フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!

617.女性を追いかけて、女性達の元締めのいる仮事務所へ引っ立てられたサブリーとユージュアル。

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サブリーとユージュアルは、経験豊富そうな女性の後を追いかけ、追いかけているのを見つかって、お招きされている。

女性達の元締めの仮事務所にて。

「後をつけた理由を言え」
と凄まれて。
「お願いできるかと思って。」
と答えている。けろっと。

元締めは黙って、2人を見ている。

「あんた達、貴族だろ?」

「「うん。」」

「貴族の相手はしねえんだ。」

「「なんで?」」

「貴族の客はとらねえんだ。」

「俺達、普通の人間だよ。いきなり、変身したりしないよ?」

「普通の人間だから、人間を食べたりしないぞ。」

「変身したり、食べたり、する客はとらねえが、そうじゃねえ。」

元締めは、面倒な気持ちでいっぱいだ。

ただの一般人なら、一喝して追い払うが、近衛の制服を着ているのに、頭のよくなさそうな質疑応答にしかならない2人組の若者。

のんびりした平和な国で暮らすのんびりした貴族子弟に違いない。

のんびりしているから、元締めの殺気立っている気配が、全く伝わらない。

「あんたら、仕事中じゃないのか?」

「「仕事?」」
きょとんとする2人。

「制服着て、仕事しているんじゃないのか?」

2人の若者は顔を見合わせる。
「仕事、なんか言われた?」
「何も聞いていない。」

「「多分、大丈夫。」」

「仕事じゃないなら、何していたんだ?」

「歩いていた。」

「なんで歩いていたんだ?」
元締めは、日中、制服着て堂々と女性の後をついてくる若者の対処くらい、さんざんしてきた。

いたずら半分、期待半分から、思い詰めた奴から、権力で誤魔化したい奴から、色々。

この2人は、今までの若者とは違う。

おそらく、なんにも考えてない。
権力を行使する発想もない。

たまたま女性を見つけた。
声をかけてみようとしたら、どっかに行くから、どこに行くのかと思ってついてきた。
ついてきて、元締めに確保された。

確保したのが、元締めじゃなかったら、金を巻き上げて、身ぐるみはがして、ぽい、しているだろう。

能天気過ぎて、相手し辛い。

貴族子弟となると、露骨に蔑ろにはできない。
本人がアホでもスカタンでも、巨大なバックがついていたりする。

「道があるから?」
「海の上は歩かないもんな。」

「「なーなー、なんでダメ?」」

2人の関心は、女性とどうこうすることより、ダメな理由への好奇心にうつったようだ。

仮事務所に入ってきたときも、きょろきょろ、して楽しそうにしていた。

豪胆なのかと思いきや、緊張感がないだけだった。

好奇心を満たして、帰してしまおう。

「お貴族さまとはご縁のない商売だからな。」

「心配しなくても、俺達、貴族だよ。」

「貴族にも色々あるだろう?」

「色々って?」

「王様と仲良しとか。庶民に近いとかな。」

「大丈夫。偉い人の言うことは、ちゃんと聞いている。」

「なんて言われたんだ?」

「自由にしていいんだよ、俺達。」
「好きに過ごしていいんだ、俺達。」

元締めは、半眼になりそうだった。

試しに聞いてみたが、偉い人の血縁の可能性がある。

「偉い人ってどのくらいの人だ?」

「「どのくらい?」」

「上から数えたら?」

「分からないけど、偉い人の言うことを聞いていれば問題ない。」

「爵位とか?」

「「なんだっけ?」」

「侯爵(ジーン)?」
「公爵(ウィルソン)?」
と若者はひねり出したが、なんだっていいんだ、と言った。

「偉い人が分かっていれば、いいんだよ。」

そんなわけあるか、と元締めは腹の中でどやしつけている。

1番上が下っ端に関係する日なぞ、一生のうち、何度もあるものではない。
縦社会で重要なのは、直属の上司の覚えが目出度いこと。

つまり、この2人は、公爵だか、侯爵だか、お偉いさんの庇護下にあり、公認でのびのびしているわけだ。

しかも、その偉い人の公爵だか、侯爵だかも、本当に偉いのだろう。

権力とは当たらず触らずでいたいものだ、と元締めはため息をつく。

元締めのもとに、2人の身元を確認しにいっていた部下が知らせにきた。

「コーハ王国の王子が滞在中で、王子と一緒にきた近衛ッス。」
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