フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

748.厄介事の真相に気づいてしまった。知らんぷりしたいけど、厄介事を引き起こした2つの原因のうち、1つに付き纏われている。どうしよう？

「わたしを馬鹿にして！」
ミドリン・パーマーは、ボクを睨んでいる。

愛人に相応しい、という言葉はミドリン・パーマーを苛立たせるのに十分だった。

ミドリン・パーマーが、生きて研究対象になっているのも、魅了の解明という目的のためだけじゃないと思うの。

ミドリン・パーマーのいない世界に耐えられない男子学生が何人もいて、その男子学生達は、簡単に失えないと国が認めているんじゃないかしら。

ミドリン・パーマーが生かされているのは、男子学生達の精神を考慮した対症療法の役割も大きいと思うの。

ミドリン・パーマーは、目的のために猪突猛進で学校に行った。
他の学生からどう見られるか、人の目を気にしなかった。

家族から、玉の輿狙いだと思われていたせいで、ミドリン・パーマーは、商会の娘でありながら、商売のための基礎を教えられていない。

ミドリン・パーマーは1人で闘志を燃やしたけど、戦場の知識や、戦いの作法を身に着けないまま飛び込んだ。

普通、そんな非常識の塊は、弾かれたり、先住者からの洗礼を受けたりして、現実に向き合う機会が早めにやってくる。

ミドリン・パーマーの不幸は、異界の神に祈願し、神が願い事を叶えたこと。

浅瀬での失敗なら、再挑戦が可能だけど。

ミドリン・パーマーが溺れたのは、沖合。

男子学生達は、一緒に沈むのか、ミドリン・パーマーが1人で沈むのか。

国として、決めかねているというところかしら。



ボクの逆ハーレムの噂から始まった魅了騒動。
運良くハンティア王国の婚約破棄の原因に辿り着いたものの、ボクの手に負えるかしら？

魅了よりも厄介な話なの。

ハンティア王国の貴族子弟の惨状について、言えることは、人の手に余るということ。
ミドリン・パーマーが、異界の神に祈って、聞き届けられた結果だもの。

本体が、契約を司る神という人外が祠の主として、願い事を叶えた。

人と人との契約とは異なり、神へと願い、神が叶えた願い事を取り消すことはできない。

それならば、と、新しい願い事を用意しても、祠の主の性質上、願ったままを叶えてくれるとは限らない。

そして、最大の問題。

願い事を叶える祠は、主を失い、機能しなくなった。

祠の主は、祠から出てきてしまった。主の声は、ボク以外に聞くことができない。

祠が、異界の神の言葉をこの世界の人の言葉に訳す役割をしていたと思うの。

ミドリン・パーマーの話は、教訓なの。

祠の主の人外の言うことをまるまる信用するものではない。

異界の神の基準が、この世界の神と同じだとは思えない。

神というより、悪魔っぽいんだもの。

言葉巧みに騙して、飄々としているあたりが。

その悪魔っぽい神様が、ボクにまとわりついている。

ハンティア王国の騒動を引き起こした原因は、ミドリン・パーマーとミドリン・パーマーの願い事を聞いた悪魔っぽい異界の神様にあると、
ボクは、断言しちゃうの。

ハンティア王国の今頭を悩ませている解決策のない事態を引き起こした2つある原因のうちの1つが、コーハ王国の近衛のボクにくっついている。

どうしたものかしら。