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第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が!
591.『新人研修の課題が、1人で、外国の街中で兎探し?見つけて連れてくるまで、帰ってくるな?誰かに助けてもらうのは禁止?』それ、研修?
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『兎を見ませんでした?』
とフィリスは、ゴウに尋ねた。
『兎は、街中には、いないと思う。』
とゴウは教えてやった。
ゴウの答えを聞いた新人らしき近衛は、しょんぼりしている。
『ボク、街中から兎を探して連れて帰るまで、帰れないの。』
『兎、どこかから、遊びにきてくれないかな。』
というフィリス。
『このあたりには、野原がない。飼われている兎は、家から出さない。』
とゴウが教えてやると、新人の目に涙が溜まった。
『そうなの?ボク、兎を探す課題だから、街中に兎がいると思っていたの。親切にありがとう。』
涙を溜める新人の様子を見て、ゴウは感づいた。
この新人は、職場でいじめられている。
新人自身は、理解していないかもしれないが、いじめに加担しているのは、課題を出した人間だけではないだろう。
『兎は、どんなものか、知っているか?』
とゴウは聞いてやる。
『ボク、兎を見たことがないの。耳が長くて、尻尾が短い草食動物とは聞いたことがあるのだけど。どんな生き物か、ご存知かしら?ご存知だったら、教えてくださると嬉しいの。ご迷惑でなかったら、だけど。』
新人の言葉遣いで、ゴウは察した。
箱入り過ぎて、周りから浮いてしまい標的にされているのかもしれない。
街中で兎は見つからない。
この辺りは、ゴウ達のねぐらだ。権力者に踏み込まれたくない。
ゴウは、涙をたたえている新人に教えてやった。
『実はな、兎とはおれのことだ。お前は、おれを見つけた。良くやったな。』
新人のしょんぼりした様子は一転して、ぱあっと明るくなった。
『兎は、うさぎさん、だったの?ボク、分からなかった。ありがとう、うさぎさん。名乗り出てくれて、嬉しいの。』
ニコニコとゴウを見ている新人。
騙されて、裏通りから、路地裏まで案内されても、他人を責めないこの新人の清らかさが気に食わなくて、嫌がらせをしたやつがいるんだな、とゴウは思った。
『だから、帰っていいぜ。』
とゴウは言ったが、それを聞いて新人はまたしょんぼりしてしまった。
『連れて帰ってこれないなら、帰ったらだめなの。課題が終わるまでは、誰かに助けてもらうことも禁止なの。』
『兎探し人は、兎に仕事を頼めばどうだ?』
とゴウは提案してやる。
『兎に、一緒に来て、と頼んで、ついていった兎に報酬を支払うんだ。』
『ボク、今、お金持っていないの。』
と新人は悲しそうにした。
『朝、起きたら、なかったの。』
『は?』
ゴウは、さすがに驚いた。
『昨日はあったのか?』
『寝る前は、あったの。朝起きたら、全部なくて。同じ部屋の人も知らないって。指導員と引率には、信じてもらえなくて。課題をサボるために騒ぎを起こしただろうが、狙い通りにはいかない。課題は、今から始めろって。』
ゴウは悟った。
組織ぐるみの犯罪だな。
一緒について事務所かどっかに帰ったら、次の日には、この新人が殴り殺されているかもしれない。
金蔓から金をむしり取れる内は、生かしておくが、金を引き出せなくなったと分かれば、何をするか分からない。
今頃、新人から巻き上げた金で、全員呑んだくれているに違いない。
寝覚めの悪い話だ。
『兎に仕事を頼むのは、課題とは違う。依頼料を親兄弟に頼れないのか?』
とゴウが助言すると、新人は喜んだ。
『ありがとう。お父様かお兄様にお願いするの。』
『どうするんだ?』
助言はしたが、祖国の親兄弟にどうやって連絡をとるのだろうか?
『大丈夫なの。呼べば助けに来てくれるの。』
と新人は呑気に笑う。
そして、いきなり、叫んだ。
『お父様、お兄様。ボク、兎さんを雇って、お仕事を依頼したいのに、朝起きたら、お金がないの。助けに来て。』
『これで、大丈夫。』
と自信満々の新人。
ゴウは、箱入りが想像以上に頑丈な箱に入っているんだと知った。
呼んだら、来るって、なんだ?
新人が、世間知らずなのか、甘やかしまくったのか。
『いや、家の中、せめて、同じ敷地じゃなきゃ、だめだろう。』
とゴウは呟いた。
『時間はかからないけれど、待っている間、兎さんとお話するの。』
と懐いてくる新人。
ゴウは、なんかいい手はないかな、と考えながら、新人の相手をした。
ゴウ達のねぐらに新人を押し付けたやつの狙いは分かっている。
新人が殺された後に新人の死体をゴウ達のねぐらに投げ込み、ゴウ達を殺人犯に仕立てあげ、罪の減免をチラつかせて、ゴウ達を危ない仕事に放り込む。
ゴウ達は、裏社会の人間だが、足抜け出来ないほどのデカいヤマはやらない。
権力者に目をつけられないようにうまく立ち回ってきたが、どうやら潮時らしい。
酷使されて殺されるくらいなら、新天地も悪くない。
この新人はふんわりした頭だが、親兄弟は違うだろう。
そちらと交渉しよう、とゴウは決めた。
とフィリスは、ゴウに尋ねた。
『兎は、街中には、いないと思う。』
とゴウは教えてやった。
ゴウの答えを聞いた新人らしき近衛は、しょんぼりしている。
『ボク、街中から兎を探して連れて帰るまで、帰れないの。』
『兎、どこかから、遊びにきてくれないかな。』
というフィリス。
『このあたりには、野原がない。飼われている兎は、家から出さない。』
とゴウが教えてやると、新人の目に涙が溜まった。
『そうなの?ボク、兎を探す課題だから、街中に兎がいると思っていたの。親切にありがとう。』
涙を溜める新人の様子を見て、ゴウは感づいた。
この新人は、職場でいじめられている。
新人自身は、理解していないかもしれないが、いじめに加担しているのは、課題を出した人間だけではないだろう。
『兎は、どんなものか、知っているか?』
とゴウは聞いてやる。
『ボク、兎を見たことがないの。耳が長くて、尻尾が短い草食動物とは聞いたことがあるのだけど。どんな生き物か、ご存知かしら?ご存知だったら、教えてくださると嬉しいの。ご迷惑でなかったら、だけど。』
新人の言葉遣いで、ゴウは察した。
箱入り過ぎて、周りから浮いてしまい標的にされているのかもしれない。
街中で兎は見つからない。
この辺りは、ゴウ達のねぐらだ。権力者に踏み込まれたくない。
ゴウは、涙をたたえている新人に教えてやった。
『実はな、兎とはおれのことだ。お前は、おれを見つけた。良くやったな。』
新人のしょんぼりした様子は一転して、ぱあっと明るくなった。
『兎は、うさぎさん、だったの?ボク、分からなかった。ありがとう、うさぎさん。名乗り出てくれて、嬉しいの。』
ニコニコとゴウを見ている新人。
騙されて、裏通りから、路地裏まで案内されても、他人を責めないこの新人の清らかさが気に食わなくて、嫌がらせをしたやつがいるんだな、とゴウは思った。
『だから、帰っていいぜ。』
とゴウは言ったが、それを聞いて新人はまたしょんぼりしてしまった。
『連れて帰ってこれないなら、帰ったらだめなの。課題が終わるまでは、誰かに助けてもらうことも禁止なの。』
『兎探し人は、兎に仕事を頼めばどうだ?』
とゴウは提案してやる。
『兎に、一緒に来て、と頼んで、ついていった兎に報酬を支払うんだ。』
『ボク、今、お金持っていないの。』
と新人は悲しそうにした。
『朝、起きたら、なかったの。』
『は?』
ゴウは、さすがに驚いた。
『昨日はあったのか?』
『寝る前は、あったの。朝起きたら、全部なくて。同じ部屋の人も知らないって。指導員と引率には、信じてもらえなくて。課題をサボるために騒ぎを起こしただろうが、狙い通りにはいかない。課題は、今から始めろって。』
ゴウは悟った。
組織ぐるみの犯罪だな。
一緒について事務所かどっかに帰ったら、次の日には、この新人が殴り殺されているかもしれない。
金蔓から金をむしり取れる内は、生かしておくが、金を引き出せなくなったと分かれば、何をするか分からない。
今頃、新人から巻き上げた金で、全員呑んだくれているに違いない。
寝覚めの悪い話だ。
『兎に仕事を頼むのは、課題とは違う。依頼料を親兄弟に頼れないのか?』
とゴウが助言すると、新人は喜んだ。
『ありがとう。お父様かお兄様にお願いするの。』
『どうするんだ?』
助言はしたが、祖国の親兄弟にどうやって連絡をとるのだろうか?
『大丈夫なの。呼べば助けに来てくれるの。』
と新人は呑気に笑う。
そして、いきなり、叫んだ。
『お父様、お兄様。ボク、兎さんを雇って、お仕事を依頼したいのに、朝起きたら、お金がないの。助けに来て。』
『これで、大丈夫。』
と自信満々の新人。
ゴウは、箱入りが想像以上に頑丈な箱に入っているんだと知った。
呼んだら、来るって、なんだ?
新人が、世間知らずなのか、甘やかしまくったのか。
『いや、家の中、せめて、同じ敷地じゃなきゃ、だめだろう。』
とゴウは呟いた。
『時間はかからないけれど、待っている間、兎さんとお話するの。』
と懐いてくる新人。
ゴウは、なんかいい手はないかな、と考えながら、新人の相手をした。
ゴウ達のねぐらに新人を押し付けたやつの狙いは分かっている。
新人が殺された後に新人の死体をゴウ達のねぐらに投げ込み、ゴウ達を殺人犯に仕立てあげ、罪の減免をチラつかせて、ゴウ達を危ない仕事に放り込む。
ゴウ達は、裏社会の人間だが、足抜け出来ないほどのデカいヤマはやらない。
権力者に目をつけられないようにうまく立ち回ってきたが、どうやら潮時らしい。
酷使されて殺されるくらいなら、新天地も悪くない。
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