フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

574.総司令命令で、ボクのことは名前呼びしなくちゃいけないの。だから、二つ名なんて、気にしない。え?二つ名は、名前に入るの?

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ボクの職場には、姫という単語が飛び交っている。

男性しかいないのに。

これも、ひとえに、ボクの詰めが甘かったせいなの。

一昨日、総司令命令で、ボクのことを名前で呼ぶと決めたの。

一昨日も、昨日も姫の単語はボクの周りから消えていたの。

パタっと。

今日、ボクの二つ名が、姫になったとマーゴットに教えてもらってその時は、ショックを受けたけども、ボク、総司令命令で、ボクのことは名前呼びにしたから、誰も呼べないと気づいたの。

一昨日のボク、いい仕事をした、と自分を褒めていたの。

だけど、近衛棟に戻ってから、別働隊の隊員達が、姫、姫、と呼ぶの。

ボクのことは、姫とは呼んじゃだめなの、だって、総司令命令があるでしょ?って話したの。

そうしたら。

そうしたら。

二つ名は、名前と同じ扱いになるそうなの。

姫は、ボクのフィリスと同じ扱いになるから、名前で呼ぶという命令に従っているって。

一昨日のボク、名前で、じゃなく、フィリスと限定しておけば良かったの。

もう1度、名前をフィリスに訂正して総司令命令を出そうとしたら、短期間での内容の重複する命令は出せないって。

業務に関係ないから。

そういうわけで、ボクの呼び名は、姫になっているの。

一般隊員の間で、姫呼びが急速に浸透しているのは、ダンシェル、ロウウェル、レイモンドが、ティリリ王国での業務報告をしたときに、ボクを姫呼びしたのが、広まったのかしら。


近衛騎士団の団長、副団長、他の役付きと話を終えて、マーゴットも帰っていった。

ボクが、サブリーとユージュアルと近衛棟に戻ってきてから、姫の単語を何回聞いたかしら。

今朝のうちに、全員が二つ名について知っていて、いつ呼ぼうかと狙っていたら、ボクが引きこもっていたから、呼べなかった。

元気になってくれたから、呼べて嬉しいと言われると、呼んじゃダメとは言えないもの。

ただ、アンニュイなの。

「フィリス、仕事の話をするから、聞きなさい。」
とジーン。

「うん。分かったの。」

姫呼びは、お仕事じゃないもの。
いつかは、飽きると思うの。

こんなに呼んだら、満足して明日には姫という単語を使いたくなくなるかもしれないの。

若者の流行は短いと聞くから、きっと、すぐに廃れるはずなの。

ボクは、先輩だから、先輩として、余裕を持って待ってあげてもいいかもしれない。

『たくさん使って飽きたでしょ。大丈夫。ボクのことは、フィリスと呼んでごらん。』

きっと、これで解決。

今日の残りは、お仕事の打ち合わせ。

気持ちを切り替えて、会議室に行こうなの。

サブリー、ユージュアル、会議室に行くの。
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