フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

737.女にも男にも人気の同僚がいる。男女どっちにも見向きもされなかった俺達。急に女のコに取り囲まれたよ。手下も一緒に取り囲んでいるけど。

時は遡る。

フィリップ殿下にすげなくあしらわれたユズキリ王女が退場した後、第2王子がフィリップ殿下とお出かけするという話は、瞬く間に広がった。

コーハ王国の第4王子フィリップ殿下は、ユズキリ王女ではなく第2王子になびいた。

年下の男が好きなのだろう。フィリス・ガランのみならず、フィリップ殿下の近衛は皆、フィリップ殿下より年下の男。

今まで、ご令嬢方が熱心に誘いかけても、なびかなかったのは、コーハ王国の外交団全員、女に興味がないせいだ。

ハンティア王国は、そういう結論に達したらしい。
ご令嬢から一転。
ご子息達に構われまくることになった。
男による男のためのハニートラップ始動である。

アンドリュー達を囲むのは、ご令嬢方からご子息方へ。

サブリーとユージュアルは、ご令嬢方のみならず、ご子息方からも見向きもされなかった。

アンドリュー達がご子息方と交流している間に、サブリーとユージュアルは、暇潰しに探検することにした。

知らないお城の中を探検するのはとても楽しい。

サブリーは、設置されている魔導具。
ユージュアルは、城の構造に。

仲良く好奇心を満たしていた。

2人はお散歩しているうちに、ご縁がなくなったはずの方々に遭遇してしまう。

アンドリュー達にアピールしていた、ご令嬢方である。

標的が女に興味がないから、とアンドリュー達から遠ざけられたご令嬢方。

ご令嬢方がアピールしていたのも、ご子息方がアピールしているのも、ハンティア王国の国策だ。

ご令嬢方がどうして、アンドリュー達に熱烈なアピールを繰り返していたか？

ハンティア王国の国策が、ご令嬢方の目的と合致していたからだ。

自分の希望する男を己の力で落とし、結婚する。

Xデーに向けて、女を磨き、魔導具を手配し、魔法を鍛えてきた。

フィリス・ガランという男の魅了にとらわれた、哀れな男を救い出し、真実の愛という名の弱味を握って、結婚するその日を夢見て。

しかし、現実は。

無駄な努力を強いられた挙げ句、結婚相手はゲットならず。

女に興味がないなら、と新たに送り込まれた子息達とアンドリュー達は、とても仲が良さそうだ。

ご令嬢方の胸中やいかに、である。

サブリーや、ユージュアルは、ご令嬢方の眼中になかったので、婚活相手としては、存在を無視されてきた。

サブリーとユージュアルは、後継ぎでもない、地味な男爵子息なので、ご令嬢方のハンティング対象からは、早々に外れたのだ。

サブリーとユージュアルも、ご令嬢方に近づかないようにしていた。
扇子でぼかすか殴ってくる女のコは、いくら可愛くても、扇子の届く距離にいたくない。

そういうわけで、2人は、ご令嬢方を回避して歩くようにしていたのだが、ご令嬢方は、2人に用事があったらしく、手の者が探し回ったようだ。

サブリーとユージュアルは、ご令嬢方とその手の者に包囲されていた。

「俺達に憎しみのこもった視線が突き刺さるのは、なんでかな？」
とユージュアル。

「ハンティア王国に来て、初めて女のコに囲まれた。女のコの表情に可愛さが全くないけど。」
とサブリー。