フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

309.『貴方の大切な人は、わたしと貴方様の弟のどっち?どっちといるのが楽しい?』と妻は聞く。両方、庇護下にいる。なぜ、比べたがる?

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賢いフィリスは、デヒルが疲れてくると、わがままを言って、休ませようとしたり、兄の仕事を減らそうと、しがみつきながら、人手を集めてきた。

『ボクは、早く、お父様と、デヒルお兄様の助けになりとうございます。』
とはにかむフィリスは、父やデヒルの執務室によく見られた。

小さな自分が、何か1つでも、助けられることはないか、と全神経を傾けるフィリス。


デヒルの妻になる領民の選抜は、デヒルが成人前に終えており、先代当主夫妻の帰領を待って、盛大に発表し、領地あげての祝い事になる予定で、数年かけて調整していた。


しかし、先代当主である祖父の喪に服すためと、デヒル自身が領主代理として忙しくなったこともあり、デヒルの結婚は1年延期が決まった。

結婚までの1年。デヒルは、将来の妻よりも、弟妹、特にフィリスと過ごす時間が遥かに多かった。

その後、デヒル結婚してからも、父を助け、父に並ぶべく、仕事に邁進していた。

デヒルが仕事をする間、フィリスが常に側にいた。

近くにいなくても、同じ部屋で、互いの存在が分かる位置には、必ず。

可愛い弟は、いつも、自分ができるデヒルの助けになることを見つけようと張り切っていた。

面倒な来客の対応を代わろうとしたり、兄の健康を気づかったり。

あの頃、末弟と過ごした時間は、妻と過ごすより遥かに多かったと思う。

その当時のことを今、考えてみても、ベストな選択だった。

ただ、1つだけ予想外の事態を引き起こした。

後々、妻が感情を拗らせるきっかけになるとは、その時のデヒルには想像もつかなかった。

『妻のわたしとより、弟様とお過ごしになる方が楽しめますか?』

ある時、妻から聞かれた。
デヒルにとってみれば、妻と弟の位置づけは重ならない。
自分の庇護下にあるという意識は同じだが、一緒くたにする理由もない。

『妻は1人。弟は3人。妹は1人。皆、私が面倒をみているが、同じ扱いはしていない。問題があったのか?あるなら、話してみるといい。』

妻は、いいえ、と答え、その話題は暫く出なかった。

デヒルと妻の間に、子どもも生まれて、何の問題もなく、時が経った。

フィリスが12歳になり、フィリップ殿下の面倒事回避のため、学校に行かず、領地で成人まで過ごすと決めるまで。

問題の芽は、ずっと妻の心にあったが、夫と子どもに恵まれた日常の中、眠っていたのだ。

義理の弟フィリスが、幼児ではなくなり、夫デヒルの横に信頼されて並ぶ姿が、妻の中に燻り続けていた感情を再び揺り起こした。
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