フィリス・ガランの近衛生活

第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ？

506.平凡地味が、10年後には、男の魅力になっているといいな。異動のない職場なので、職場内の恋愛トラブルはノーサンキュー。

「平凡地味男。」
ユージュアルを見た魔法使いの第一声である。

いや、お前も平凡地味じゃん？

と、ユージュアルは思う。

それに。
ダンシェルやロウウェルと並ぶと見劣りするけど、見劣りしない人間の方が少ないのだから、張り合うところではない。

俺の見た目と中身を好いてくれる女のコ探しは、まだ終わってない。
と、ユージュアルは思っている。

ユージュアルの人生の最盛期は、まだ先だから、今が平凡でも地味でも構わない。

10年くらい経ったら、平凡地味は、きっと男の魅力にかわっていることだろう。

期待で胸がふくらむ。

「俺の後輩に手を出して、無事に済むとは、思ってないだろうなあ。」
とユージュアル。

「幼馴染の次は、先輩？どれだけ、魅力を振りまいているんだ。」
と魔法使い。

「意味がわからない。」
とユージュアル。
勝手に三角関係を四角関係に拡大しないでほしい。

後輩2人と恋愛トラブルなんて、勘弁してほしい。

異動のない職場なのに。

「先輩の立場を使って、後輩にいやらしいことをするんだろう。セクハラ野郎め。」
と魔法使い。

「したことも、されたことも、俺はない。」
とユージュアル。

ダンシェルとロウウェルは、休憩しながら、無言でユージュアルの背中を見ている。

ユージュアルは、男にセクハラする発想がそもそもない。

女のコには紳士的だが、相手にされない。

ただ、一部、男性陣から、視線を送られたり、男性陣の意を汲んだあたりから、探りを入れられている。

ユージュアル本人は、気づいていないが。

第3王子の側近周辺が動いているので、コーハ王国の貴族子女は軒並み、ユージュアルに関しては、どうぞどうぞ状態。

麗しきかな、譲り合い精神。

第3王子の側近が動いているのは、政治的な意味もある。

ガラン子爵家の嫡子デヒルは、王太子と懇意にしており、ガラン子爵家当主の3男ハーマルは、王太子派の公爵令息と結婚秒読みと言われている。

4男フィリスには、第4王子がご執心。

フィリスのお付きのサブリーとユージュアルを、第2王子派と第3王子派で、抑えておく下地作りは、既にできている。

サブリーとユージュアルが、恋愛に対して夢見がちな幼さを残しているので、様子を見ながら、国の中枢が調整している。

サブリーとユージュアルの知らないところで。

どうして、相手に男性が選ばれたか。

男性人気が女性人気を余裕で上回り、人選の余地があったからに他ならない。

サブリーとユージュアルの希望など、誰も聞く気がない。

サブリーとユージュアルが気付くのは、逃げられなくなってからだろう。

ユージュアルに庇われながら、2人は、体力の回復に努める。

ダンシェルとサブリーへの包囲網を魔法で一瞬にして消し去ったユージュアルは、疲れた様子がない。

ユージュアルは、フィリスとサブリーと一緒に遠くに連れて行かれたはず。

でも、疲れた様子を見せずに、後輩を助けにきて、守ってくれている。

ダンシェルとロウウェルの中で、ユージュアルの株が上がった。