フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第5章 コーハ王国の近衛には、わがまま姫がいる。フィリス・ガランという子爵家子息。コーハ王国のイイ男を侍らせて、手玉にとっているらしいよ?

435.ラウルとセドリックが名乗ったら、移動じゃないの?どうして動かないの?うん?わがまま姫、ツラを見せろ?『姫』はここにはいませんが。

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近衛別働隊の挨拶は、ラウルから。

ラウルが微笑むと、歓声が大きくなった。

「ラウル・ミストル 25歳。
ミストル侯爵家の長男。
近衛騎士団の入団は16歳。

近衛別働隊の幹部と
第4王子フィリップ殿下の護衛筆頭を兼任している。」

名乗りが終わると、また歓声があがる。


ラウルの次は、セドリック。

「セドリック・クイーンベル 21歳。
クイーンベル侯爵家
近衛騎士団の入団は17歳

近衛別働隊の幹部。」

ラウルの歓声は、女性が中心だった。

セドリックには、雄々しい雄叫びが広がっている。

2人は、男女で人気を二分しているようだ。

「以上。」

挨拶を終わらせたら、次の段取りが待っている。

さくさくと移動だ。

あれ、移動は?

移動しないの?

フィリス達は、聞いていた予定と違って、顔を見合わせる。

何かトラブルでも、起きたのかしら?

ティリリ王国側は、ラウルとセドリックだけで名乗りを済ませたことが、不満なようだ。

「おいおい、こんなに楽しみにしているやつが揃っているんだ。人気者はどこだよ?」

「最高のお楽しみ。最後の目玉。」

「来ているんだろう?こんだけの人間が、お前のツラを拝みにきているんだ。出てこいよ。」

「わがまま姫。」

しーんした。

フィリスは、わがまま息子と呼ばれたら、返事してもいいと思っている。

姫が、余計。

姫、と呼んで、はい、と返事して欲しいなら、王女様に呼びかけたらよいのだ。

フィリスは、姫の呼称を認めていないので、堂々とやり過ごしている。

『フィリス・ガラン 23歳。
ガラン子爵家
近衛騎士団の入団は15歳

近衛別働隊の総司令(20歳から)

第4王子フィリップ殿下の護衛筆頭 兼任。』

名乗ったら、こんな感じになるだろうけれど、必要がないので、出ていかない。

わがままなのは、フィリスらしさの表れ。
フィリスは、わがままとよばれることに関して言うと、特段、問題だと感じていない。

ボクは、わがままですが、それが、どうかしましたか?

ボクは、わがままなんです。

フィリスの心の中はサラッとしている。

今は。
まだ、終わらないのかなー。
と他人事のように待っている。

サブリーとユージュアルは、近衛だが、実態は、フィリスのお付きとして、入国している。

はっきり言うと、ラウルやセドリックの名乗りが歓声に包まれたような歓迎の空気は霧散している。

スキャンダルまみれの1人の男をよく見えるように引きずり出し、全員で笑い者にしてやろうと目論む醜悪な空間に様変わりしていた。


サブリー・ベイモン 22歳
ベイモン男爵家
近衛騎士団入団は18歳

ユージュアル・ノア 21歳
ノア男爵家
近衛騎士団入団は17歳


サブリーもユージュアルも、いつもは、ヘラヘラしているが、キリッとしなくちゃいけないときは、ちゃんとする。

もし、フィリスを引きずり出すような所業をするやつがいたら、
2人はためらわない。


レイモンド、ダンシェル、ロウウェルの3人も1年目のときのようにうろたえたりしない。

レイモンド・チャスティー 20歳
チャスティー男爵家
近衛騎士団入団は16歳

ダンシェル・ロナウ 19歳
ロナウ男爵家
近衛騎士団入団は15歳

ロウウェル・ミミット 19歳
ミミット男爵家
近衛騎士団入団は15歳

3人は、後ろにいるフィリス達が落ち着いていることにいち早く気付いていた。

フィリス達が落ち着いているなら、問題はない。

レイモンド、ダンシェル、ロウウェルも、穏やかでいられる。

さて、先頭は、どうするだろう?
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