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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

532.『ボクじゃなくてボクの妹が殺れば、確実って?期待する相手が違うでしょ?ボクの妹の善意を自分勝手に利用しようと考えないでくれる?』

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「来たぜ。」
本隊からの知らせに急いで、向かう。

「2人とも、いる。」

マーゴットを探して、今から行くけど、見えない場所にいるように念を押す。

「お兄様の仰せのままに。」

ミーアーニ王女殿下と魔法使い、2人とも、ボクに引導を渡されなさい。



ボクがミーアーニ王女殿下と魔法使いを引き受ける話を本隊のグループリーダーが、本隊の隊員達に伝えた後。

ボクじゃなくて、マーゴットが殺れば、確実で早いのに、と本隊から声が上がったの。

ボクが、戦闘向きじゃないのは、よく知られている。

絶対また泣かされるんだから、妹に頼めば、って。

ボクが出張ったら、二度手間になるだろう、て。

それを知って、すぐに本隊と別働隊の全員の前で、話をした。

総司令の命令で。

『ボク達が、近衛として請け負った仕事先に、たまたまボクの妹が立ち寄った。ボク達の近衛の仕事を居合わせただけのボクの妹に押し付けることは許さない。』

『ボク達コーハ王国の近衛の命。
近衛交流会のお姫様救出ゲームで亡くなった命。
ミーアーニ王女殿下と魔法使いの命。
どれも、ボクの妹が背負う必要のない命だ。』

『ボクを守るために手を差し伸べたボクの妹を自分勝手に使えると夢想するな。』

『ボクを守るため、だけがおかしいって?』

『恥も感謝もなく、ボクの妹に守ってもらおうと考える近衛の存在がおかしい。』

『守られたいなら、どうして戦闘職に就いた?』

『どうして、ボクみたいに戦えないのが、近衛なんだって?』

『分からない?』

『単純明快。』

『ボクが必要とされたから。』


言い出した本隊の若手とは、個人的にも、仕事上でも、付き合いがない。
ボクが近衛になった経緯を知っているのは、中枢にいる人間に限られる。

本隊のリーダーは知っている。

本隊のグループリーダーは、知っている人と知らない人といる。

その下は、知っている人は、知っていて、知らない人は知らない。

現場に居合わせた当主から、言い含められている者は真相を知っている。

王家と王子の不祥事だから、真相は公言されていない。

結果として。
ボクが、近衛になった経緯が、完全に秘されている状態だから、色んな噂が立つ。

『王子と王弟子息と王の従兄弟の子息を誑かして、戦えないのにわがままを通して近衛になり、戦えないから、周りに平気で守らせている。』
この噂が1番出回っている。
事実だと誤認している人もいる。

コーハ王国の近衛は、貴族学校の近衛養成コースを修了している人も、いない人も、近衛の入団試験を合格後、研修を修了した者から、現場に出る。

ボク、近衛になった経緯が特殊だから、同期がいない。

近衛に成り立ての未経験な15歳が、フィリップ殿下の護衛筆頭という肩書きを持っていたら、怪しさしかない。

近衛としての優秀さもないのに、近衛を名乗るなんて、恥知らずだと、憤りを感じるみたい。

真相を知らない人も、知っている人も、ボクが近衛の価値を貶めることを警戒しているの。

ボクは、ボクの納得いくやり方で近衛であり続けるわけだけど。

ボクが、足りないなら、妹にやらせれば、なんて、お門違い。

ボクは、きっちり仕事をしてくる。
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