フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

824.悪役令息の心。

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私は、兄に言われるままに発動させた転移陣から、人が消えるのを見送った。

兄の悪行も、私が片棒をかつがされるのも珍しいことではない。

兄はいつも利己的だ。

兄は、世界で自分が一番偉いと思っているに違いない。

兄は、兄にしか分からない理屈で正否を決める。

反発したり、箴言したりしても、兄には響かない。

内容が、兄の常識を外れると、攻撃してくる。

歪んだ思考を糺すのだと兄は、言っている。

兄のことは好きになれない。

兄に逆らうと生きていけないから、反抗は止めた。

兄は、自分勝手に誰かの運命を捻じ曲げても平気な人だ。

まあ、でも。
さっきのヒロイン役が、兄に選ばれたのは、いい気味だった。

私が主役のセカンドストーリーが始まるのかな?

調子に乗ったヒロインをざまぁして。

そう考えると前向きになれる。

悪役令息には、ざまぁがないと。

物心がついたときから、感じていた違和感の正体に気付いたのは、いつだったか。

私は、ビーイット公爵家の次男マルビル。

我が家は、兄が実権を握っている。
妹は、進んで、兄の思惑に乗っている。
当主の父は、兄の傀儡だ。

私が、こうして冷めた目で、家族を見ているのは、私に前世の人生経験が、おかしいと訴えてくるからだ。

前世の意識が戻ったとき、私は自身に絶望した。

公爵家という貴族社会のトップに生まれたなら、女の子が良かった。

前世では、手に入らなかった綺麗なドレスや宝石を日常生活で使えるなんて、妹が羨ましくて仕方ない。

私は、男性の体だが、前世の女性の意識が強くて、女性として振る舞ってしまう。

男性には優しくされたい。
女性として愛されたい。

兄のような男は恐怖を覚えるので、穏やかな男性がいい。

ジーンは、私が出会った中で、最高の男性だった。

私が女性的な振る舞いをしても、馬鹿にすることはなかった。

臆病風に吹かれた私が、男性社会に入れずにいても、嘲笑うことはなかった。

他人の目があるところでは、男性的な振る舞いを意識するようにしているが、短時間でボロが出る。

ジーンは、私のことを気にかけつつ、全体を見ていた。

私に失礼にならないように、自然と。

この人しかいない、そう思った。

爵位も大丈夫だと思った。

次男同士だから、後継ぎの心配もいらない。

知り合いは皆、私を応援してくれていた。

嫌いな兄も。

だから、成就しない恋の可能性なんて、考えたこともなかった。

普通に考えたら、公爵家の私の恋が実らないなんて、階級社会ではありえない。

今日は、ジーンから、明確に拒絶された。

ヒドイ。

ジーンが私の扱いに困らなかったのは、ヒロインの扱いで慣れていたから?

でも、ヒロインはもういない。

ヒロインがいなくなって、悲しむジーンを慰めるところから、始めたらいいかな。
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