フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

547.フィリスは、権力を握れる実力を身につけたい。マーゴットは『刺客を送り付けた相手と生きて会えて、嬉しい?』と殴り込みに行っている。

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ボク、最初は、ミーアーニ王女殿下と魔法使いの能力を消すつもりだったの。

残念なことに、今、あの2人の能力をボクが消すとよろしくない状況なの。

ハーマルお兄様に切り込んでもらうのが、1番、ボク達に害がない。

分かっては、いるの。

ボクが、すっきりしないだけ。

ボク、実力を見せつけて、権力を握る。

ボクとボクの大事なものを好きにさせないために。

それにしても、マーゴット、どこに行ったのかしら?



マーゴットと親衛隊は、ティリリ王国の王城への隠された入口を突破。

「ごきげんよう。刺客を送りつけた相手と、生きて会えて嬉しいでしょうね?」
禍々しいナニカに乗ったまま、乗り込んでいったマーゴット一行は、攻撃を仕掛けてきた者を赤黒い炎に包みながら、進んだ。

目的の人物にたどり着いたので、マーゴットはご機嫌。

「わたしに刺客を送り付けてくるとは。明日の朝を迎えるどころか、今晩の月を見ることもかなわない覚悟はあるわね?」

「ふざけた真似を。生きて帰れると思うな。殺してやる。災厄をもたらす化け物め。」

「何をしていたか、素直に手際良く話せば、辞世の句を詠む時間くらい待つ。」
とマーゴット。
「話す気がないなら、全部なかったことにするけど、どうする?」

マーゴットが話す間も、禍々しいナニカは、自由に赤黒い炎を吐いている。

「そいつを止めろ。」

「聞こえない。」

「話す気があるなら、の間違いじゃないか?」

「雑なお喋りはいらない。」

マーゴットは、赤黒い炎の中で微笑む。

「今日の夕焼けを拝むことを諦めた?」
とマーゴット。
マーゴットは、禍々しいナニカが吐き出す赤黒い炎の中でも涼しい顔。

「話題の技術者は、どこに?」
とマーゴット。

「誰が、お前らなんかに渡すか。」

「あら、もういない?独占と漏洩前に消した?」
とマーゴット。
予想していたので、淡々としている。
「仕事が早いこと。」

「その技術、他に手に入れたのは、どこ?」
とマーゴット。
「誓約で話せない?」
鼻で笑う。
「破って話してみたら?結果は同じ。」

「俺達を殺す気か?化け物には、人の心などないのか?」

「短絡的。死体が増えるのは、わたしのせいじゃなく、愚かな誓約のせいでしょう。」
とマーゴット。
「話す気がないなら、交渉は決裂。」

「やれ。」
とマーゴット。

マーゴットの号令に、禍々しいナニカは、王城内で赤黒い炎を吐き出しながら、移動する。

マーゴットの乗った禍々しいナニカだけではなく、親衛隊の隊員が乗っている飛翔体も、目につくもの全てに、赤黒い炎を吐きながら、飛んでいる。

マーゴット達がいる一画が王城から切り離された。

延焼を懸念して、封鎖したらしい。
「王城のメインと、暗部の一画のここを切り離したか。」
壁がせり出してきた。
「区画ごと隠蔽する、と。」
マーゴットは、飛翔体に床を示した。
「わたし達は、地面の下を見る。」
飛翔体は、地下へと、すいすい飛んで降りていく。
「建物で見えないように隠した、というところ?」
マーゴットは、幾重にも封を重ねた空間をこじ開ける。
「後で掘り直して使いたい気持ちが、全部を消失させなかった、わけね。」

台座に置かれた、装飾のない木製の箱の中には、装飾のない金色の器と金色のスプーンが並べてあった。

「素手で触れないように。」
とマーゴットは、親衛隊に指示。

「適合者以外は、触ると呪われて、腐り落ちる。」

「【神々の子どもたち】の土地で使用されていたはずの呪具。」

「使いこなせるのは、【神々の子どもたち】とその加護や許しを与えられた人間のみ。」

今の世で、その呪具を正常に扱えるのは、フィリスお兄様を含めて、【神々の子どもたち】の土地から生還した3人。

マーゴットの婚約者の皇弟。
旧家の公爵家のご令嬢。
マーゴットの兄、フィリス。

お兄様へのお土産に。

マーゴットは、ブツを木箱に入れたまま、空中に浮かせて運ぶ。

上空に待機していた親衛隊が、建物の地上部分を外側に倒壊させた。

マーゴット達は、何事もなく、地上に生還した。
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