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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

501.姫は、お世話役の目の届かぬ場所でのびのびさせてはいけない。予想の斜め上を三段跳びしていくからだ。

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妹が出撃準備をしていることなど、つゆ知らず。

フィリスは、神気を漏らしながら、追いかけっこをしている。

「見つかってしまったの。」
と言って、背を向けて歩いていくフィリス。

「山を崩したのは、お前か?」
と聞かれて、
「形あるものは、いつか壊れるもの。世の無常よ。」
と答えているフィリス。

「お仕事を辞めなかったのね。命が惜しくなかったのね。」
とフィリスは微笑んだ。

ぬかるんだ足場は、たちまち底なし沼へ。

追手達は、ズブズブと沈んでいく。

追手達の体が胸元まで浸かると、沈むのが止まった。

「証拠の確保は大事なの。」

「保存せよ。」
と底なし沼に魔法をかける。

遠慮も自重もない。

人目につく心配がないので、フィリスは、思うままに力をふるう。

ティリリ王国の近衛の制服に身を包んだ、平民の兵士達は、証拠物件として、底なし沼に固定された。

兵士達の阿鼻叫喚など、どこ吹く風。

壁は、乗り越えるまでは高い。
小さい壁でも、1度乗り越えると、心理的な抵抗が減る。

壁を乗り越えれば乗り越えるほど、ためらいは薄れ、心の呵責を感じにくくなる。

滅多に放し飼いにされないのに、飼い主がリードを忘れてしまい、駆け出していく犬のように、フィリスは自由を謳歌していた。

人は、15分かそこらで山を3つも崩さない。

そして、山を崩して、足りなかったかしら?と不安になっている場合ではない。

崩したのが、自分だと、アシがつかないようにしなくては、怪しまれる。

しかし、フィリスは生来の姫気質。

姫気質は、世話は焼かれてナンボ。

姫というのは、お世話役の目の届かぬ場所でのびのびさせてはいけない。

予想の斜め上を三段跳びしていく生き物だ。

迅速に捕獲して、リードをつけねばならない。

マーゴットのいち早い到着が待たれる。
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