フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

826.送り込まれた先は、地獄の1丁目でした。

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転移陣から出た先は、知らないお屋敷の中だったの。

「イリダ様に送られてきたんだな?」
と目があった男が聞いてきた。

「ここは、お届け先で合っているのかしら。どこなの?」

いきなり攻撃されたりしなくて良かったの。

「ここは、ビーイット公爵領。ようこそ、地獄の1丁目へ。」
と男。

「地獄なの?」

「生き地獄さ。歓迎するぜ、新人。」
男は、ニヒルに笑った。
「せいぜい、長生きしてくれよ。」

その男は、イリダ殿が転移陣で人を送ってくるのは、まあまあある、と話したの。

「露見しないのかしら?」

「言ったろ。ここは地獄の1丁目。生きた人間は、入ったら最後、出られないのさ。」

「どうしてなの?」

「地獄には、支配者がいるからな。」

「ビーイット公爵家とは別なの?」

「名義だけじゃない、本物の支配者だ。」

「いつからなの?」

「さあなあ。」

「最初は、どこからか、流れ着いて、小さくなって暮らしていたのに、後から後から、親戚だとか、友達だとか言って増えてきて、今じゃ、実質的な支配者は、そいつらさ。」

「どうやって入ってきたのかしら?」

「住処を失って、逃げて、たまたま辿り着いた場所がビーイット公爵領だった。最初は、少なかったから、問題を起こさない限り、住んでも構わないと領主様がおっしゃった。そしたら、まあ。増えるわ、増えるわ。問題を起こさない限りという領主様の誓約が残っているから、問題に取り上げそうな人間を引き込んだり、消したりして、黙らせていった。」

「今じゃ、誰も逆らえねえ。」

「領兵は?」

「地獄の1丁目だと言ったろ?領兵は敵わなかった。」

「ボクに話して聞かせたのはどうしてなの?」

「ここにくるやつには、全員、話して聞かせるのさ。」

「領兵が敵わなかった理由は?」

「悪魔だか、なんだか知らねえが、人智を超えた人外が味方しているんだよ、あちらさんに。」

「乗っ取られてしまった、ということかしら?」

「そういうこった。」

「今までの方々は?」

「1人も戻って来ねえ。」

「探しに行かないのかしら?」

「オレは地獄の1丁目に住んで、生者を地獄へ送り出す仕事があるから、死ねないのさ。」

「送り出すのは、全員かしら?」

「そうさ。お前さんも、行ってくるといい。」
男はカバンを投げて寄越した。
「手荷物は用意した。水や携帯食。まあ、粘ってこい。」

カバンの受け取りが転移陣の起動スイッチになったのだと思うの。

ボクは、カバンを抱えて、建物の外に立っていた。
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