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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

570.近衛騎士団の訓練所にて。マーゴットは、エンジン全開。まずは口撃から開始。

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只今、コーハ王国、近衛騎士団の訓練所。

広い場所というので、王城の応接室から移動してきた。

フィリスが15歳の成人の儀の後に拉致されて連れてこられた場所だ。

フィリスは、泣き止んだものの心が弱っているので、引き続き、ラウルが抱っこしている。

今日のマーゴットは軍服ではない。
王城に来ているので、上品なロングドレスを着ている。

サブリーとユージュアルは、怯えている。
ハーマルから一歩も離れまいと両腕にしがみついている。

「ハーマルお兄様。役者は、揃いました?」
とマーゴット。

「今、呼べる範囲ではね。」
とハーマル。

ハーマルの婚約者の公爵令息が、あちこちの人間を動かして、手配した。

「では、少々、外します。」
とマーゴット。
「サブリー、ユージュアル。お兄様と一緒に震えているだけで、お付きと呼べるのか。」

マーゴットは、訓練所の中央に歩いていく。

「言われちゃった。」
「言われたなあ。」
とサブリーとユージュアル。

2人とも反省しきり。

フィリスにとって、会話が成り立たない集団が、一方的に何かを強いてくることは、強いストレスになる。

会話の成り立たない相手など、あっかんべーして、嫌がらせを仕掛けるサブリーや、そもそも相手にしないユージュアルとは異なり、フィリスは真摯に相手に向き合おうとする。

生真面目で誠実に人と向き合う性質のフィリスは、真正面から容赦なく踏みにじってくる相手からすると格好の獲物。

自分が平気だから、と雑に流していたのは良くなかった。

自分達の怠慢のせい。

フィリスの繊細な心の表面をギザギザにしてしまった。

2人は反省し終わると、ハーマルから離れて、ラウルに抱っこされているフィリスの側へ。

「「フィリス、俺達、反省してきた。ごめんな。もう間違わない。」」

「うん。」
フィリスが泣きつかれてぐったりしながら、頷いたのを確認して、サブリーとユージュアルはフィリスの側に控える。

フィリスは、ラウルの抱っこから下り、ラウルにもたれかかっている。

マーゴットは、訓練所の中央に立った。

声に魔力を乗せて、訓練所中に響かせている。

「わたしは、ガラン子爵家当主ダルクの第5子マーゴット。フィリスお兄様の4つ下の妹。」

「先日、コーハ王国近衛の凋落ぶりを偶然目にする機会に恵まれたが、聞きしに勝るていたらく。」

「わたしの兄の安全が度々脅かされることを私は歓迎しない。」

「この10年あまりは特に、貴族学校上がりとその関係者を中心に近衛は不作続きの様子。」

「一流の近衛や親衛隊を知る機会にも恵まれず、低値安定。」

「底辺は底辺同士で群れて生きる群衆だから、集まりたがるのは仕方ない。」

「でも、コーハ王国の近衛は、兄と同じ近衛の制服を着ている。兄と同じ近衛を名乗る者が、底辺の寄せ集めだと、兄にしわ寄せがいく。」

「兄の助けになるならともかく、足を引っ張るばかりの人間が生きている意味は、どこにある?」

「今日は、役立たずが、生きていてごめんなさいをする機会を与えにきたわ。」

「死ななかったら、生き直してみるといい。」

マーゴットは、にっこり笑った。

「さて、今から、殺し合いを始める。いつでも、誰からでも、何人でもかかってきなさい。来なければ、こちらから行く。」

「殺し合いではあるけれど、武器を手放し、訓練所中に響くように魔力を声に乗せて、名前と降参を宣言して、内政担当の公爵子息の元に整列したら、生きて脱落してもいい。」

「手順通りに、公爵子息の元に辿り着いてはじめて、脱落と認める。手順通りではなかったり、公爵子息の元に辿り着くまでは、殺し合いは継続中。」

「殺し合いの方法は問わない。」

「始めましょう。」
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