フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

301.王子と王女がそれぞれ当主として臣籍降下した2つの公爵家。中枢にいてもおかしくない家柄なのに、受け継がれる情報を知らないのは何故？

公爵家の残りの当主を呼ぶ。
「まだ呼ばれていない公爵家の当主は、こちらにこい。」
とデヒル。

「話は、聞いていたな？流れは追っているな？公爵家の当主として、私の前に立っている者のうち、ガランとコーハ王家の建国の誓約について知らない者は、黙って右足の爪先を左足の足首の高さに持ち上げろ。」
とデヒル。

手を挙げると目立つから、足にした。
2つの公爵家の当主がそっと足をあげて戻した。
「聞いていない？聞いたことはあるが、詳しく知らない？」
1人は、前者。もう1人は後者に返事をする。
ガラン子爵家の嫡子が、ヤバいのやつなのは、やることを見て理解した。
ただ、ヤバい行いを正当化されている理由がわからない。
結果、逆らわないものの、両当主とも面白くなさそうな様子を隠していない。

2つの公爵家の当主は、他の6つの公爵家当主の緊張感が伝わってきたので、大人しくしているに過ぎない。

「両方か。どちらも、王子の側近を出して居ない家だな？」
王太子と第2王子、第3王子の側近までは、先代国王陛下に教育し直されている。

直近のガランの真相に詳しくない、この2つの公爵家の当代当主は、上3人の王子とその側近の家とは、距離があることを示唆している。

それでも、中枢にいるなら、ガランに無関心ではいられないはずだが。

中枢にいて、情報を集めたりはしないのか？

何かが、歪である。

「王家の血の濃さは、どのくらいだ？」

どちらの家も王妃は何人か輩出していた。

何代に、だれそれ、と話す当主2人。

王妃を出した数が問題ではない。

どちらの家も、かつて、王女や王子が王族に残らず公爵家を興した。
当主となり得る王族なら、中枢にいてガランと建国の誓約を受け継げる家だったはず。

どこかの代で、表に出ない断絶が起きたか？

「直近で、王家から王子や王女を迎えたのは、何代前だ？」
とデヒル。

「4代前と5代前に、王子と王女か。」
とデヒル。

先代ガラン家当主と先代国王陛下の代より前の代の話だ。

嫁と婿に入った王子や王女には、ガラン家について語られない。

王族の籍を抜けるので、誓約の対象ではなくなるからだ。

この2つの家の歪さは、調べておくのもよいだろう。

デヒルの合図に幹部が兵士を連れて、移動を促す。

調べる前準備だ。

しかし、2人の当主は、難色を示した。

「子爵家の子どもに命令されて従うのは、すわりが悪い。」

「我々に対して、敬意が足りない。」
と。

公爵家の当主らしく扱え、と言っている。

勿論、デヒルはけんもほろろ。
「胸中に配慮？私の仕事ではない。甘やかしてくれる人間は自分の家で揃えろ。」

「敬意を要求する相手が違う。出直せ。」