。

ゆらゆらと蜃気楼が浮かぶ。

この土地に眠る記憶は力強いの。

はっきりとした姿にして、神気に返してくる。


蜃気楼は過去を語る。


最初。
死体が所狭しと乱雑に積まれている。

ビーイット公爵領軍と元フェンリル達の戦いの死者が葬られている?

違う。
ビーイット公爵家の領軍の死傷者が打ち捨てられた場所。

地面から怨嗟が響くの。

折り重なる体。

息があるけれど動けず、死体に挟まれて死んでいく者。

見殺し?

裏切り?


ビーイット公爵家の存続のために、とフェンリルの力を宿す子どもと取り引きしたビーイット公爵家の臣下の一部が、ビーイット公爵領軍の仲間を背後から撃った。

2つの勢力は力を合わせて、ビーイット公爵家に忠誠を誓って、元フェンリルとフェンリルの力を宿す子どもと対立していた勢力を壊滅状態に追い込んで、打ち捨てた。

でも、フェンリルの力を宿す子どもは、ビーイット公爵家の存続のために、仲間を撃ったビーイット公爵家の臣下の一部との取り引きを反故にした。

理由は、元フェンリルが、無視したから。

フェンリル様に無視されるようなやつらとは、やっていけないと、声高に唱える声が響く。

フェンリル様に認められないなど、生きている価値なし、と続く声。

生きていてはならぬという唱和の後。

フェンリルの力を宿す子どもに一斉に襲い掛かられ、次々に傷付き、力尽きていくビーイット公爵家の一部の臣下。

積み上がる死傷者の山。

体の痛みとのしかかってくる重み。
一矢報いることができずに死にゆく悔しさ。
遺す者への祈り。



普通の人間には、聞こえない土地の記憶。

ボクは、神気を使うから、普通の範疇にいない。

なんの力も持たない人間は、この土地にいるだけで、不調になる土地。

寂れた町よりも何もない。

村のていも保たれていない。

建造物と呼べるものはなく、人は木の下に寝起きしている。

土地の影響を受けているのか、元からなのか不明だけど、横たわっているのは、あまり保たなそうな人。

老いた者。

怪我をした者。

病気になった者。



自主的に来たのか、追いやられたのか。


元フェンリルとフェンリルの力を宿す子どもが7割の団体の活動地域から、ほどよく離れた場所に住んでいる。

元フェンリルとフェンリルの力を宿す子どもが行き来するのは容易いが、その土地の住人が行き来する気は起こさないであろう距離。

ボクの目的は、外から送り込まれてきたエージェント。

探し出すの、ボク。

大半は、ボクに外の世界へ連れて行けと迫った者達の年老いた未来のような男女と体調の悪そうな老若男女。


他に、周りとは不釣り合いに若い男性の姿が何人かいる。

男性達が、エージェントだと思うの。

聞いてみるの。


さほど離れていない場所には土が盛り上がっている箇所がいくつか。

墓かしら。
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