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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

513.「今から、兄として、カッコいい姿をご披露するからね!」「お兄様が、危ないことをなさる必要はございません。わたしにお任せください。」

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上空一帯に広がる不穏な影。
飛翔体に埋め尽くされた空。

「どこの新手か。」
とセドリックが呟くより、早く。

「マーゴット。遊びに来たの?」
とフィリスの嬉しそうな声が響き渡った。

遊びに来た?
そんなわけあるか?
とセドリック。

ガラン子爵家の当主と嫡子デヒルは想定していたが、まさかの妹。

しかも、全員、武装している。

ご当主か、デヒルの差し金だろう。

「今から、兄として、カッコいい姿をご披露するからね!」
と張り切るフィリス。

たちまち。
飛翔体のうち、20体がおりてきた。

その1つから、赤い生地に金の飾りのついた軍服をきた少女がおりたち、5人が少女の周りを固める。

兄と同じ茶色の髪と瞳の少女は、ウキウキしているフィリスの元に颯爽と歩みよる。

「お兄様が、危ないことをなさる必要はございません。」
とマーゴットは、兄の両手を握った。

「わたしにお任せください。」
マーゴットは、言うやいなや、フィリスの手を赤い軍服の2人に渡す。

「マーゴット、待って。ボク、ボクね。」
と呼び止めるフィリス。
「丁重に。」
とマーゴット。

「御意。」
「フィリス様は、我々と。」

「え、でも、マーゴットが。ボク、お兄様だから。」
いいところを、活躍するところを見せて、お兄様、素敵と尊敬されるの!

フィリスは慌てて、マーゴットを追いかけようとするが、阻止された。

「フィリス様。マーゴット様は、フィリス様にお待ち願っていらっしゃいます。」
「妹さまのお願いをどうぞお聞き届けくださいますよう。」

フィリスの両腕をがっしり固定しつつ、言葉遣いは大変丁寧。

「分かったの。でも、一緒にいる。ボクは、お兄様だから。」
とフィリス。

「ご立派でございます。我らがお供します。」

フィリスは、両腕をがっしり掴まれながら、マーゴットの隣に立った。

「フィリスお兄様。ここでは、どのようなお仕事でした?」
とマーゴット。

フィリスが近衛の制服を着ているので、お仕事していると認識してくれた。

フィリスは、とても、嬉しい。

今こそ、職場で出会った妹に、兄のよく出来たところを話したい。

はたっと思い返す。

でも、ここに来てから、ボク、近衛のお仕事していたかしら?

隊員の体調管理はしたけど、人に話すことでもない。

フィリスが困っていると、マーゴットは助け船を出してくれる。

「お聞きするのは、今日、今、ここでのお仕事に絞りましょう。」

「お兄様のお仕事は、多岐にわたるものですから。」

「お聞きしていたら、日付が変わってしまいますね。」
とマーゴット。

しょげていたフィリスは、復活。

さすが女帝。姫くらい余裕で転がせる。

4つ上の兄は、妹の掌で一喜一憂である。
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