フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
640 / 1,437
第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

641.夢も希望も野望も、やる気に繋がる大切なもの。一歩踏み出す前に、踏み出す場所を確認してみて?夢のための一歩は、その場所で合っている?

しおりを挟む
パリステ王子は、会議に参加していて、出席者の誰とも等間隔で話していた。

親しくなることはないけれど、輪から外れることもない。

違和感なく王子の輪の中にいる。


シャリン王子とパリステ王子のタイプは真逆。

目と耳にしたら、別々の視点からの報告が手に入る。
視点の偏りがはっきりしているから、あげられた情報の検分もしやすい。


パリステ王子に、誰の思惑で動いているかを聞くのは、得策じゃないの。

パリステ王子は、自分の意志だと答えるんじゃないかしら。

だから、会話から拾っていくことにするの。

「ああ。同時期にデビューする王子や王女に会う機会が何度もあるわけじゃないから、貴重な経験だった。」
とパリステ王子。

「いいデビューだったのね。この国際会議のどういうところに注目したのか、教えてくれるかしら?」

「注目?」

「そう。パリステ王子が、この国際会議をデビューに選んだ理由は何かしら?」

パリステ王子の受け答えから鑑みるに、この国際会議でデビューする必要はないもの。

利があるから、選んだんじゃないかしら。

「歴史があって、デビューに相応しい。」
とパリステ王子。

歴史があるのは、どの年代にも、事情持ちがいるからなの。

「デビューした後のことも考えているのかしら?」
ボクは聞いてみる。

「勿論。一人前の王子として。」
とパリステ王子。

「国際社会で活躍するとか、そういうことかしら?」

「この国際会議で、映えある一歩を踏み出せた。」
とパリステ王子。

「活躍する夢は、残念ね。最初の一歩から間違えているの。」

初めて、パリステ王子が感情を動かした。
観察者じゃいられなくなったかしら。
「王子と王女だけが出席する会議の格式が高くないと言う気か?」
とパリステ王子。

何のために、王子と王女に出席者を限定しているのか?

王子と王女より地位の低い者が、いたら困るからよ?

王子と王女の不出来を下々に広めないため、なの。

格式は、後付け。

王子と王女にデビューした実績を残すための会議だから、歴史があって格式が高い、と評価しておかなくては。

この国際会議がデビューと知られたら、国際社会で、活躍の場を得ることは難しい。

国際社会で活躍する他国の王子や王女、重鎮、重要人物の視界に入らない。

会っても相手にされない。

そもそも、相手に会う機会を作れない。

この国際会議でデビューしたという事実により、門前払いされる。

相手にする価値がない、と見做される。

底から這い上がってくる王子や王女もいる。

国際会議でデビューをしたが、不遇が原因で、成人後、本人の優秀さに注目が集まった場合。

他の王子や王女がいなくなって、活躍を余儀なくされる場合。

いなくはないけれど、とても少ない。

ボクも、近衛になって、あちらこちらに外交に行くようになって、知ったの。

お父様やお兄様の交友関係には、いないもの。

パリステ王子は、知らないのかしら?
「この国際会議でデビューした方々のその後はご存知かしら?」

「知っているが。」
とパリステ王子。

知っているの?
「フィリップ殿下のお顔は見納めになるから、見ておかれてはいかがかしら?思い出作りに。」

フィリップ殿下の出席する場所にパリステ王子が出席する未来は、ないもの。

「国際会議で知り合えたことをなしにするのか!」
とパリステ王子。
「この国際会議でお会いしたと証言できる王子や王女が何人いると思っている。」


パリステ王子は、会議の出席者の情報や、会議の内容を話して回るつもりなのかしら?

この国際会議で知己を得たとしても、公言しないものなの。

不出来同士、互いに目を瞑ることで、体裁を保つのが、この国際会議に出席するための暗黙の了解。

紳士協定なの。

出席者についても、会議の中身についても。

出席者は、この国際会議で、デビューが無事に済んだ、という情報だけを公表できる。

もし、紳士協定を破って、口外すれば、どうなるか。

考えてから行動した方がよいのではないかしら。

王子、王女のための紳士協定だもの。

軽く考えては、ダメじゃないかしら。

「この国際会議に、フィリップ殿下に無関係よ?フィリップ殿下は出席者ではないもの。」

「パリステ王子は、この国際会議の出席者と会議の内容を世の中に広めたいの?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

食堂の大聖女様〜転生大聖女は実家の食堂を手伝ってただけなのに、なぜか常連客たちが鬼神のような集団になってるんですが?〜

にゃん小春
ファンタジー
魔獣の影響で陸の孤島と化した村に住む少女、ティリスティアーナ・フリューネス。父は左遷された錬金術師で村の治療薬を作り、母は唯一の食堂を営んでいた。代わり映えのしない毎日だが、いずれこの寒村は終わりを迎えるだろう。そんな危機的状況の中、十五歳になったばかりのティリスティアーナはある不思議な夢を見る。それは、前世の記憶とも思える大聖女の処刑の場面だった。夢を見た後、村に奇跡的な現象が起き始める。ティリスティアーナが作る料理を食べた村の老人たちは若返り、強靭な肉体を取り戻していたのだ。 そして、鬼神のごとく強くなってしまった村人たちは狩られるものから狩るものへと代わり危機的状況を脱して行くことに!? 滅びかけた村は復活の兆しを見せ、ティリスティアーナも自らの正体を少しずつ思い出していく。 しかし、村で始まった異変はやがて自称常識人である今世は静かに暮らしたいと宣うティリスティアーナによって世界全体を巻き込む大きな波となって広がっていくのであった。 2025/1/25(土)HOTランキング1位ありがとうございます!

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

処理中です...