フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

693.話が長い、つまらない、飽きた。被害者の主張を聞いても、その被害者の横暴で迷惑をこうむった身としては、可哀想なところが見つからない。

アンドリューがお返事してくれないの。
「アンドリュー。ダメなの？」

ボク、1人で脱出する？

「フィリスのお願いは、俺も叶えたい。もう少し頑張れ。」
とアンドリュー。

「もう少し？」

「もう少し。」
とアンドリュー。

もう少しなら、待っていてもいいかしら。

「フィリスが頑張った分以上、たくさん甘やかす。」
とアンドリュー。

それはとても魅力的。
「アンドリュー。ボク、うんと甘やかされたいの。」
1人だと、あまり楽しくない気がしてきたの。
「待つことにするの。」

「待っていろ。手は？」
とアンドリュー。
「うん。」
ちゃんと握っておくの。


アランとバージニは、サブリーとユージュアルのズボンを掴んでいる。

襟首を掴むと目立つので。

「前に立っているのに、後ろの俺達の動きが、なんでわかった？」
とサブリーはぼやいている。
「魅了の悲劇に盛り上がっているときが、チャンスだったのに。」

「盛り上がっていたのは、ハンティア王国だけだ。」
とバージニ。
「サブリーとユージュアルは、ウロウロしていると、ご令嬢が殴りに来る。危ないから離れるな。」
とアラン。

「いや、もう殴らせたりはしない。」
とユージュアル。

「おう、華麗に避けてみせる。」
とサブリー。

ハンティア王国のご令嬢方は、ユージュアルとサブリーの見分けがつかない。

サブリーとユージュアルの顔は全く似ていないのだが。

ハンティア王国の肉壁を演じたご令嬢方は、ユージュアルに報復を願うものの、茶色の髪と瞳の小柄な細身の男の記憶しかない。


ご令嬢方は、サブリーを見ても、ユージュアルを見ても、扇子を振り上げてくる。


アランとバージニがいると、淑女に変身するので、アランとバージニは、サブリーとユージュアルを2人で出歩かせないことにした。

「必要だから、殴らせただけで、ほいほい殴らせない。」
とユージュアルは主張したが、勝手に出歩いたら、首輪とリードつけると言われて以来、大人しくしている。

サブリーとユージュアルは、学習済みである。

首輪とリードが、お飾りやぬいぐるみのように、標準装備になるのは絶対に嫌だ。

首輪とリードなんてつけられたら、ふらっと出歩けない。

リードを持つ係がいなければ、リードを持って逃げれば済む。

リードを持つ係がいたら、逃げられないではないか。

サブリーとユージュアルより、非力なら、逃げられるが、別働隊の隊員で、2人より非力な人間はフィリスくらいしかいない。

フィリスなら一緒に逃げるので、係になっても問題はないのだが、きっと、そんなうまい具合にことが運ぶことはない。

「魅了の被害者って言っているけどさあ。被害者の看板を背負って、人生謳歌しまくりじゃね？」
とサブリー。

「言えてる。被害者面で、同情を強制して、意見を押し通すことしか考えていない。」
とユージュアル。

体を動かせないので、口を動かす2人。

サブリーとユージュアルが素直なのはいつものことなので、アランもバージニも気にしない。

サブリーもユージュアルも、言ってはいけないことは、口にしない。
喋りたいだけ喋らせて、ガス抜きをさせることが、お守りのコツである。