フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
560 / 1,440
第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

561.公衆の面前で、憶測を事実のように語るのはよろしくない。語っている本人は、センティシブな内容でも、事実だから、問題ないと考えていたり。

しおりを挟む
「イクス・メラーを殺さないで、という理由は?」
とユージュアル。

「イクスは裏切ったんじゃありません。」

「イクス・メラーは、ティリリ王国の貴族子女を手引きしている。」
とユージュアル。

本人の許可も依頼もないのに、外交先の寝室に、外交先の貴族子女を斡旋して、いいわけがない。

イクス・メラーが斡旋先にしたのは、ラウル。
閨教育のお相手でさえ、細心の注意を払って選別されている男。

その血統ゆえに、出先で火遊びすることは一生ないだろう。

イクス・メラーのしたことを端的に表現すると、下の一文になる。

王弟を父に持つ侯爵子息に、全く関係ない派閥の伯爵子息が、勝手に外交先の子女をあてがおうとして、失敗した。

誰の差し金にしても、実行に移したイクス・メラーに未来はない。

ティリリ王国側がイクス・メラーに働きかけたのではなく、イクス・メラー側が条件に合う子女を探している。

イクス・メラーにメリットがないにも関わらず、自分から首をくくりに行っている。

イクス・メラーに関しては、動機が不明だった。

動機が分かる機会があるなら、活かしたい。

「だって、それは正しいことです。」
「必要なんです。」
と力説する4人の隊員。

「誰に必要?」
とユージュアル。

「勿論、ラウル様に。」
と自信満々な回答。

「何で?」
とユージュアル。

迷惑千万の間違いだとユージュアルは思う。

「ラウル様には、お似合いの女性がいるのに、不幸にも男にハマってしまわれました。女の良さを実感していただければ、ラウル様に相応しい出会いが。」

聞いたのはユージュアルだが、聞くんじゃなかったと、後悔した。

滔々と話している内容が、大変よろしくない。
憶測でラウルの下半身事情を事実のように公衆の面前で語りだす人間がいた。

「誰からの情報で、誰から頼まれた?」
とユージュアル。

さっさと切り上げてしまわないと巻き添えくいそう。

ラウルの結婚相手なんて、年齢の近いフィリップ殿下が片付かない限り、難しいだろう。

王子より王弟子息が先に片付いたら、王子の選択肢が減るではないか。

部外者のユージュアルでも分かることが、なんで分からないのか。

「こんなところで話す内容では。」
と言いよどむ。

したり顔で語ったラウルの下半身事情よりヤバい話題があるか?

「話さないなら、去れ。あと1人だ。さくっと終わらせる。」
とユージュアル。

「待って下さい。」
4人組が名前を出したのは、中央から遠ざかっている2つの公爵家の内の1つの家のご令嬢。

「なんで、その人?」
とユージュアル。

「公爵家のご令嬢と侯爵子息なら、問題ありません。」

「問題なかったら、もう婚約か結婚している。ご縁がないのは、そういうことじゃないのか?」
とユージュアル。

頭の悪い手下を野放しにするような主人をラウル姉はお気に召さない。

「ご縁と言いますが、ラウル様のお父上様は、社交にあまり出られません。お母上様には、あまりにご多忙。姉上様におかれては、野蛮すぎて、お話になりません。」

ラウルと姉は仲良しなので、年の離れた姉のことを悪く言ってはいけない。
ラウルと仲良くなりたいなら、守らなくてはならない基本のお約束だ。

ラウルと仲良くなりたいの?
ラウルに喧嘩を売りたいの?

全然、意図がわからない。

あと、俺を巻き添えにするなよ。

とユージュアルは心の中で、顔をしかめる。

「ラウル様が女性ではなく、男性をお求めになられるのは、女性の鑑のようなご令嬢に恵まれなかった生い立ちのためで。」

「イクスは、ラウル様の目を覚ます使命を果たすために動いたのです。」

「ラウル様に、女性の鑑のようなご令嬢と幸せになっていただきたい一心で、行ったことです。」

「裏切りではありません。」

「その計画は、誰が考えた?」
とユージュアル。

「5人で。」

「イクスが実行した理由は?」
とユージュアル。

「5人の中で、伯爵家はイクスだけなので。」

「なので?」
最後まで、まとめて喋ってしまえよ、とユージュアルは心の中で呟く。

「侯爵家のラウル様にお声をかけるには、伯爵家のイクスがよいと考えました。」

「親しくもないのに、伯爵家から、侯爵家に声をかけるのか?」
とユージュアル。
「不興を買うだけだろう。」

「それは、よくわかりません。」

「分からないなら、話は、終わり。やってしまおう。」
とユージュアル。

「殺さないで下さい。」

「イクス・メラーは失敗して、公爵令嬢との出会いもなくなった。なんで、生きていて欲しいんだ?」

「出会いは、まだこれからです。女性と生きる喜びは、ご令嬢直々にラウル様の元へ向かいますから、大丈夫です。」

「ますますイクス・メラーは、いなくてもいいように聞こえる。」
とユージュアル。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

処理中です...