フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

306.長兄デヒルからみた、4人の弟妹。3男ハーマルは変態ホイホイ。4男フィリスは成果をともなわないことが多いが努力家の可愛い甘えん坊。

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デヒルは、フィリスの嗚咽を聞いていた。

末の弟が、少しもものにならないにも関わらず、諦めずに努力し続ける姿をデヒルはずっと見守ってきた。

フィリスがガランで生きていくに困らない教育は既に終えており、がむしゃらにならなくても十分通用する。

でも、それだけでは足りない、自分はガランの男だから、と末弟は必要以上に頑張るのだ。

ワイバーン姿の神獣パパランに出来の悪さを保証されるくらいなのに。

努力家なのに、努力の方向性が違うのか、あまり報われていない、可愛い弟。


デヒルは5人兄弟の1番上で、15歳から、たびたび、父に当主代理を任されている。

家族としては、弟妹の監督。
領主代理として、領政とガラン軍の責任者。
結婚してからは、デヒルの妻子もデヒルの面倒を見る範囲に加わった。

デヒルからみた弟妹は、完全に2つに分かれる。

すぐ下の弟リドリグとは、共闘できる。

15歳の年の差があるマーゴットとは、忌憚なく意見を交わせるようになった。

ハーマルは、気立てが良い分、のんびりと構えて、侮られやすい。実力を発揮する前に、軽視されて、危険な目に遭うので、成長を促すよう、計画的な手回しが必要だ。
段階を踏ませていたが、成長に時間がかかった。人生の岐路、ぎりぎり18歳で踏みとどまれた。

『ハーマルたん、可哀想な目に遭っても、頑張る姿が、あらぬところを刺激しちゃった。責任とって、ハーマルたんちょうだいよー。』
とほざきやがるオッサン。
『誰にも見向きされない平凡さ。なのに、あのポテンシャル。虐げてください!と言わんばかりじゃないの。』
と手ぐすねひいている善人ヅラとか。

外交部で頑張ると意気込むハーマルの前途には、猛獣が涎をたらしながら待っている。

公爵家の息子を側につけるから、ハーマルの安全度はだいぶあがるだろう。

あとは、ハーマル自身を鍛えていくのみ。


そして、末弟のフィリス。

生後間もなく、【神々の子ども達】から指名を受けて婿入りが決まり、健やかな成長を見守るだけだったはずの弟の人生は、まだ15年しか生きていないのに、兄弟で1番盛りだくさんだ。

4歳で、祖父母と多くの家人と死に別れ、その命の重さを自分で背負う決心をした弟。

7歳で、全く興味のない自国の王子に執着されて、友達との青春謳歌に一苦労したあげく、学校生活自体を見送った弟。

妹にきた婚約話にセット売りで、妹が結婚するまでは、親戚のお兄さんのような存在である、妹の婚約者に迫られたら、フィリスが応えるという契約を受け入れた、異性愛者の弟。

そんな弟が、信頼して全身を委ねるのは、当主の父か、次期当主の長兄デヒルの2人しかいない。

リドリグは、他国に婿入りするが決まっていたから、弟として、頼れる範囲は狭かった。
マーゴットのことは、兄として守ってみせる、とフィリスは意気込んでいる。

ハーマルは、とてもフィリスに近く頼れる相手ではない。


デヒルは、フィリスにとって、父ではないが、全力で甘えられる家族だ。

昔から、フィリスはデヒルに全身で甘えにきていた。
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