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第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?
305.ボクが自力で勝てる姿をお見せしたかった。お兄様の指導を受けて、一人前に戦い、ガランに勝利をもたらす男になるところを示せたら、ボクは。
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「でも、違ったのです。
ボクはモノみたいに運ばれて、扱われて。
囚われていた間、ボクが何を話しても、ボクの話を聞く人は1人もいませんでした。」
フィリスは泣きながら話す。涙も言葉も、今まで、1人で堪えてきた。
「フィリップ殿下もです。
フィリップ殿下は、ボクのことを好きだから、ボクと結婚すると言いながら、ボクが結婚しない、近衛にもならない、と、どれだけ伝えても、ボクと話そうとしませんでした。」
「ボクは、ボクのことを諦めるなら思い出をあげるけど、どうする?と聞きました。」
「フィリップ殿下が、ピロートークなら、話し合いに応じると言っていたから。」
「フィリップ殿下が、思い出がほしいと言ったから、ボク。ボクから、誘いました。」
「最初で、最後の思い出だから、いい思い出をあげることにしました。
フィリップ殿下は、興奮がおさまらなくて、最初はボク主導だったんですけれど、2回目以降は、ずっとフィリップ殿下が主導権を握りました。」
「終わったら、ピロートークして、すぐに帰ろうと思いました。」
「ピロートークで、ちゃんとお話し合いもしました。」
「なのに。」
「なのに。フィリップ殿下は、王様に、近衛にして、自分の護衛筆頭にして、ボクに実績を作らせたら、結婚するから、ボクの護衛筆頭を認めてほしい、と言ったのです。」
「ボクは、話が違うと、暴れて、なんとか、否定しました。」
「あんなにたくさんの人がいるのに、1人も、ボクの言うことなど気にしないのです。」
「お兄様が、観察されていた男は、お兄様には無口でしたが、ボクには饒舌でした。」
「ボクがフィリップ殿下の言う通りにしないと、マーゴットがひどい目に遭うだろうと予告しました。
ハーマルお兄様が、学校で苦労したのは、ボクがフィリップ殿下のご機嫌とりをしなかったせいだと。ハーマルお兄様は、男だから、良かった。でも、マーゴットは、子爵家の令嬢だからって。」
「ボクは、そんな脅しに屈しません。マーゴットをひどい目に遭わそうと考える人がいたら、お父様とお兄様にすぐになんとかしてもらいます。それでも、危なかったら、ボクがマーゴットの盾になって守ります。」
「ボクの心は闘志に溢れていました。ボクは、逃げられない戦いにいるとわかっていました。ボクの勝敗が、ガランの勝負どころの潮目になると。」
「だから、最後まで勝ちを諦めたくありませんでした。」
「でも、ほとんど負けていました。ボクに勝ち目がないことは、誰の目からも明らかで、それにはボク自身も気づいていました。」
「負けが見えて、戦っても戦っても、潮目が変わらないから、すごく疲れてしまって。」
「ボクが戦っても、児戯だと相手にされず、負けが確定しそうなとき、お兄様が来てくださいました。」
「嬉しくて、嬉しくて。」
「でも、役に立たない自分が悲しゅうございました。」
フィリスは、デヒルの首元に顔を埋める。
「本当は、ボクが自力で勝てる姿をお見せしたかったのです。」
「お兄様の指導を受けて、一人前に戦い、ガランに勝利をもたらす男になりとうございました。」
車中の音は、フィリスの嗚咽のみになった。
ボクはモノみたいに運ばれて、扱われて。
囚われていた間、ボクが何を話しても、ボクの話を聞く人は1人もいませんでした。」
フィリスは泣きながら話す。涙も言葉も、今まで、1人で堪えてきた。
「フィリップ殿下もです。
フィリップ殿下は、ボクのことを好きだから、ボクと結婚すると言いながら、ボクが結婚しない、近衛にもならない、と、どれだけ伝えても、ボクと話そうとしませんでした。」
「ボクは、ボクのことを諦めるなら思い出をあげるけど、どうする?と聞きました。」
「フィリップ殿下が、ピロートークなら、話し合いに応じると言っていたから。」
「フィリップ殿下が、思い出がほしいと言ったから、ボク。ボクから、誘いました。」
「最初で、最後の思い出だから、いい思い出をあげることにしました。
フィリップ殿下は、興奮がおさまらなくて、最初はボク主導だったんですけれど、2回目以降は、ずっとフィリップ殿下が主導権を握りました。」
「終わったら、ピロートークして、すぐに帰ろうと思いました。」
「ピロートークで、ちゃんとお話し合いもしました。」
「なのに。」
「なのに。フィリップ殿下は、王様に、近衛にして、自分の護衛筆頭にして、ボクに実績を作らせたら、結婚するから、ボクの護衛筆頭を認めてほしい、と言ったのです。」
「ボクは、話が違うと、暴れて、なんとか、否定しました。」
「あんなにたくさんの人がいるのに、1人も、ボクの言うことなど気にしないのです。」
「お兄様が、観察されていた男は、お兄様には無口でしたが、ボクには饒舌でした。」
「ボクがフィリップ殿下の言う通りにしないと、マーゴットがひどい目に遭うだろうと予告しました。
ハーマルお兄様が、学校で苦労したのは、ボクがフィリップ殿下のご機嫌とりをしなかったせいだと。ハーマルお兄様は、男だから、良かった。でも、マーゴットは、子爵家の令嬢だからって。」
「ボクは、そんな脅しに屈しません。マーゴットをひどい目に遭わそうと考える人がいたら、お父様とお兄様にすぐになんとかしてもらいます。それでも、危なかったら、ボクがマーゴットの盾になって守ります。」
「ボクの心は闘志に溢れていました。ボクは、逃げられない戦いにいるとわかっていました。ボクの勝敗が、ガランの勝負どころの潮目になると。」
「だから、最後まで勝ちを諦めたくありませんでした。」
「でも、ほとんど負けていました。ボクに勝ち目がないことは、誰の目からも明らかで、それにはボク自身も気づいていました。」
「負けが見えて、戦っても戦っても、潮目が変わらないから、すごく疲れてしまって。」
「ボクが戦っても、児戯だと相手にされず、負けが確定しそうなとき、お兄様が来てくださいました。」
「嬉しくて、嬉しくて。」
「でも、役に立たない自分が悲しゅうございました。」
フィリスは、デヒルの首元に顔を埋める。
「本当は、ボクが自力で勝てる姿をお見せしたかったのです。」
「お兄様の指導を受けて、一人前に戦い、ガランに勝利をもたらす男になりとうございました。」
車中の音は、フィリスの嗚咽のみになった。
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