フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

308.その仕事に覚悟はいる？その覚悟は、誰のため？命の危険がある仕事だと知っていたら、本人も志願しなかったし、志願させなかったのに。

旅先で、多くの犠牲者を出し、責任を引き受けられる先代当主も無念の死を遂げるという異常な状況から、唯一、無傷で生還したフィリス。
フィリスの為についていった者は、苦しみながら死んでいき、遺体を取り戻すことも出来ない。

フィリスが【神々の子ども達】の地で婿入りすると知って、仕えていた多くの者は、待遇がよく、安全な職場だからと志願し、そのように周りに語っていた。
安全な職場という認識から、家族や恋人がいたり、重要な立場を任されそうな有望な若手が、フィリスの周りを固めていた。
フィリスの周りは、大切な絆のある大人、未来ある若者、可愛がられている子どもが揃っていた。

遺族が危険な職場ではなかったはずなのに、なぜ？という気持ちを持つ背景はここにあった。

父やデヒルに仕える者は、家族も含めて、覚悟がある。

フィリスの周囲は、仕えた本人もその関係者も含めて、危ない目に遭うことがないから、と未来を夢見て、将来設計に励む人に溢れていた。

フィリスと帰ってきた領民は、フィリスを抱えていた執事2人と、護衛3人。
5人とも、独身で若く、体力があり、職務に忠実だった。
5人は、脇目も振らず小さな主人を守ることに集中した。

その他にも、命からがらガランの地を踏んだのは、【神々の子ども達】の地で、フィリスの世話をやいたり面倒を見ていた者。

なぜ、他人が生きていて、うちの人間が死ななくてはならなかった。

口に出さなくても、伝播していく思い。

若くて経験を積んでいる最中のデヒルには、周囲をどうにかして、フィリスの環境を良くするまで、手が回らない。

父は、外国を飛び回り、不在がち。

3歳差のハーマルと、ハーマルの周囲の人間には荷が重い。

伝播していく感情に危機感を覚えて、父がフィリスを同行できるときは連れ歩き、出来ないときは、デヒルが一緒に過ごした。

フィリスは、その賢さから、早いうちに、父と兄を助けて、領地と領民のために生きようとし始めた。

歌と踊り以外の才能が、なかなか開花しないフィリス。
領政を担当して、領民の中に入るより、トップダウンのはっきりしているガラン軍に所属するのが1番安全だ。

フィリスのガラン軍、後方支援部隊への配属は、様々な事情が絡んだ結果である。