フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
813 / 1,440
第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

813.ざまぁは?ねえ、ざまぁは?  え?婚約破棄ですか?なぜ?今?サージェ侯爵家の夜会の会場で? 誰が誰に婚約破棄しているの?

しおりを挟む
「悪役令息?攻略?」
と外野の中から声があがったのは、逆ハーレムもののお話がそれなりに周知されているということかしら?

どこのご子息かしら。

「マルビル殿。私は、私の人生で、真実の愛を見つけました。その相手は貴殿ではありません。」
とジーン。

ジーンは、ボクの名前を出したりはしない。

公爵家の次男が、ボクの存在を無視しているから。


「真実の愛!」
外野が騒いでいるの。

「悪役令息には、ざまぁがつきもの。ざまぁは?ざまぁはいつ来る?」

期待されているけれど、ざまぁはないの。

悪役令息は主役じゃないからここで退場するの。

公爵家の次男も、逆ハーレムものの愛読者なのかしら?

悪役令息という言葉が、自分に当てはまると気付いて、落ち着きがなくなっているの。

公爵家の次男の心拍数は、悪役令息と聞いてから、急激に上がっていると思うの。

「悪役令息のざまぁはないの。子爵家のボクが主人公で、主役だもの。」

ボクが宣言すると、外野は、がっかりしたのか、テンションが下がって、ぶつぶつ言い始めたの。

「なあんだ、ヒロインが攻略に成功したんだあ。」
という気の抜けた声と共に。

「公爵子息が侯爵子息に執着するなんて、何事かと思ったら、ここは、BLゲームの舞台なわけ?」

BLゲームが何か知らないけれど、舞台は違うと思うの。

「腐男子として、見る分には良かったけれど、貴族としてはおかしいと思ったんだよ。」

貴族としての感覚を大事にした方がいいと思うの、ボク。

「男性妊娠は、あるのかな?」

想像妊娠のことかしら?

「BLゲームのヒロインを3次元にすると、地味になるんだなー。」

地味平凡が、逆ハーレムの主人公の定番なの。

逆ハーレムの物語で、キラキラしているのは、攻略される男と相場が決まっているの。

ボク達が参考にしたのは、BLゲームの舞台というものではないけれど、このご子息は、解説が好きなのかしら?

「完全新作?登場人物の名前も顔も思いあたるものがないんだけど。どこのかな?」

「主人公とか言っているから、ヒロインは知っているよね。後で聞きに行こう。」

とても自由なご子息なの。

聞かれても、ボク、答えを知らないから、答えないけど。

ボクが公爵家の次男と正面から対峙する状況でなかったら、自由なご子息は、ボクに走り寄ってくるんじゃないかしら?

外野の一角から、好奇心いっぱいの熱い眼差しを感じるの。

ボク達が、悪役令息と主人公の子爵子息による逆ハーレム物語をしているのを、ビーイット公爵家の嫡子は、離れた場所から、鋭い眼差しで見ている。

ビーイット公爵家の嫡子の関心をひけた。
次は、嫡子を釣り上げる番なの。

と、そのとき。

「お前との婚約は、破棄する。」
と男性の叫びが聞こえたの。ボクは、音源を探す。

婚約を破棄する?

ここは、サージェ侯爵家の夜会の会場なの。

婚約破棄しても、いい場所なのかしら?

「お前は、おれの婚約者に相応しくない。泣いて後悔してみろ。」
男は、興奮している。婚約破棄されたお相手の声は、聞こえない。

男の声、最近聞いた気がするの、ボク。

どこだったかしら?

ボクもジーンも、公爵家の次男も思わず、視線で声の主を探す。

ジーンの表情は変わらないけれど、絡めた指先から緊張が伝わってくる。

ジーンが心配しているの。

婚約破棄された方は、どちらにいるのかしら?

人が多くて、ボクには見つけられないの。

ボクが、一緒に戦うから。
ジーンを1人にしない。

ジーンが行くなら、ボクも一緒に行くの。

ボクは、握っているジーンの指を撫でる。

「お前のことは、最初から気に入らなかったんだ。何かあるごとに、対等、対等とうるさくおれにたてつきやがって。」
男は、鬱憤を晴らすかのように、喋る、喋る。
一方的に。

それにしても。
ボク、どこで、この声を聞いたのかしら?

「生意気な女なんて、お呼びじゃねえんだよ。」

男は、息を吸って、ひときわ大きな声を出した。

「聞いてんのか?おい、フローレン!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

処理中です...