フィリス・ガランの近衛生活

第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ？

512.決め台詞の事前練習は、大事。「我が名は、フィリス・ガラン。地獄の蓋を開けて、舞い戻りし正義の代行者なり。いざ、尋常に勝負！」

「セドリック、シュクナ、レイモンド。シュクナが姫役を確保しているのね。セドリックが戦闘を担当して、レイモンドは、警戒とシュクナの護衛。」

フィリスは、風に乗って聞こえた声から、状況を読み取った。

「歩いて真正面から行くのが、1番目立つかしら。」

土の魔法を止める。

ラウルのお姉様と練習した台詞を今こそ。
「我が名は、フィリス・ガラン。地獄の蓋を開けて、舞い戻りし正義の代行者なり。」

「いざ、尋常に勝負！」

声に魔力を乗せて、戦闘中でも、明瞭に聞こえるよう、音量最大。

フィリスの堂々とした名乗りは、ティリリ王国勢の背中から響き渡り、コーハ王国側のセドリック、シュクナ、レイモンドにまで届いた。

レイモンドが呟く。
「姫の要素、どこにいった？」

「1人で、戻ってきた、ということは、道中、何か起きましたね。」
とシュクナ。

「うちの姫が暴れると、もっと凶暴な連中がしゃしゃり出てくるだろうが。何してくれてんだ！」
と怒るセドリック。



そのとき、
凶暴な連中は、上空にいた。

揃いの赤い軍服姿の男女。

一帯の偵察を終えたマーゴットは、一言。
「フィリスお兄様、後先全く考えませんでしたね。」

「これ以上、フィリスお兄様にウフフアハハさせては、面倒。」
とマーゴット。

「このまま、降下し、制圧と同時にフィリスお兄様を確保する。」
とマーゴット。

「お兄様のお付き2人が、いない。探して、両名を確保せよ。行け。」
マーゴットの命令で、滞空していた赤い軍服の集団は2つに分かれた。

マーゴットと赤い軍服集団が乗っているのは、神獣パパランではない。

もっと禍々しい。

フィリスの台詞ではないが、地獄の蓋をこじ開けて、引きずり出したかのようだ。

「さて、新しい手下。練習成果を見せよ。」
とマーゴット。

「降下。」
禍々しいナニカに乗った赤い軍服集団は、急降下していく。

赤い軍服集団は、急降下しても、隊列を乱すことなく、姿を現した。

「制圧せよ。」
とマーゴット。