フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

813.ざまぁは?ねえ、ざまぁは?  え?婚約破棄ですか?なぜ?今?サージェ侯爵家の夜会の会場で? 誰が誰に婚約破棄しているの?

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「悪役令息?攻略?」
と外野の中から声があがったのは、逆ハーレムもののお話がそれなりに周知されているということかしら?

どこのご子息かしら。

「マルビル殿。私は、私の人生で、真実の愛を見つけました。その相手は貴殿ではありません。」
とジーン。

ジーンは、ボクの名前を出したりはしない。

公爵家の次男が、ボクの存在を無視しているから。


「真実の愛!」
外野が騒いでいるの。

「悪役令息には、ざまぁがつきもの。ざまぁは?ざまぁはいつ来る?」

期待されているけれど、ざまぁはないの。

悪役令息は主役じゃないからここで退場するの。

公爵家の次男も、逆ハーレムものの愛読者なのかしら?

悪役令息という言葉が、自分に当てはまると気付いて、落ち着きがなくなっているの。

公爵家の次男の心拍数は、悪役令息と聞いてから、急激に上がっていると思うの。

「悪役令息のざまぁはないの。子爵家のボクが主人公で、主役だもの。」

ボクが宣言すると、外野は、がっかりしたのか、テンションが下がって、ぶつぶつ言い始めたの。

「なあんだ、ヒロインが攻略に成功したんだあ。」
という気の抜けた声と共に。

「公爵子息が侯爵子息に執着するなんて、何事かと思ったら、ここは、BLゲームの舞台なわけ?」

BLゲームが何か知らないけれど、舞台は違うと思うの。

「腐男子として、見る分には良かったけれど、貴族としてはおかしいと思ったんだよ。」

貴族としての感覚を大事にした方がいいと思うの、ボク。

「男性妊娠は、あるのかな?」

想像妊娠のことかしら?

「BLゲームのヒロインを3次元にすると、地味になるんだなー。」

地味平凡が、逆ハーレムの主人公の定番なの。

逆ハーレムの物語で、キラキラしているのは、攻略される男と相場が決まっているの。

ボク達が参考にしたのは、BLゲームの舞台というものではないけれど、このご子息は、解説が好きなのかしら?

「完全新作?登場人物の名前も顔も思いあたるものがないんだけど。どこのかな?」

「主人公とか言っているから、ヒロインは知っているよね。後で聞きに行こう。」

とても自由なご子息なの。

聞かれても、ボク、答えを知らないから、答えないけど。

ボクが公爵家の次男と正面から対峙する状況でなかったら、自由なご子息は、ボクに走り寄ってくるんじゃないかしら?

外野の一角から、好奇心いっぱいの熱い眼差しを感じるの。

ボク達が、悪役令息と主人公の子爵子息による逆ハーレム物語をしているのを、ビーイット公爵家の嫡子は、離れた場所から、鋭い眼差しで見ている。

ビーイット公爵家の嫡子の関心をひけた。
次は、嫡子を釣り上げる番なの。

と、そのとき。

「お前との婚約は、破棄する。」
と男性の叫びが聞こえたの。ボクは、音源を探す。

婚約を破棄する?

ここは、サージェ侯爵家の夜会の会場なの。

婚約破棄しても、いい場所なのかしら?

「お前は、おれの婚約者に相応しくない。泣いて後悔してみろ。」
男は、興奮している。婚約破棄されたお相手の声は、聞こえない。

男の声、最近聞いた気がするの、ボク。

どこだったかしら?

ボクもジーンも、公爵家の次男も思わず、視線で声の主を探す。

ジーンの表情は変わらないけれど、絡めた指先から緊張が伝わってくる。

ジーンが心配しているの。

婚約破棄された方は、どちらにいるのかしら?

人が多くて、ボクには見つけられないの。

ボクが、一緒に戦うから。
ジーンを1人にしない。

ジーンが行くなら、ボクも一緒に行くの。

ボクは、握っているジーンの指を撫でる。

「お前のことは、最初から気に入らなかったんだ。何かあるごとに、対等、対等とうるさくおれにたてつきやがって。」
男は、鬱憤を晴らすかのように、喋る、喋る。
一方的に。

それにしても。
ボク、どこで、この声を聞いたのかしら?

「生意気な女なんて、お呼びじゃねえんだよ。」

男は、息を吸って、ひときわ大きな声を出した。

「聞いてんのか?おい、フローレン!」
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