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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

493.姫は、下々の話にも耳を傾けてくださる。『話に割り込んでくる人は、寂しい気持ちを表すのが下手なの。仲間に入りたくなったら、言うのよ?』

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「俺の話を聞きたい?」
割り込み男が威嚇してくる。
フィリスはどこ吹く風。

「話に割り込んでくる人は、話を聞いてほしいことが多いの。」
こんこんと説明するフィリス。
「寂しい気持ちを表現するのが下手だから、言い方がキツかったり、ぶっきらぼうになるの。」

「さあ。どうぞ。」

「慈善活動か?」
鼻白む男。

「話したくないの?
ボクが、おんぶの方とお話を続けるけど、仲間に入れて欲しくなったら、さっきみたいに、話を中断してごめんね、の気持ちを話してからにすること。分かった?」
姫は、無理強いなどしない。

「話にならねえ。」
割り込み男は、そこで話すのをやめた。

「さあ、おんぶの方。お話しましょ。おんぶの方は、今のお仕事を始めて、どのくらい経つの?」
とフィリス。

フィリスの話を聞いて、おんぶ男の勢いはおさまったようだ。
「10年は経ったな。」
とおんぶ男。

「前は違うお仕事していたの?」
とフィリス。

「まあ、そうだ。」

「今のお仕事に満足しているの?前のお仕事より。」
とフィリス。

「まあな。飯が食えて、屋根の下で眠れる。」

「ましになったけど、満足じゃないのね?」
とフィリス。

「不満が1つもない仕事なんて、ねえよ。」
とおんぶ男。

「今の仕事のためなら、死んでも悔いはない?」
とフィリス。

「死にたくは、ねーな。」
とおんぶ男。

「でも、辞めないの?」
とフィリス。

「他の仕事よりはずっといい。」
というおんぶ男の声には、実感がこもっていた。

「生きていること、と引き換えにしてもいいくらいに、今の仕事を続けたいと思わないなら、ボクは、今すぐ辞めるのをすすめるの。」
とフィリス。

「何でだ?」

「今の仕事を辞めないなら、今日が、人生、最後の日になるの。」
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