上 下
665 / 1,412
第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

666.恨み骨髄。末代まで祟ってやるとは、よく言ったもの。化けて出てくるのか、化けないで出てくるのか。

しおりを挟む
側近達は、ミハ王子を部屋に運んだ。
魔力枯渇なら、魔力の補給だが、琥珀色の光を出した珠のついている棒の法具は、不足する魔力を補うために、魔力以外の何かをミハ王子から搾り取った。

側近達は、そんな恐ろしい法具があるなんて知らなかった。

とりあえず、部屋に運び込んで、魔力回復の飲み物を飲ませようと試みているが、ミハ王子の意識は一向に戻らない。

この砦への往復は、法具を貸し出した男が請け負っている。
『何から何まで、世話になる、助かる。』
と喜んでいたミハ王子は、城まで保つだろうか。

法具を貸し出した男は、王子の容態など気にしていなかった。

すぐに帰る支度をして、城から迎えを呼ばなくては。

あの男に頼るのは、危険だ。

手遅れかもしれないが。

側近達が、役割分担を決めていると、ガチャガチャと出入り口が騒がしくなった。

男達が、法具を持って、砦に戻ってきた。

「撤収を急ぐよう一応話してくる。」
側近のうち、1人が、法具を持っている男達に近づいていく。

男達は、始めるか、と気楽に話しながら、ミハ王子の魔力を吸い上げた法具を持って、法句を唱え始めた。

「何をしている!ミハ様の魔力を無駄遣いする気か!」
側近が止めようと叫ぶが、男の口から出る法句は水が流れるようにスムーズ。

ミハ王子の半分にも満たない時間で、男は法句を唱え終わる。

「エイ。」
という男の声と共に、琥珀色の光が砦を染めていく。

ドーンと地響きがした後、体の中を何かがすり抜けた気がして、側近は、きょろきょろと周りを見てみた。

何もない、とほっとした途端。

壁から、天井から、床から、血まみれの手が伸びてくる。

「ひぃ。」
側近は、急いで、ミハ王子の元に戻った。

ミハ王子を寝かせていた部屋から、仲間の悲鳴があがる。

側近が、部屋に入ると。

横たわるミハ王子の頭の先から足の先まで、針金が何百本も突き刺さっていた。血だらけになって。

「ミハ様!」
側近が駆け寄ろうとすると、仲間が止めた。
「もうダメだ。」
ミハ王子の手足は、もう痙攣していなかった。
「そんな。」
崩れ落ちそうな側近を仲間が支えた。
仲間達は、状況を語った。
「ドーンと地面が揺れて、あの数の針金が一気に床から飛び出した。避ける暇なんてなかった。」

「天井や壁や床から無数の手が出てきた。血まみれの手が。」

側近は気を取り直した。
「こちらも同じだ。あいつらが、ミハ様の魔力のこもった法具を砦の中で使ったら、そこら中に血まみれの手が生えてきた。」

「どっちに反応したのかな?法具か、ミハ様の魔力か。」

「分からない。」

「落ち着いた今のうちに、迎えを呼んで、出来るだけ砦から離れよう。」

「ミハ様は?」

「この状態のミハ様をお運びするのは、僕達だけでは無理だ。」

「そうだな。荷物をまとめて、出るぞ。」

側近と仲間達は、主君の遺体に1度頭を下げると部屋を出ていく。

ミハ様の魔力に反応したのなら、ミハ様の魔力を解き放った男達はどうなったのだろうか。

側近と仲間達は、側近が男達を見た部屋の前で立ち止まった。

男達の目と耳と鼻と口には隙間なく針金が突き刺さっている。

男達は、それでも死んでいなかった。

1人の男は、手探りで出入り口に向かおうとしている。

別の男は、法具を使おうとしているが、口が塞がっていて法句を唱えられていない。

また別の男は、針金を抜こうとして、悪戦苦闘している。

ミハ王子の魔力の入った法具を持って法句を唱えた男は、天井から逆さ吊りになっていた。

天井から床に突き刺さっている何百本もの針金に体の至るところを貫かれて。
それでも、死んでいないのだ。血を流しながら、ピクピクと動いている。

「「「うわああああ。」」」

側近と仲間達は、砦から荷物を持たずに駆け出した。

視覚と嗅覚に、焼き付いて離れない。

「ここは、人のいるところじゃない。離れないと。」
3人は、ふらつきながら、砦から遠ざかっていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...