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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

474.1番恐ろしいのは、だあれ?

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近衛別働隊が、ティリリ王国、特にミーアーニ王女殿下の要請を全ての蹴り飛ばしている件で、本隊が話を持ってきた。

「身内を売るなら、死にに来い。」
とセドリック。
「売らないよ。闇討ちは勘弁してくれ。」
近衛本隊のリーダーを任されているのは、セドリックとは、別の侯爵家の若者だ。

世間話をするかのような気楽さで向かい合う。

「話を聞いて、証拠もどっさり。凄まじいね。」

「ミーアーニ王女殿下は、社交界での立ち回りがうまく、そちらから接触をはかってくるよ。」

「圧力をかけてきたところで、痛くも痒くもない。」
とセドリック。

「出国できないようにする算段らしい。」

「分かった。対応しよう。別働隊は、本隊へ協力を要請する。」
とセドリック。

「引き受けよう。」

「『姫に悪意を持つ存在は、許容できない。』と真顔で言うセドリックの隣で普通の顔していたオレを褒めてほしいくらいなのに。」
と若者はおどける。

「ミーアーニ王女殿下は、だいたい、いつも同じ手口のようだ。重婚文化で育ってきたが、王女自身が誰かと伴侶を共有するのは好まない。それが未婚の理由だ。気に入った男に恋人がいれば、恋人に圧力をかける。」

「ミーアーニ王女殿下は、ラウルとなら結婚してもよいと周囲に仄めかし、ラウルと結婚したら、重婚の慣習を軽んじないと話して回っている。同時に、恋人とよりを戻したい者たちを咎め立てはしない、と。」

「周りにやる気を出させたのか。」
とセドリック。

「そういうこと。」

「そもそも、ラウルに、国外の相手とどうこうする未来はない。」
とセドリック。
「それを無理やり曲げて、未来を作ろうとしている。」

「無体なことをしない賢さがあればいいが、無理か。」
とセドリック。
「ラウルが自刃する羽目にでもなったら、フィリスが泣いて、お父上が飛んでくるぞ。」

「兄上じゃないのか?1番上の。」
と若者。

「ガラン子爵家で、1番怒らせてはいけないのは、ご当主だ。」
とセドリック。
「慈悲を期待できない。」

「唐突だな。」

「フィリスはラウルを信頼して心を預けている。」
とセドリック。
「ご当主は、4男の環境が損なわれることを好まれない。」

「フィリスがご当主に頼ったら、ご当主は一切の手加減なく、手を打つ。どこぞの二の舞いが増えるぞ。」


「分かった。姫の笑顔を曇らせることなかれ、だな。」
と若者。
「ミーアーニ王女殿下とフィリスは相容れないから、心底気に食わないんだと思う。」


「輩と真正の姫じゃ、世界が違いすぎる。」
とセドリック。

「ヤカラって。」


「よくよく心得て動かせ。ぐずついているやつは、すぐに性根を叩き直せ。こっちの足を引っ張って、諸々無事に済ませられると思うなよ?」
とセドリック。
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