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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

537.決闘開始したら、邪魔が入ってきた。『その2人、仕事しないとおまんまの食い上げなんで。怪我したくなかったら、退いてもらえますか?』

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「何にも問題ないの。」
魔法使いったら、何を言い出すの?

「問題なら、あるに決まっている。決闘は、魔法とか、剣を使うんだ。叩くのは決闘とは言わない。」
と魔法使い。

「魔法使いもミーアーニ王女殿下も、魔法と剣で戦わないんだから、素手でいいの。」

「あんた、近衛だから、ぼくより強いだろう。」
と魔法使い。

「ボクの方が、魔法使いより、強くて偉いの。よって、この決闘は素手で行うとボクが決めたから、素手なの。」

魔法使い、話してばかりいないで、反撃してほしいの。

セドリックに踏み込まれる前に!

「ぼくの防御魔法じゃ、決着はつかないし、あんたは負けるしかないもんね。」
と魔法使い。
「負ける気はしないから、受けて立つ。」

よく言ったの。

セドリックが、シュクナにボクを確保する指示を撤回した気がするの。

後ろは、見てない。

振り返って、目があったら、困るから、後ろは見ないようにしているの。

「決闘の前に、仕事してくださいよ。」
と5人の男が近づいてきた。

文官じゃない。

近衛でもない。

軍人の平民兵士とも違う。

上流階級に慣れているけれど、上流階級の一員ではない。

服の上から見る限りでは、鍛えているけれど、近衛タイプじゃないの。

花形のお仕事ではなく。

表に出ないお仕事の方々かしら?

もしくは、私兵?

「誰?邪魔しないの。決闘中よ。」

「邪魔しているのは、お宅様ですよ。」
と5人組の1人。

「この2人は、仕事をしないとおまんまの食い上げなんですよ。」

「弱っちいとは、聞いていましたが、キャットファイトもろくにできないんですね。」

「平手でペチンペチンですか。あまりにか弱くて、口をはさむのが遅くなりました。」

決闘中に、話しかけないで。

「口をはさまないで、見ていたらいいの。キミ達、決闘を中断させているのよ?」

「おお、偉そう。口だけは一人前だ。戦いどころか、喧嘩も出来ないくせに。」

「決闘なんて、野蛮なこと、どうせ出来ないんでしょうが。」

「試合もろくに出たことがないんでしょう?応援席に座っているだけで褒めてくれるギャラリーなんか、ここにはいない。怪我する前に退いてくれませんかねえ。」

とても失礼。
はっきり言わないとだめな方々には、はっきりとね。
「この2人とボクは、決闘中なの。邪魔なのは、キミ達。早くあっち行って。」

慇懃無礼な5人の男は、慇懃さを取っ払った。
「退かないんですか?面倒だな。」

「わがまま姫と言うだけはある。言うことを聞きやしない。」

「男5人に口喧嘩で済むと思っているのが、お姫様だなあ。」

「しかも、言うことは、全部聞いてもらえると疑っていないなんて、どれだけ甘やかされているんだか。」

「姫と呼ばれて、喜ぶ男なんだ、そんなもんさ。」

男達は、笑い合ってから、ボクを見た。

「素直に退いた方が、泣かなくて済みますよ。お姫様。」

「痛い思いは、したくないでしょう?」

「怪我したら、だめなんですよね?知っていますよ。」

腕を回したり、関節をゴキゴキ鳴らしたり。

「ボクに何かするつもりなの?」

この5人の男達、ボクを袋叩きにしてやろうと話していた近衛と同じ表情なの。

「お姫様が、素直に言うことを聞けないわがまま姫じゃない、と分かれば、何にもしません。」

ボクのお姫様の日は、終了したから、お姫様と呼ばないでほしいの。

わがまま姫も、相変わらず、使っているのは、どうしてなの?

「ボクが、キミ達の言うことを聞くんじゃなく、キミ達がボクの言うことを聞いて、遠くに行っていれば済むの。」

「早く、この場から、いなくなって。決闘の邪魔しないで。」

「チッ。素直じゃねえなあ。」

「力づくかあ。」

「可愛いポジションは、誰にでも通用するわけじゃないんだわ。わがまま姫。」

男達は、5人のうち、4人で取り囲んで、1人がボクに手を伸ばしてきた。

男達の意図は分かる。
逃げたら助かることも、分かる。

でも、ボクは逃げない。

決闘を始めたのは、ボク。

ここで、逃げると、ボクが守りたいものを投げ出すことになる。

だから、逃げない。

それに、簡単にボクをどうこうさせないから。
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